ギルドマスターのお仕事
さりげなく修正・・・賢蛇の聖杯→賢蛇の王杯(聖) 賢蛇の呪杯→賢蛇の王杯(呪)
「それじゃあ、改めて自己紹介しよう。僕はここメルゼブルグの冒険者ギルドマスター、バルドイーン・ノルトマルク。こっちは実の父だ。名前が変わったのは妻の苗字にしたからだよ」
「有力者の娘に見事取り入って大出世というわけじゃよ、ふぉふぉふぉ!そうじゃ、今晩は4人お前のうちで世話になるぞ!」
「4人・・・ここには5人いるけど?」
「エルフ族の人は明日、ここをでるそうじゃ。それでここの二人とワシとポルティエの4人で泊まりに行く。いやだと言っても押し掛ける」
うわ、迷惑!おっと、ドアを叩く音が聞こえますな。
「すまないが皆はこちらにいると聞いたが、入っても?」
「はい、どーぞー!」
「・・・知らない方がいらっしゃいますので、挨拶をしておきます。ミア・ボルドウィンといいます。そこのエルフ族のまとめ役をしています。ここで何を話されているのでしょうか?」
「話の最初はワシからした方がいいかな・・・」
村長が話し始めた。呪いと祝福の付いた杯を鑑定してもらうため、鑑定室に物を持ち込んだ。その担当が、そこで倒れている女だった。女はめんどくさそうにしたが鑑定を施してみると、突然興奮しだし、杯を手に入れた経緯を詳しく聞き出した。なんでも杯には賢蛇の王杯(聖)と賢蛇の王杯(呪)と銘打たれていたそうだ。付呪や祝福をすると銘が打たれてしまうのか。ちなみに大きな杯には特に何もなかったらしい。当人曰く、ただのクリスタル(それでもとんでもない価値があるとは言っていた)だと。詳しく鑑定をすると、賢蛇の王杯(聖)は、それに入れたものを飲むとすぐに酔えるという祝福が施されていたそうだ。女はすぐに実験してみた。その部屋にある魔道具から水を出し、ジョッキに水を入れ、息もつかず呷ったそうだ・・・何回も確かめた結果酔っ払い、階段を駆け下りていった・・・(村長の回想談)。
「ではそのあとは私が・・・」
ルナ姉さんが話し出す。もともとこの女、ドナータ・バドエルというそうだ、名前の頭文字からドンちゃんと呼ばれていた、ドンちゃんが階段をどたどたと降りてきたと思ったら、フロアにいる新人冒険者4人を見つけた。スネークというのはお前のことか――って叫んでたわ・・・4人とも違う名前だし、残るはそこの従魔のヘビさんね、ドンちゃんもピンと来たらしいわ、直線でその子のところに向かおうとしたら、隣にいたエルフの子が通せんぼをしてきたの、なんて無茶なことをするんだろう!って思ったわ。でもそのあとの啖呵が!
{あなたには別に用はありませんが?スネークちゃんに用があるのなら私を通してもらわないと困りますね}
ドンちゃんに面と向かってこれだけ言える子ってなかなかのタマよ?そしたらドンちゃん逆上しちゃってその子を殴ろうとしたの、本気で!あっ!と思ったらなんだかドンちゃんの動きが止まってて、気づいたら、大きなエルフの子がドンちゃんの手を掴んでて。こっちの啖呵もすごかったわ!
{小さい子に暴力振るうなんて完全にいかれてますねぇ~}
そのあとはドンちゃんが殴られて終わり!たった一発!エルフの人ってこんなに力が強かったんでしたっけ?
