冒険者御用達の雑貨屋にて
店を出ると、暗くなりつつあった。なんだか暗いなぁと思ってたら大通りは明るいね。大通りまで出てみると街灯がありますな!人の顔の見分けがつく程度には明るい!これも魔道具なんでしょうね・・・大通りから再び小さな通りへ入ってしばし。止まった場所は・・・どこ?もう店じまいしているのか、ドアも閉じてるよ?村長とポルちゃん、いきなりドアをガンガン叩き出す!ちょっと!ご近所さんに迷惑でしょーが!
「いいんだよ!ここは知り合いの店なんだからよ!おーい!出て来い!カメラ―ド!お仲間がやってきましたよー!」
ドンドンドンドン!ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!チョーーーーーーーーー迷惑!
「誰でーーーーーーーー!と思ったら、やっぱりお前らか!時間を考えろ、時間をよ!」
村長たちの知り合いか。ここが冒険者御用達の雑貨屋か。パン屋さんで教えてもらったときはここじゃなかったのにね。あの人は冒険者でも何でもないから知らないか!
「まだまだ寝るには早いだろーて!邪魔するぞ」
「邪魔するんなら出てってくれ!飯の途中だったんだ!」
「一人わびしく飯か~!あとは酒飲んで寝るだけだな~哀れ!」
「嫌味いいに来ただけならとっとと帰れ!」
「いや、お前んところにうちのもん紹介しておこうと思って」
「今年の新人か?お前ら、名前は?職業は?」
「ノイエ・ヴァッへ、剣士だ!こっちが・・・」
「トレウ・ヴェヒターですよぅ。同じく剣士だよぅ」
「そうか、オレはカメラ―ド・・・カール・カメラ―ドだ。昔こいつらのパーティメンバーだった。新人連れてきたってことは装備類の販売ってことでいいか?ならさっさと終わらせるぞ!」
「ああ、こいつらはいつもとは多少事情が異なっててな‼必要なものは・・・そうだな、水袋と野草一覧、あとは毒消しと傷用ポーション、点火石くらいか・・・」
「そんなんでいいのか?剣士なんだから剣を持たせないのか?最初は木剣だが。剥ぎ取りナイフもいらないのか?冒険者御用達のバッグ・・・はあるみてーだな。そっちの人たちは、何か用か?」
「そうだな、水袋を3つ、点火石も3つもらうか」
“水は私やスネークちゃんがいれば必要ないのでは?”
“まあそうなんだが、分かれて行動するときは必要になるかと思ってな。それに何も買わないというのも悪い気がする”
「・・・持って来たぞ。水袋が5つ、火打石が5つ。野草一覧が5冊、あとは毒消しと傷用ポーション…どのくらいいるかわからなかったんでそれぞれ一ケースもってきた」
「火打石はあと二つ、水袋はあるだけ追加な!野草一覧は、ボルドウィン殿達はいるか?いらんよな!ポーションもいらんだろう?ということでポーションはそれぞれ3つづつの4人分だ」
「いきなりやってきてしょっぺー買い物だよなぁ・・・水袋だけそんなに買ってどーするんだよ?水袋は4L入りが一つ銅貨1枚な。在庫はあと30個だ。火打石は1個銅貨3枚、野草一覧は一冊銅貨5枚だ。ポーションはどれも一つ銅貨3枚。火打石はあと2枚追加だな?野草一覧は2冊でいいのか、んでポーションはそれぞれが3本ずつの4人分・・・」
ポーション3本×4人分×3枚銅貨=36枚銅貨やで!それに水袋銅貨1枚×5人分+追加の水袋30枚×銅貨1枚+火打石銅貨3枚×7人分+野草一覧銅貨5枚×2人分=66枚銅貨やで!合わせて102枚銅貨やで!
「銅貨102枚やで!とスネークちゃんが言ってます!」
「うォおおおおおおおお!こんなところに魔物が!・・・って従魔かぁ!びっくりさせんなよ!」
「ハハハハハハ!お前は昔からビビりだったよな!」
「うるせぃ!誰でもいるはずのないところに魔物がいたらビビるにきまっとるわ!」
ウム!それは確かに!我、ハンナちゃんの頭に乗っかって挨拶!初めまして!我、スネークちゃんですよ!びっくりさせてすまそ!そして今日でさよなら!
