勝手に蜂討伐隊!
ボルちゃん、先ほど話した受付の人のところに、今度は3人でやってきた。エルフ三人というのはそんなに威圧的なのだろうか?
”たぶん、スネークちゃんが隊長の頭に乗っているからだと思いますよ?”
確かに! 目線が我の方を向いてましたな!ハッハッハ! こりゃ失礼! ハンナちゃんの頭に移動します!
”頭じゃなくって私が抱えてます!”
両手でつかまれ、降ろされてしまいました。
「受付嬢よ、少しギルドマスターと話がしたいのだが?」
「少々お待ちください」
席を立ち、カウンターの背後にあるラッパみたいなものに口を当て何かしゃべってますな! あれも魔道具? これも魔道具! たぶん魔道具! きっと魔道具! 戻ってきた受付さん
「お会いになられるそうです。私が案内させていただきますね。私はブレスローの冒険者ギルドで受付担当をしておりますヴィクトリア・アダムスと言います」
こりゃまたご丁寧に。我、スネークちゃんなりよ。ぺこり。
受付のアダムスさんに案内され、再びヤマンバさんのお部屋に入りますと、屈強な野郎どもが3人、ヤマンバさんと一緒にソファーのあるテーブルに座って地図をにらめっこしていた。あっぷっぷー!
「ボルドウィンかい、何しに来た!」
「追加情報を少しな。それはこの辺の地図か?」
「部外秘になっとるが、まぁいいじゃろ。お前さんもこっち来な!」
全員は座れないのでボルちゃんだけソファにかけ、ハンナちゃんとエマさんはそばで立っていた。野郎どもは物珍しそうにエルフさんたちを見ていた。いや、フードをかぶっているからエルフとはわからないか。女冒険者が珍しいのかな?
「それで、追加情報ってのは何だい?」
「地図を見ながら説明した方がいいだろう…… ここが町の入口であっているか? 点線で書いてあるのが街道だな? 町の入口へ入る分岐路の長さから言って、今朝の襲撃ポイントはこの辺だろう…… スネークよ、お前が見た木というのはどの方向だった?」
ハンナちゃんや、我をちょっと放してくれるか? テーブルの上においてな! 屈強な野郎どもはなんだかざわついているが気にしない。ヤマンバさんの方がよっぽど度胸がありますな! えーと、昨晩感じた気配の方向に木がありそうだったな…… あれは日の出る方角だったぞ、たしか。その地点から木が生えている場所ってある?
「この地点から見て東側に、木が生えている場所はあるかと聞いているな?」
「その蛇がしゃべっているのか? 従魔証を付けているがあんたの従魔か?」
「馬鹿だね、こいつらがさっきの情報を持ってきたんだよ。ヘビの名前はスネークというのかい。よし、ほかには?」
えーと。夜間未明に気配を探っていたら、その方向にいくつか気配があったのよ。それで結界を張って明け方を待ったわけ。ボルちゃんは見張りを交代して寝たけど、夜明けになったら二人が起きたのよ。それで朝食の準備をして、ついでに気配を探るために結界を解いたら蜂がいたの。最初一匹だったけど、すぐに数が増えた。1匹やっつけたらすぐに逃げてったよ。
「夜間未明というのはヘレンローザーフントだと思われます」
「どうしてそう思う、お嬢ちゃん?」
「ツァオパーべスぺは夜行性ではありません。この辺りの魔物で夜行性はヘレンローザーフントという情報を得ましたので」
「ふむ、町に来てから1時間もたたないうちに情報収集したのかい。なかなか優秀なようだね。それで?」
「我々は極秘任務を遂行中なのだが、訓練の一環として蜂狩りをすることにしたのでな。知らせておこうと思っただけだ」
「女王蜂まで狩らないと討伐にはならないよ」
「だから討伐をする気はない。対魔物の戦闘訓練だ。女王が見つかったら当然狩るがな」
「ふーん、戦闘訓練ね…… なら、こっちは何も手出しはしなくっていいね?」
「無論だ。むしろ邪魔にならないようにしてもらえると助かる」
「あー、すまないがお姉さん。そこら辺は冒険者の採取組がいつもいるあたりだ。ひょっとしたら邪魔するかもしれない。今朝も常設依頼で採取に行った冒険者たちが何名かいるので、会ったら注意喚起かあるいは帰投警告を出してくれないか?」
「ではそのような書類を作ってくれ。どこの者ともわからないやつに言われたくないだろうからな。話は以上だ。それでは30分で準備をしてくるのでそれまでに書類を頼む。受付を通して渡してくれ」
そういうと、ボルちゃんは席を立ち、二人と我を連れて部屋を出た。
「あれが、”青嵐”の秘蔵っ子か…… 」
ヤマンバがそんなことを小声で言っていた。
本日はこれにて。
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