雑貨屋にて
「ご店主さーん、この辺に雑貨屋さんなんかありますか?」
「雑貨屋さんかい?それなら、大通りに出て、左に進んで2番目の通りを右に曲がってちょっといったら左側にあるよ」
「はーい、ありがとうございましたー」
「お嬢ちゃん、覚えられたかな?」
「はいー、大通りに出て左、2つ目の通りを右、そのあと左ですね」
「あらぁ、賢いわねー」
「それじゃあ、お世話になりました~」
香辛料屋のおばちゃんに見送られ、大通りに戻って、アラさホイさと進んでいくと、横切る通りがあった。それを渡ってさらに進むと、また通りが出てきたのでそれを右に進み、ちょいと行ったところに雑貨屋があった。雑貨屋の看板は遠目では何だかよくわからないが、近くに寄ったら目についた。売ってあるものが看板に書かれているんや!
「こんにちはー!」
ハンナちゃんが率先して歩く。にゃ~お!うお!ネコや!ネコがおるー!異世界に来て初のキャット!異世界猫はいずこにおるの?と思ったら、ボルちゃんがあっさり捕まえて撫でていた・・・いつのまに!
「はーい、お客さんですかー?」
何とものんびりした調子のお姉さんが登場。雰囲気はエマさん風なのに体型はボルちゃん風だった。
「お客さんですよー!ノートと筆記具買いに来ましたー!あと、ここに土を入れる袋ってありますか?」
「土を入れる袋―?それは土建材屋さんに行かないとないよー!ノートは大きさと枚数、行数多いのと少ないの、無地、いろいろあるわよー!見てって好きなの選んでね~。あら~ミャアちゃん、かわいがってもらってるわね?」
「ご店主、この子は貴方の飼い猫ですか?私はミアといいます」
顔がデレデレしている。我、気配を消しておこう・・・ハンナちゃんは前世でいうところの大学ノートを指差した。
「お姉さん、これ沢山欲しいんですけど一冊おいくらですか?」
「あら、かわいいのにこんな無粋なノートを使うのね。おじさんみたい。ミアさんもそう思わない?あら、失言」
「業務用ですので・・・普段ならこちらの方を買いますが」
と、言ってハンナちゃんが手に取ったのは、何とか学習帳みたいな表紙に大きな写真?詳細な絵の載ったノートだった・・・よりにもよってアナコンダが表紙のを選びやがった!会話こそ似たり寄ったりの二人だったが、動物の嗜好については真反対のようだ。お姉さんの顔が愛想よくひく付いていた・・・
「はい、コレ5冊で大鉄貨3枚。筆記用具は・・・あなたエルフね?魔法が使える人ならこれ、使えるんじゃない?じゃじゃーん!魔法ペン~!」
魔力を込めて書き込むと、ペン先から念じた文字が紙に転写されるそうだ。ペン先と反対側を使うと、文字が消えてしまうという優れものらしい。
「これだと筆記用具に困らないわよ。ちょっとお高くて大銅貨5枚なんだけど・・・?どうする?止めとく?」
「あ、持ってますのでそれお願いします。あと、ノートは100冊。銅貨6枚分ですね。大銅貨6枚お渡ししますので銅貨4枚のお釣りをお願いします」
「・・・すごく計算早いのね・・・ちょっと待ってて。奥からまとめたものを持ってくるから!」
「ハンナちゃん、たくさん買いましたね~」
「これでスネークちゃんが新しい料理を教えてくれても大丈夫ですね!それにしても・・・」
いつもとはまるきり様子の違うボルちゃんに戸惑う二人であった・・・
お姉さんが帰ってくるまでの間、店内をうろつく我・・・客観的に見たらヘビが這っていて怖いと思う・・・雑貨といっても文具から調理具、裁縫道具etc.etc.多岐に渡っておりました。
「はいはーい、お待たせしました~。ノート百冊と魔法ペン、お釣りが銅貨4枚でーす。これはおまけね?」
そう言ってお姉さんが渡してきたのがアナコンダ学習帳だった・・・
「これ、ずっと売れてなくって・・・喜ぶ人がいたらあげた方がいいかなって思ったの」
「うわぁ、ありがとうございます!・・・あれ?スネークちゃん?お礼にスネークちゃんを見せてあげようと思ったのに!」
“馬鹿もん!ヘビが嫌いな人にお礼にヘビを見せるとか、お礼どころか嫌がらせじゃ!もう用が済んだのなら撤収せい!あ、土建屋の場所は聞いといて!”
「あ、そう言えば、土建材屋さんってどこにあるかご存じですか?」
「土建材屋さんはちょっと遠いわね。大通りをまっすぐ進んで鐘楼のある広場に出たら・・・左に回って二つ目の大通りを進むと、その辺が大きな商会だから。砂とか石板とかたくさん置いてあるからすぐわかるわよ」
ボルちゃんは・・・聞いてないな?大通りを鐘楼まで進んで、左回りをすると2つ目の通りがあるから、それを進めばいいのね!
“ほら、ボルちゃん!いくで!”
「あぁ、名残惜しぃ、ふわふわモフモフの手触り・・・」
“3秒で離さないとパラライズな!さん!にぃ~~!い”
一、といおうとしたら、ボルちゃんがやっとネコを手放した。床に降りてきたネコは・・・我と目が合うと一目散に逃げだした!そーでしょーねー!
「あらあら、ミャアちゃんお別れのあいさつをすればいいのにね~?」
なるほど。我、ハンナちゃんの頭にジャンプ。お別れの挨拶をば!
”それじゃ、お姉さん、世話になり申した。さらばジャ!“
お姉さん、ゆっくりと倒れていった・・・倒れる前にボルちゃんが支えたので大事にはならなかったが!