「カメラ―ドさん?スネークちゃんがあいさつしてます!」
「お?おぉ・・・君はエルフ族?そちらの二人も?ランドルド・・・お前一体何をしてる?ポルは・・・しょうもないことしてるのはわかるが」
ここは村長が支払うようだ。どうせ後で魔法かけさせる気だろうから払わせておきましょう!
「たまたま村にエルフさん達がやって来てな。しばらくお世話してたらたくさんお礼をしてもらった。町へ出てくるついでに、こいつらを冒険者登録しに来たんだ。この町でしばらく活動すると思うから面倒見てやってくれ。エルフさん達は・・・お国の任務でたまたま通りかかったそうだ。ここもすぐ出ていくらしい」
「そうか・・・いろいろ話を聞きたいところだが、すぐ出ていくんならしょうがないな。ところでお前ら、今日この町に来たのか?」
「そうじゃが、何かあったか?」
「いや・・・ギルド帰りの冒険者たちがやたらとぷりぷりしていてな・・・今日は受付が遅いだの、鑑定士が仕事してないだのと騒いでいた。そうそう、なんでも新人冒険者がギルド記録を塗り替えたとかも話して・・・いたけど、もしかして、お前ら?」
「お、俺ら噂になってたのか?」
「確かに今日登録したばかりで新人だけれどもよぅ!」
「お前ら何かやったのか?」
「今日冒険者登録をして、ついでに青い掲示板に残っていた依頼書を受けたのです。素材をスネークちゃんがたくさん持ってましたので。そしたら依頼達成&ランクアップって言われました」
ハンナちゃんの説明はわかりやすいね。
「え?お前ら今日登録してもうランクアップしたのか?もしかして、どじょ殺しってお前らのこと?」
どじょ・・・ドワーフ女性?オーガドワーフ女のことかな?殺してないけど死んじゃったのかな?
「「「殺したのはこの人です」」」
ハンナちゃんと、ヴァッへ君、ヴェヒター君がそろってエマさんを指差した。
「え~~~、殺してないですよぅ!」
「ハハハハハ、そうだよな、こんな優しそうなお嬢さんが、あのどじょを殺せるわけがないよな。まったく噂ってやつはあてになんないわ!」
いやいやいや!噂通りだわ!一撃だったもんな!死んではいないけども!
「それにしてもお前らがやったんじゃないとすると、いったい誰がやったんだろうな?」
ヴァッへ君やヴェヒター君がやったとは微塵も考えないのね。それにしても迷惑な存在だったようで、あのオーガドワーフ女。
「はぁ、そう言えばそろそろ時間だな・・・」
ため息をつくボルちゃん。
「ボルさんどうした?珍しいな、あんたがため息つくなんて」
「いや、面倒事に巻き込まれてな・・・ポルティエ殿もついてきてくれないか?」
「そっちのお姉さん、ポル連れて行っても何にもできないよ?むしろまぜっかえして邪魔すると思うんだけど?」
「いや、村長は関係者の親族だし、ここは無関係のポルティエ殿にも話を聞いてもらった方がいいと思ったのだ」
「・・・なんだかわからないが、ご愁傷さまだな。お前ら、木剣を卒業したら武器を新調しに来い!」
「ああ、俺らしばらく武器は木剣で済ましますよぅ」
「なんでだよ?木剣なんてすぐ使い物にならなくなるぞ?」
「頑丈な木剣なのでたぶんしばらく大丈夫。それに木剣が終わっても剣あるしな!」
「・・・お前らちょっとその木剣見せてみろ!持ってる剣もだ!」
「貰いものなので・・・ボルさん、いいですかよぅ?」
「かまわないぞ」
二人ともリュックからもらった木剣と、短剣を見せる。長剣は内緒って言ったので出さないようだ。クリスタルナイフも見せなくっていいだろう。あれは剣じゃないしな!
ヴェヒター君が自分のリュックから木剣と短剣を取り出した。
「これですよぅ!」
木剣と短剣を渡された店長、まずは木剣をみるが・・・
「長さがさっき入っていたリュックと合わないな・・・見た目は普通だが・・・いい出来だ!」
店長、ブンブン木剣を振り回す!いつの間にかポルちゃんが木剣を出してた!カンカンやり合いだしたぞ!こんな道端の、こんな時間に何しとるねん、君たち!
