またこのパターンか・・・
片付けを終え、早々に出発です。坂道も下り坂が急なところはほぼなくなりましたな。だんだんと谷からも遠ざかっている感じです。やがて坂道が終わる頃、山を抜けた感がした・・・土壌は村のと同じ感じですな!あまり養分はなさそうです。草原というか、川原というか、石とか礫とかがごろついている道を馬車は進んでおりまする。それにしても埃っぽい、風が吹くと埃がそのたびに吹き流れていく・・・あ!向こうでなんか動いたよ!
「今のはホールマウスですねぇ・・・あんまりおいしくはありませんし、ニクもちょっぴりしか取れません!」
御者を絶賛休憩中のエマさんが教えてくれた。片手にはボアの燻製肉だ。もう腹が減ったんかい・・・
「しばらく雨が降ってませんからねぇ・・・この辺りの作物は、今年は不出来なんでしょうねぇ・・・ここも水さえあれば、多少はましになると思うのですが、川からは距離がありますしねぇ・・・」
実家が農家の人は言うことが農家目線だった。
”水は川から引いてくればいいんじゃね?“
「水を引くには高低差が必要なんですよ~?」
“だから、高いところから低いところに水を流せばいいんじゃね?”
「それはそれは大変なことなんですよ~」
ま、最初は水路作ったり、貯水池作ったりで大変やろうけど、一旦作ってしまえば、天気はいいところみたいだし、一大農地になるかな・・・あ、土壌改良もしないとな!
なぜか農家目線になっていたところに、がたんと体が横揺れした。と、同時にガタゴト揺れていた馬車の揺れがなくなった感じだ。外を見ると、何やら大きな道に代わったらしい。遠くに我らが降りてきた山道が見えていた。
「この道をしばらく進むと、大きな壁が見えてきますよ~、そしたら人がたくさん並んでます!びっくりしちゃだめですよ~!」
ガタゴトガタゴト、ガタゴトガタゴト。キキーーーーッ!村長が先頭馬車を止めたようだ。
「この辺で小休止入れるかい。先頭はポルティエに任す。真ん中はヴェヒター、最後はエマ嬢かハンナの嬢ちゃん、ボルドウィン殿はワシと一緒に先頭馬車に乗ってくれ」
各々が馬車を下りて体操したり、用を足したり。大変やもんね。がまんしたらいかんもんね。
「そうだ、行列に並ぶ前に、ヴィンとバウアーは暑いとは思うがフード付きのマントをかぶるように。エルフと知られたらちょっかいを出す輩がいるかもしれんのでな。無用ないざこざは避けたい」
二人とも黙ってうなずいた。それ程、基本人族にエルフ族がいるとからまれるのだろうか?絡まれても撃退できる気もするが、それこそ街の警備兵?治安維持の公務員?みたいなのに世話になるかもしれないので、そんなことには時間はとられたくないんでしょうね・・・
さて、小休止を終えて再び馬車移動・・・徐々に大きくなる壁・・・そしてその下には豆粒のような、蟻のような・・・あれ、全部並んでるの?まじで?再び道が分かれて、馬車は壁に近づく方に進んだ。
・・・
馬車が止まりましたよ。あー此処が行列の最後尾かぁ。どれ位待つねん?何もなければ1時間くらい?なにかあったら?そん時は門はあきません。さよですか。一応徐々に動いているみたいだからよければ1時間ぐらいで門の中に入れるようですね。しっかし、村のツーツーの門とは大違いですなぁ!なにこの立派な壁!高さ5mはあるか?こんな立派な壁が必要なん?
「この壁は何百年もかかって高くしていったんですって。魔物の襲撃から町を守るにはこれでも足りないくらいですよ」
ハンナちゃんが教えてくれた。そりゃそうか、空を飛ぶ魔物がいたら入り放題だもんな!
「一応、結界のようなものは施されているのですが、ドラゴンとかの高位魔物だったら役に立ちませんけどね」
あれ?ドラゴンって魔物なの?いつぞや、幻想生物って言ってなかったっけ?
