ボルちゃんズ・ブートキャンプ
「それは違うな、ヴィンよ。強さを求めるときは自分を厳格に律することが必要なのだ。肉体的・精神的な苦痛に耐えてこそ栄光がある」
「それがMッ気というものです!」
「うーん。Mというのは誰かにいじめられたいという願望であろう? 私には別にそんなところはないがな」
「自分で自分をいじめているのです!」
「別にいじめているわけではないぞ? 自分をコントロールしているだけだからな?」
と、言うわけで、ボルちゃんのブート(新兵)キャンプ(訓練場)が始まった…… ように見えるが、肝心の一番新兵のやつが寝とるがね! さあ、ハンナちゃんよ! 今度は薄紅のルビーの宝玉に魔力を蓄えるのだ!
「えーーー? またやるんですかー?」
あ、火魔法の魔力なら我も助けになりましょうぞ! 水晶咥えて火魔法Lv.7火弾を打つ感じで魔力を込めていきます………… このくらいですかね? ハンナちゃんのルビーよりは赤いな!
「はぁー、これを持ってれば魔力切れは起こさないで済みそうですね…… それでは、
火よ、火よ、我が祈りを聞き、願いを叶え給え。願いを叶えた暁には我が魔力を我が願い満たすだけ受け取り給え。火よ、火よ、我が杖となって我に仇なすものを焼き払え。汝の名は焔蛟」
スゥッと一呼吸して、目を瞑るハンナちゃん。今度はすんなり魔力の譲渡が行われたようですな。水晶玉は元通り透明になり、ルビーが深紅に染まりました。
「ふーーーーーー。自分の魔力をほぼ使っていないとはいえ、これは大変な作業です」
ポーション飲むのとどっちが大変? ハンナちゃんは腕組みをして考えます……
「今ので私の魔力の何人分が入ったかが問題です。3人分ぐらいならまだポーションで賄えるのですが、それ以上となると、もう飲めませんからね」
なるほど、ポーションも一気に1L以上飲むのはきつおますな!
「そこを頑張ってもう一瓶飲んでみる…… 何回も繰り返すうちに4瓶は飲めるようになるぞ! 」
「無理です! 無理ー!! 子供に4つもポーション飲ませるなんて! 児童虐待ですー!」
あ、こんな時だけ子ども扱いしろと!
「いや、飲ませてはいないのだが? 大体、このスネークの水晶でポーション飲まなくてもよくなってないか?」
まあこれはいざというときの保険用ですからねぇ。たくさん作ったけどあまり頼られても、別れた後がたいへんだな。ところでリアル新兵はまだ起きないのか? 彼奴の防具を付けないといけないのだが? まだ起きない? それでは、あと3つ水晶を出しましょう…… 1個づつ魔力を蓄えていきますよ。最初は風魔法、次は火魔法、3つめは水魔法……
【WARNING!WARNING!WARNING!】
【水魔法消滅まであと85!】
【WARNING!WARNING!WARNING!】
【水魔法消滅まであと85!】
【WARNING!WARNING!WARNING!】
【水魔法消滅まであと85!】
うん、やっぱりカウントダウンは進みますな!
「これは保険…… か。普通はこんなもの持てないからな…… 」
「そうですね。いざというときのためにしまっておいた方がよさそうですね…… ところで、スネークちゃんの土魔法の魔力はこの水晶に入らないのですかね? 」
それをやってもいいのだが、この水晶玉に魔力を込めてる最中にひっくり返りそうな気がしなくもないのだが、それともこの水晶玉が壊れるのが先なのか…… やってみるか。4つ目の水晶玉を咥えまして、我、土魔法最大レベルの地形操作をやる感じで念じます!
「うっ…… 透明だった水晶が…… 清水に泥を混ぜたように濁っていく………… 」
「うわぁ…… 泥団子です! せっかくの水晶玉が、泥団子になってしまったのです! 」
そんなことを言われても、我には見えませんので……特に輝きもしませんので! 残念! とか思ってたら、パリン! アガッ!! 口に銜えてた抵抗がなくなった…… 我の魔力の方が水晶玉にはいる魔力より相当に大きいようだ。水晶玉6回分と仮定してもまだまだいけるぜ!
「スネークよ、ほどほどにな…… 」
あ、すんません。調子乗ってました。