「ま、アホ二人はほっとくぞ。ボルドウィン殿はまたギルドに行かれるのか?」
「ああ、また来いと言われたし、行くと言ってしまったからな。あれは、やる気のない職員は止めさせる、で間違ってないですよね?」
「ああ、ワシもそう思う・・・責任ある立場の者ならだれもがそうするハズじゃ・・・オレのバカ息子もそれくらいはわかっとると思ったが・・・その常識を覆すほどの知人らしいな。あのドワーフ娘の父親とは」
「そうでしょうね・・・それ以外には考えられません。それで、どの辺が落としどころと考えられますか?」
「・・・職員の不手際だが、処分はできない。なら、もうあとは金で解決するしかないのでは?」
「私も直接見たわけではないので・・・どの程度がよい塩梅なのかがわからないのです。下手に軽くすると、また同じことが起こるでしょうし」
「そうよなぁ・・・給与の1年間2割カット、その分を慰謝料にする・・・この辺ではないかな?」
「そんなところですか・・・」
「ところで晩飯はどうする?我らはうちのバカ息子のところに泊まるのじゃが、飯の用意はしとらんだろうから、外で食おうかと思っとるんじゃ。よければ一緒に食わんか?」
「そうですね、ギルドの隣の宿泊施設に食堂があるそうですので、そこでどうでしょう?馬車も止められそうですし」
リーダー二人の会話をよそに、いつまでも剣戟をしている能天気な二人がいた。
・・・
「いい木剣だ!どこで手に入れた?」
「それは私が道中作ったものだ・・・」
「まだないか?あれば売ってほしい!そうさな・・・1本大銅貨5枚でどうだ?」
「普通の木剣はいくらで買い取ってくれるのだ?」
「木剣は壊れやすいので、物にもよるが剣としては最低価格の大銅貨1枚ってところだな。これはチプレーゼかな?よくできている。ポルと打ち合ってもひびの入る気配がねぇ!よって通常の5倍の値を付けてみた」
「そうか、あと10本はある。そちらの短剣の方はどうだ?あと3本在庫があるが?」
「ああ、短剣の方は見てなかったな・・・石剣か・・・オブシディアン製?見た目はすごいが、切れ味はどうかな?」
「スネークよ、ここに材木を1本出してもらえるか?」
アイアイ!我、おえっと飲み込んでた木を吐き出します。
「店主の腕がいかほどかわからないので、私がその短剣で見せてあげましょう」
店長から短剣を受け取ると、ボルちゃんこともなげに木材を輪切りにしていく・・・
「すげー!」
「あんなにできるもんかよぅ!」
「まあボルさんならあれ位はやるよな!」
「なるほど、切れ味がすごいのはわかった。しかし石剣だからな。もろいのでこちらはそんなに出せないな。大銅貨3枚で買い取りしても?」
「わかった。それでいい」
「それじゃあ、木剣が10本大銅貨5枚、短剣は3本大銅貨3枚・・・合わせると・・・」
10×5+3×3=59やで!大銅貨が59枚、銀貨5枚と大銅貨9枚やで!
「大銅貨59枚だそうだ」
「うぉっ!換算速いな!そういう魔道具持ちか?」
「いや、計算はスネーク・・・従魔がやってる。計算は得意なんだそうだ!」
「ちょっと待っててくれ、金取ってくる・・・ポルが悪さしないようにランドルド、任せるぞ!」
ポルちゃんいったい何をしたんだ?店長、ダッシュでその場から離れ、ダッシュで戻って来た。ハァハァ言ってますな!
「・・・銀貨6枚だ。サービスしとく・・・ほかに何かいいものがあったらうちに持ってきてくれ。高値で買い取る。あんたの名前は?」
「ミア・ボルドウィン」
「そうか、ボルドウィンというのだな。ランドルドとはどこで知り合った?」
「シュタイルハング村で。詳しくは後で村長殿に聞いてくれ」
「そうか・・・ランドルド、また頼むぜ。いい客連れて来いよ!」
「それじゃあな!土産に木材はおいてくぜ!薪にでも使うんだな!」
「ポルんじゃねーだろ!その従魔が出したんじゃねーか!いらねーんなら貰っとくが!」
もろといてもろといて~
「貰っておいて~と言ってますんで大丈夫です!」




