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我はツチノコ  作者: あいうわをん
第3章 風の谷、ナウ危機!
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お詫びの品 三品

さて、そろそろこの章も終幕です


 髭のドワーフおじさん、自分が乗ってきたであろう馬車の荷台からモノをとりだした。大剣とステッキと…… 白い絹帯…… ですかな?


「剣士には剣を、魔術士にはステッキを、そして拳闘士には防具を、とのことでしたので。まずは剣をお受け取りください」


と言ってボルちゃんに渡されたのは、長身のボルちゃんでも腰に差すには長すぎるほどの長剣。大剣というには刀身幅が狭くなっていた。背負って歩くには重くなさそうで結構なんですけどね。ボルちゃんは柄を握り革のさやから抜き出す。燻されたような鈍い銀色の刀身が現れた。ボルちゃんはじっと剣を見つめる……


「素材にはミスリル銀を使っています。握られた部分から魔力を流してみてください」


ボルちゃん、言われたとおりに、両手で柄を持ち、一呼吸した後、魔力を込める…… くすんだ銀色の刃が、ボルちゃんの魔力をどんどん吸収していき、吸い取った分だけ青く輝きだした! ミスリル銀、すげーーーー!


「ほぅ、我々基本人族には魔力は見えないはずですが、あれが魔力の込められた刀剣の輝きですか! トレビアン…… 」


「スネークよ、試し切り用に何か出してくれないか?」


そうねぇ、もう一回木材だしとく? ああ、あと崖で拾った大岩とかな! 我、おぇぇええええええええぉおおおおおおおっと巨木と巨石を吐き出した! なぜか、拍手をされた我。見世物じゃないぞ! ボルちゃん、巨木をあっという間に輪切りにしていく! これ、さっき自分の持ってた剣でやったよね?


「バドエル殿、この剣で、あなたの持っている刀のように魔力を飛ばすことは可能か?」


髭おやじ、ボルちゃんをじっと見て、うなる…


「剣で斬撃を飛ばすことは可能です。それは持ち主の魔力の量と練度が関係します。儂はドワーフ族の中でも魔力が多く、しかも放出できる力を持っていますのでそれが可能ですが…… エルフ族は魔力の放出は得意だと聞いていますが、個人差があるとうかがってますので」


「要は私次第ということですな?」


「あくまでミスリル銀は魔力を纏わせるだけのもの。その放出には個人の技量が問われます」


「…… む、そうですか」


”どうしたボルちゃん。なんか不服でもあるのか? ”


”いや、不服はないが…… 私の魔力が少ないのがな…… 宝の持ち腐れにならなければよいのだが?”


”試しに使ってみればどーよ! なんでも使ってみて損はないでしょ?”


”… そうだな、スネークの言うとおりだ! ”


ボルちゃん、剣を両手に構え呪文を唱える。いつぞや森の中で唱えた呪文ですな。


「風よ、風よ、が祈りを聞き、願いを叶え給え。願いを叶えた暁にはわれ魔力マナが願い満たすだけ受け取り給え。風よ、風よ、が刃となってわれにあだなすものを」


ここで剣を振りかぶって大きくくうを切る!


「切り裂け!鎌鼬かまいたち! 」


シュッという風切り音とともに振り下ろした剣先から魔力の刃が飛び出したかと思ったら、あっという間に大岩を切り裂いていた…… これは、どうなん? 前に見た鎌鼬ちゃんよりは大きく、威力も増している感じがするのだけれども?


「なるほど、微妙だな……」


え? あれで微妙? 岩をも切り裂く破壊力なのに?


「いや、一撃の大きさ・重さは満足いくものだ…… だが、アレを飛ばすのに魔力を半分以上使ってしまった…… 」


そういうと、ボルちゃん懐のポーチから瓶を取り出すと、ごくごく飲んでいった…… あの瓶は神樹さまの樹液を詰め込んだものだな!