「それはブルードラゴンのことです。他にもアースドラゴンや、ファイアードラゴン、スカイドラゴンなどなど、ドラゴンにもいろいろあるのです」
トノサマドラゴン、ガマドラゴン、ドラゴンいろいろあるけれど~♪ この世~で一匹♪ むー、なぜブルードラゴンだけが幻想生物なのだろうか・・・全然納得がいかん!レッドドラゴンはどうした?レッドドレゴン、カモン!
まあ来られても困るわけだし、そうそうそんなことがあるわけもなく、列は粛々と進んでいく・・・今日は早く進む日のようでした。すんなり門の入り口のところに到着。ここは入り口専用みたいですな。少し離れたところに出口専用の門がありました。甲冑を来た兵士?さんが4人、門のこちら側に2人、向こう側に2人いますな。詰所みたいなものが壁のところにありまして、馬車を通すときに御者以外の人は降りて確認をするそうです。村長がボルちゃんと一緒に受付のところにいきました。ん?我を見てますな、そして指で来い来いしてますな!いいのかな?いいんだろうな!
「シュタイルハング村のアーベル・ランドルド、生産物を売買しに来た。同行者は、アンドレ・ポルティエ、ノイエ・ヴァッへ、トレウ・ヴェヒター。ヴァッへとヴェヒターはこの町で冒険者登録をする。それと、エルフ族の三名とその従魔が同じ馬車で同行した。これが私の身分証明証だ。通行料は私が全員分払う」
村長、懐から大銅貨8枚(我の分もしっかりとられた!)を支払った。
「私はアプフェル王国近衛軍所属のミア・ボルドウィン。身分証明証は・・・冒険者登録証でよかったな?同行者はエマ・バウアー、ハンナ・ヴィンデルバンド。二人とも冒険者登録を頼みに来た。そして私の従魔がいる」
我、呼ばれて飛び出てじゃジャ蛇じゃーん!受付のテーブルまでひとっとび。ちょっと受付のおじさん、引いてますな!
「ヘビの従魔とは珍しいですな。きちんと従魔契約ができていますか?確認のためここで何か指示を出されてください」
「三回転がった後、四回跳びはねろ。終ったら、私の頭に着地」
アイアイサ~!
転がるは前転でいいのか?丸まっていちこ~ろ、にこ~ろ、さんこ~ろ。立ち上がってぴょん!ぴょん!ぴょん!ぴょよよよ~ん!ボルちゃんの頭に着地!10点10点10点10点10点!満点出ました!
「賢い魔物のようですね。食事は何を与えてますか?」
「木の実が好きなようで・・・ここのところ桃ばかりです」
「桃はたくさん持っておりますかな?」
ボルちゃん、桃を15個?くらい取り出す。
「さて、3×4-8、この分の桃を食べさせてみてください」
アホか?小学生でもわかるっつーの!3×4で12、そこから8引いたら4やねんか!もしかしてなんかの振りか?なんも思いつかんで!
我、桃を4つ、ちょっとお早い昼飯です。
「おー、算術のできる魔物とは珍しいですな」
「きちんと人の言葉も理解している。今、馬鹿にされたとちょっと怒っているぞ!」
そーですよ、我をあまり舐めてもらってはこまりますね・・・
「とにかく、こちらから手出ししなければ何もしないことは保証する」
「わかりました。それでは、こちらの従魔の証をつけてください。首周りに付けるとよいでしょう」
何やら赤いスカーフを渡されたようだ。ボルちゃんが我に額金の上からスカーフを巻いた・・・ヨダレかけやな!おへびちゃん、もうお昼はいただきましたよ?
「残った桃はそちらでお召し上がりください」
「そうですか、それでは遠慮なく。滞在予定は?」
「長くても二泊くらいか」
「短期滞在ですね。わかりました。メルゼブルグへようこそ。よきご滞在になりますように」
通してくれたようですね。さて、この世界の町はどんなもんかな?




