一波乱は起こりません
お?今までに見たことがない人がおるな!帯剣しているところを見ると冒険者?あれ?4人ほど我をぐるりと囲んでいるよ?
「父上、不用心が過ぎますな!門のところに誰も人がいないので、魔物が入り放題ではありませんか?それと、このお祭り騒ぎは何ですかな?あそこにいるのはエルフ族ですね?隊長さんが戻ってこられたということでしょうか?」
ボルちゃんがしゅっとやって来た。
「ああ、若村長・・・確か名前は・・・アルバン殿でしたな?その魔物・・・は、私の従魔です。村長殿に許可をもらって村に入れています。特に危険なことはありません。が、手を出したりすると危険ですのでお止めください!」
「婿殿、そういうことじゃ!あまり殺気を放すでない。」
「アルバン、魔物といってもこいつからは全然魔力を感じないぞ!用心する必要ないんじゃないか?」
そうそう、我、大したことないでありんす~♪
「どちらかというと、そこの隊長さんの方が危険ですねぇ!研ぎ澄まされた剣のような剣呑な気配ですよ!」
「隊長さんが危険人物というのは賛成ですが、例えは違いますね。引き絞られた魔弓といった感じでしょうか!」
「いやいや、あそこでなんか食ってるエルフがやばいことに気づけ!」
“あ~、私は人畜無害というわけですね?”
ハンナちゃん、あーた・・・><
「あ、今気づいた!アーダ嬢ちゃんの横にいるエルフ!あいつも相当な使い手だぞ!」
見つかっちゃった><!
せっかくの打ち上げを台無しにする気か?とか思ってたら、村長つかつかと近づいていって、若村長とやらの頭に拳骨を叩きこんだ!痛ったそー><
「殴ったね?本当のおやじにも殴られたことなかったのに!」
「話を聞かんか、馬鹿もんが!2か月ほど前にエルフさん達を村に入れたろうが!そして隊長のボルドウィン殿が帰ってこられたのじゃ!その時についてきた従魔殿がそのスネーク殿じゃ!このエルフさん方々には馬が来るまで村のことを親身になって世話してもらっとったのじゃ!それに仇をなそうとするのはこのわしが許さん!」
そんな若村長のところへ、とことこと近づいていくのは、天使アーダちゃん・・・我を捕まえた!?なぜに?
「パパ~、すねぇくちゃんにあやまって~!すねぇくちゃん、おじいちゃんのお願い、いっぱいいっぱい聞いてくれたの!美味しいものもたくさん作ってくれたの!だから、あやまって!」
我を、捕まえ両手でパパの前に突き出すアーダちゃん!
「あなた、素直に謝った方がいいわよ!」
「アデリナまで・・・親父殿の言ったことは本当なのか?」
「ええ。全部本当。というか、あなたに嘘ついたことがあったかしら?」
「このヘビが?あのエルフ達が?」
「まずはこれを飲め!馬車旅で疲れとるだろ。ほれ、お前らも突っ立ってないで受け取らんかい!」
頭を抱える若村長に、エールの入ったジョッキを差し出す奥様達。
「なぜ、村にエールがあるんだ??」
「疑問はいいから飲め?な!」
いまだに首をかしげる若村長に、近づくはポルちゃん!
「そら、若様はお囃子が足りないらしい!そーら、若様のちょっといいとこ、見てみたい!そら、飲―んで~!ハイ!飲―んで!飲―んで~!ハイ飲―んでー♪」
若者のコンパか?掛け声に合わせて飲んでいく5人。
「ぶはーーーーーっ!今までに飲んだことのない味わい?どうしたんだ親父殿?」
「スネーク殿が今日作った酒だ。酒だけじゃないぞ。砂糖に似たショ糖というのも、いや、それだけじゃない、お前が持っているそのジョッキというものもそうだ。今年干ばつになりそうなどと思っていたら黒麦も今年1年分を栽培してくれた。それだけではないぞ!村に新産業を導入したいと言ったら、ガルスガルス飼って卵を使って新料理を作ってくれて、それを軸にした観光業をやればよいとアドバイスしてくれた。宿泊用の木材も用意してくれた。こんなに世話になったのに、お前たちは剣を向けるのか?」
「・・・騙されてない?そういう魔法あるよ?」
「目の前に酒があるのにお前は騙されているのか?俺は騙されていーーーーーー!」
ポルちゃんや、飲み過ぎはよくないぞ!ポレットさんが耳を引っ張って向こうにつれて行ってくれた。
「何をするにせよ、飲んだら次は飯を食え。片道1週間とはいえ、疲れただろう?ポルドウィン殿は急ぎの用があるので明日朝飯食って出発でいいか?」
「ああ、それで構わない。世話になる」
こうして一波乱あるかと思われたが、特に何もなく、打ち上げは終わった。