「今の話で、あってる?サンサーンスさん?」
「エルフさんの発言が多少端折られていた感がしますがそれ以外は全て同意します」
「あ―、いつかやらかすかと思ったけど案外早かったねぇ!さて、どうしたらいいと思います?父さん?」
「お前、ギルドマスターなんじゃろ?責任ある立場なんだから自分で判断しろ!あと、お前んちに今日泊まるって奥さんに連絡入れとけ。あと、ひとり誰か貸せ。ワシ商業ギルドに行かんといかんのじゃ。ダメなら、そっちのやつ二人、解放しろ!こんなばかばかしいことに付きあっとられるか!」
「人員はお昼なので今出払ってて・・・えっと、村から出てきたんだよね、君ら?特に関係ないからもう出ていっていいよ」
ヴァッへ君とヴェヒター君、村長に連れられて出ていった。
「さて、事実関係は出そろった。話を聞くと全面的に彼女が悪い。彼女を使っていた我々の責任も問われる。どうすれば君たちに許してもらえるのだろうか?」
「通常、ギルド職員が、傘下のギルド員に暴行を振るう、または未遂であった場合、どのような対処をするのか?」
「つまり、通常通りの処分を望む、というわけだね。マリーンさん、ギルド規則ではどうなってたっけ?」
「暴行が事実である場合、その程度に合わせて、罰金・減俸・地位降格・ギルド追放となっております・・・ギルド員同士の争いではありませんので、しかも彼女から手を出しておりますので、最終処分は免れないかと・・・思います」
「そうだよねぇ・・・サンサーンスさんも同意見?」
「現場を見てしまいますと・・・いくら酒癖が悪いからといっても、あれはちょっとかばえませんよ。唯一の救いはバウアーさんが止めてくれたことですからね。本来は我々で止めないといけなかったことなんですけども」
「我らにアレを止めれる力もないし、はぁ・・・」
どうやら簡単には止めさせられない事情がありそうだ。我、にゅるりと這い出し、オーガドワーフ女のところに行き、光魔法をかける。レベルは・・・なんでしょうね?わかんないからLv.6ぐらいでいいか?しかし、ボルちゃん以上にスタイルがいい。ドワーフというのは背が低いんじゃなかったっけ?そしてつるペタで髪がもさもさしているのが女子ドワーフだったと思ったのだが・・・まるきり違うな!あってるのは髪もさもさってところだけだ。真っ黒な髪に日焼けした肌、ボン・キューーーーッ・ボーン!これはあれだな!お酒を飲まなければいい人なのにねぇ・・・とご近所さんから噂されてるな!黙って寝てる分にはものすごく美形なのだが・・・さっきのアレはちょっと夢に出てきそうだぞ!・・・っと、ちょっと待て?何だか首周りに魔力を感じますな・・・ネックレスか・・・ただのネックレスじゃなさそーだ。とりあえず
“光魔法Lv.6格の癒し”
「あっ、スネークちゃんが光りました・・・けど、何だか弾かれてませんか?」
「あれは何をやってるのですか?ギルド内では魔法は禁じているのですが」
「あれはスネークちゃんの治癒魔法です。あれで怪我した人を治したり、疲れた人を癒しているのですが・・・効いてませんね?」
「あの従魔、スネークちゃん?スネーク殿?名前はスネークでよいのですか?あれはボルドウィンさんの従魔なんですね?」
「そうだが、なにか?ここはもう処断を下して終わり、のところだと思いますが?我々としてもばかばかしい出来事にかかわっている場合ではないのですが?」
そーだぞ!こんなやつ、とっとと辞めさせろ!
「スネークちゃんも、彼女を辞めさせてお終いといってます。それができないのは、何かしがらみがあり、かつ彼女の仕事ぶりが他人にできないからではないでしょうか?そうだとしたら、この場合はギルド側が我らに“誠意”を見せることが重要だと思いますよ。あとはどうやって本人に反省させるか?」
ハンナちゃんが親指と人差し指をくっつけて丸い形にしている。げ、げすい!それはともかく・・・
“この人、なんか魔法を跳ね返す魔道具とか持ってるでしょ?そうじゃないと治癒できないし”
「・・・スネークちゃんは彼女を治癒しようとしてますが、彼女の持つ魔道具か何かでそれが弾かれていると言ってますね」
「いや、そんなことをしていただかなくても結構ですよ」
“いや、叩き起こして反省させようと思っとるねん!”
「・・・思っとるねん!といってます。さすが私の旦那様です!」
ちがうからね。我、ジト目で幼女エルフを見る。誤解を招く言い方は控えるように。
「ああ、彼女の状態異常耐性ネックレス、親に無理やり付けさせられたそうです。彼女自身も外せないそうで」
ええ親御さんやん!子供にそんな高価なもん、あげなそうだけどな。自分でつけるもんじゃないん?もしかしてお金持ちのお嬢さんだったりした?
「なんか、スネークちゃんが不埒なことを考えてます。お金持ちのお嬢さんがどうとか?」
“それはそうと光魔法の回復も状態異常になるのでしょうか?”
本日はこれにて。
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