「一撃必殺で倒せたらよいが、そう都合がいいわけでもないからな。もっと汎用性が聞けばよかったのだが…… 鍛錬が必要だな」


”込める魔力を小さくしたりすればいいのか? ”


「まあそういうことだ。風結晶と違ってミスリルは魔力を伝達するだけだからな」


”ど、どーゆーこと?”


「風結晶に限らないのだが、結晶石や魔石は魔力を長い間蓄えられてできるものなのだ。大してミスリルのような魔法金属は魔力を伝達することに優れている」


石と金属の違いのようなものですかね?


「エルフ族が所持している結晶石があれば、魔力を増幅させてボルドウィン殿が望むような飛ぶ斬撃ができるのだが、あいにくと儂の手元になくてな」


ああーん、ボルちゃんが風結晶をもって呪文を唱えたら、鎌鼬が飛んでたよな。あれはそういう仕組みですかい。でも、ハンナちゃんは結晶石を持ってなくってあの大蛇出してたよな?


「いや、かまわない。魔力を纏わせる剣というだけで切れるものが多くなるからな。結構な業物です」


「ご満足していただけたようで何よりです。あとの二品ですが…… 魔術士殿に渡すのは大きさ的にステッキがよかろうと思いましたのだが、先ほど申した通り、結晶石がまるでありませんでしたので、本体部分をミスリルのみにしました。結晶石が手に入れられれば先端に嵌める加工ができるようになります」


「ヴィンデルバンドは魔力が尋常でなく多いから、結晶石がなくても大丈夫だろう」


どんだけ~? あ、スタータス魔法の声の人の口癖が移っちゃった><


「それと、拳闘士の防具には絹をお望みでしたので、方々に連絡を入れて先ほど届いたものです。どういう風に防具になるのかわかりませんでしたので、そのままお持ちしました」


なるほど。今日まで伸びたのはこれのせいか…… すなわち、我のいらぬ一言のせい?


「絹をどう防具にするのかはわからないのでスネークに任せる。よい剣をいただいたので、代金を支払わないといけないな。これだけの量のミスリルを使ってもらってただで受け取るわけにはいかぬ。これは謝礼だ。受け取ってくれ」


ボルちゃん、ポーチの中から大金貨1枚をだした。えーと、昨日村長からもらった大金貨4枚のうちの一枚だよね。ミスリルってそんなにするもんなの?


「ミスリルで作った武器は家宝とされるくらい値打ちのあるものだ、これくらい、いや、もっと価値のあるものであろう? 大金貨1枚で済めばこっちは大儲けというものだぞ?」


「いや、お詫びの品なので…… 」


よし、それではこれも受け取れ! おぇっと我、祝福ビアジョッキを吐き出した。


”あと4か月は飲んでも酔えない呪いをかけているが、刑期が終わったらこれを使って飲んでくれや”


「こ、これは? 」


「あっ!私がいただいたものとお揃いですね! 」


「水を入れて飲んでもすぐ酔えるという、祝福のビアジョッキですね。このホテルで使っているのはただのクリスタルジョッキですが、その祝福付きのは、ここの国王様と、領主様、ドンちゃんと髭おじさんだけですよ。よかったですね」


「ミスリルを手に入れるにも金がかかろう。受け取ってくれ」


「ご温情、いたみいる。ありがたく頂いておきます。それと…… 」


「どうした、まだ何かあるのか? 」


「ああ、このクリスタルだが、これも賢蛇けんじゃ様が作ったものか? このクラリファイなら結晶石の代わりは十分に務まると思うのだが…… 」


ど、ど、どゆこと?


「つまり、スネークが魔力を込めて結晶石を作って剣やステッキに装着すれば武器の威力が増すということだな。やってみたいが時間がない。道中で試すしかないな」


と、ボルちゃん、我を見て確認する。いや、知らんけど? それでいいのか? いいんならやるが。



とりあえず本日はここまで・・・かな?

お読みいただきありがとうございます。

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