まだまだ続くよ蜂退治
「よがっだ、グスッ…… ぼんどーによがっだ……」
「よかったですねぇ、もう安心ですよ…」
エマさんの包容力はすごい。泣きじゃくる女の子をやさしく抱きしめて安心させている。こういうのをやらせるとぴか一ですね。
「あぁ……あなたが……助けてくれたんですね…… ありがとう…… 本当にありがとう……」
「助けたのはうちの隊長たちですよ。あたしは何にもしてませんからねー?」
「隊長? 朝にあった人ですか? あ、あなたはあの時後ろにいた人? 」
「そうですよー? 」
「グス…… ごめんなさい…… あの時ちゃんということを聞いていれば…… テッツとマークは二人は無事なんですか? 」
「たぶんねー。まだ気を失ってるだけだと思うよー? 」
「おー、目が覚めたのは一人だけか? 」
やってきたのはボルちゃんです。手にはカップを持っていますな。
「一人で起きれるか? ならばここに座りなさい。そしてこれを飲むとよい」
エマさんに支えられて起きた女の子冒険者さん。よろよろと石テーブルまでやってきて、石の椅子におかけになりました。
「あ、あの、助けていただいてありがとうございます。そしてごめんなさい。朝に言われた通り、すぐに戻っていればこんなことにならないで済んだのに…… 」
「いや…… こちらこそ済まない。すぐに帰るものと思って虫除け香を渡さなかった…… もう結構この辺りに蜂たちはいたのだな…… ところで私たちはまた蜂狩りをするのだが、君たちはどうする? ここでしばらく休憩して帰ってもらうのが一番なのだが? 」
「そうですね、そうさせてください。あ、私たちブレスローの冒険者パーティーの<TMK>といいます。私の名前はケィです」
TMK、Tがテッツ、Mはマーク、Kはケィか…… たぶんそんな感じの名前だな。
「私はボルドウィン、流れの冒険者だ。あと二人と一匹仲間がいるな。今日たまたまこの地点でツァオパーべスぺという蜂の魔物に襲われてな、いったんブレスローに行って準備をしてから蜂狩りをしている。ほかのブレスローの採取冒険者たちには帰ってもらった。私たちはまだ蜂狩りを続けるが、ここで一休みするか。これを飲みたまえ」
「これは?」
「緑茶といってな、領都メルゼブルグでこれからはやる飲み物だ!」
緑色の怪しそうな飲み物ですな! まぁお茶なんですが! ケィちゃん一口啜る……
「甘……くて、ほんのり苦みがあとからやってきた……」
「甘いのは糖が入っているからな、苦みは目を覚ますにはちょうどいいぞ。ほかの二人もそろそろ起きるころか…… 人数分用意するか」
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
「「注意を無視して本当に済みませんでしたー!」」
テーブルに座って昼食を取ろうということになり、ケィちゃんが男の子二人をびんたしてたたき起こした後、何かごにょごにょ言ったと思ったら深々と頭を下げてきた。
「もうやってしまったことを後悔しても何もならない。こうして生きているのだから、それだけでよいではないか。あとはしっかり反省して今後に生かせばよい」
「それにしてもすぐに発見できてよかったですねー。私たちが見つけなかったら、あの状態のまま女王蜂に生きたまま食べられちゃうところでしたね、生物的な意味で」
生物的な意味で? 他に何か意味があるのか?
「人をさらう魔物には、性的な意味で食べられちゃうこともありますので」
あー、そうですか。聞かなきゃよかった。
「それでは少し休憩するか。ヴィン、他の二人にも飲み物を」
はいなー、調子のよい返事をしてハンナちゃんポットにお湯を入れてますな……
さて、我は再び気配察知をやってみる。うーん、また犬のところに蜂がいるような……
”ハンナちゃんや、蜂の魔物は生きているのしか食べないのか? 死体に群がってる感じがするのだが? ”
「え? そんなことはないと思いますが……」
”さっきのところに気配察知で感があるのだが? えー、ひぃふぅみぃよー……たくさん! 10以上はいるな! ボルちゃんよ。どうする?”
「ちょっと待て! 動きが変だと思わないか? 」
”ああ、ひとつの気配にみっつかよっつの気配が一緒になって動いてる。行ってみるか? ”
「そうだな、ヴィンとバウアーはここで待機。虫除け香を焚いておいてくれ。スネークは私と一緒に行動! 行くぞ!」
我とボルちゃんは北側の斜面を気配を消しながら降りていき、犬の魔物の死体があった場所へ戻ってきた。そこには……
犬と蜂が闘っていた! 犬、生きとったのかい? いや待て、犬の死体は3つある!別のやつ? どゆこと?
「犬が死肉をあさっていたところを蜂に襲われたようだな…… 犬が5匹、蜂は20匹か…… 一網打尽だな! スネークよ、準備はいいか? 私はちょっとポーションを飲むので待ってくれ!」
あーた、それ今日何本目や! 絶対中毒になってるでしょう! ポーション中毒、略してポー中や! ボルちゃん、げふーーーと胃から空気を吐き出した。お腹ちゃぷちゃぷでしょう? もう飲むのそれで最後にしなはれや!
「……いくぞ、スネーク……3」
今度は3からかい!
「2、1、ゴー!」
”風魔法Lv.4 空気壁!”
「切り裂け、鎌鼬!」
イタチさんが入りやすいようにボルちゃんの正面を開いた入り口にしたエアー鎌倉を作った! イタチさん、蜂をザクザク切り裂いていく! こうしちゃおれん、我も
”風魔法Lv.10鎌鼬!”
我の鎌鼬は相変わらずただの風の刃のようです。地面にいたお犬様を切り裂いていきますな。びろーん・びろーん・びろーん・びろーん・びろーん。
”やったな! ボルちゃん?”
「……ああ、ちょっとヴィンに来てもらおうか…… 」
そういうと額金通信でハンナちゃんを呼び寄せた後、ボルちゃんは膝をついてしまった。魔力の込め方がまだ要領を得ないようですな。
本日はこれにて。
お読みいただきありがとうございます。




