1000㎞の道も一歩から
新章突入です! デー-ーーーン・デデデン!ウァチャオーーーー!
中天高くから照り付ける太陽のもと、それぞれにエルフを乗せた3頭の馬が、乾いた荒野の中にうっすらとみえる道をパカポコ進んでいる。雁行の先頭に騎乗するエルフの頭には丸々と肥えた寸詰まりの蛇が乗っていた。この世界には存在しないはずの幻想生物、ツチノコである。ツチノコは涎掛けのように見える金属を首に巻いている…… 先ほどまでいた街を出る際、従魔証としてつけていた真っ赤なスカーフが今はもう外れていた。
あの蛇がつけていた~ 真っ赤なスカーフー♪
誰の~ためだぁとー 思っているのか~♪
街の~たーめーでー いいジャないか~♪
みんな~その気で~ いれーばいい~♪
旅立つ~(ワワワワー) 蛇の胸には~(胸には~)♪
ロマンの~(ロマンのー)欠片はいらないのさ~♪
ラララ 真っ赤な~ スカーァフ~~~♪
「スネークちゃんがご機嫌状態になっています! 」
「街をでれてうれしいんじゃないですかー?」
「さあ、どうだろうな? 」
”そんなことよりボルちゃんよ! ”
「どうしたスネーク?」
”この馬は汗血馬なんだよな? なんか、ただ単に歩いているだけのようだが、いつ走らせるのだ? これでは村長たちと来た時の馬車よりちょっとまし程度ではないか?”
実際のところ、お馬さんたちはカポカポと足を交互に歩いているのだが…… ボルちゃんも走らせる気配はない。もっとこう、競馬場でお馬さんたちが一生懸命走っているところを想像していたのだが。
「ケーバジョーが何かは知らんが、騎乗しての旅とはこういうものだぞ? スネークの言っているのは襲歩のことだろうが、それより遅い駈歩でも長くは走れないぞ? いまみたいに常歩か、せいぜい速歩を時々使って、一日80㎞進むのが限界だな。普通の馬ならな。あの馬屋の主人の受け売りなら、こいつらはもっと走れるかも知らんが、まぁいまは様子見だ」
”なぁ、疲労が原因で走るのが遅くなるんだったら、疲れたら魔法で回復させればいいんじゃないか? ”
「なるほど、その手があるな? ヴィン、バウアー! 駈歩はできるようになったか? 」
「あー、大丈夫です、たぶん……」
「おなじくー!」
「よし! それではいくぞっ! ハイッ! 駈歩行進!」
ボルちゃん、手綱を握りしめ、一鞭入れると、V3号は勢いよく駆けだした。パカラッパカラッパカラッパカラッ! おおっ!これよこれ! 馬と言えばこのスピード! 前世で乗ったことはないけども! 風景が後ろへ後ろへと流れていきますな!ワッハッハッハー!ワッハッハッハー!アハハハハハ!進めー進めー! 徐州徐州と人馬は進むー! グラニーラムゼー住みよいか? 後ろを振り返ると馬のかけた跡が埃となって舞い上がっていく! 進めー進めー! 目指すは…… どこ? 西に進んでいるのはなんとなくわかるけど?
「一番近いところは、グレービッツというところだ。メルゼブルグから約200㎞離れたところだな。騎乗で3日もあれば着く予定なのだが、さて、汗血馬の実力はどうかな? 駈歩では1時間で20㎞ぐらいは進むが? 」
ブヒヒーーーーン! おおっと! V3号、張り切ったー! 足音が変わったぞ! ジャーンジャーンジャラッチャジャン!ジャンジャンジャーンジャジャーーン! 暴れん坊な将軍が白馬に乗ってるスピードですな! これが馬の最高速度の襲歩というやつですかな? スピード感は車に乗っているような感じですな! だけど揺れがすごい! 後ろの2騎は…… お、ちゃんとついてきているな! 乗ってる二人は乗せられている感がすごい!
「た、たいちょーーーー、早すぎますーーーーー!」
「そーーー、そおおお!で!すよーーーーーーーーー!」
「これも訓練の一環だ! 習うより慣れろ!」
おおおおおお! 揺れる揺れる! あーーーーーーーっ! 我、落馬! 馬から落ちて落馬なりーーーー! くそーーーーーー!負けへんでー! ジャンプジャンプ! 大ジャンプ! 待ちやがれーーーー!
「おお! スネーク! 大丈夫か!」
馬を止めようともせずにボルちゃん、平気でしゃべってますな! この走り方って結構大変じゃないの? ジャンプ!ジャンプ!
「そうだな! 普通の馬なら5分でばてる! スネークはどうだ? 何時までもつかな? 」
我、ジャンプしてるだけだからまだまだいけるで! けど、後ろの二人がついていけへんのじゃねーの?
「ま、汗血馬の性能テストといったところだな! 」
結局30分近く走ってやっと疲れたのだろうか、V3号は止まってくれた。
「おお、襲歩でこれだけ走れるのか! 優秀だな! あの馬屋には感謝だな! 」
さすがの汗血馬とやらもゼハーゼハーと荒い息をしていますな。ちょっと遅れてやってきたハンナちゃんとエマさんたちも馬から降りてゼハゼバ肩で呼吸をしています。あれ? ボルちゃんは何ともないの?
「まあ、これくらいはな? 慣れだよ、慣れ!」
馬ってしゅうほとやらで5分ぐらいしか走れないんじゃないの? 慣れること能わず!
「ここらで一休みするか。スネークよ、例の魔法頼む! ついでに水を出してやってくれないか? 」
あいあい! そんじゃ
”光魔法Lv.1 疲れの癒し”
我が魔法を使っている間に、ボルちゃん、簡易水桶を出してます。我、光魔法が終わったら水魔法で水桶に水を入れます。ボルちゃん達はメルゼブルグの冒険者御用達の雑貨屋で買った水袋の水を飲んでますな。お馬さんたちは元気になって水をがぶ飲みしております。
「ふむ、これならすぐにグラニーラムゼースミスへ着きそうだな! 」
「隊長~、無茶~! あの速さはだめです! 私たちがついていけません!」
「そうか、なら特訓だな! 1日3回は襲歩騎乗だ!」
再び元気になった汗血馬に乗り、襲歩で駆けていきます…… この日は休憩と襲歩移動を繰り返し、3回どころか倍の6回も襲歩移動をやってた。ボルちゃん、調子に乗りすぎ。




