人生はガルスを背負って山道を歩くに似たり
水の流れる岩場をあとにして、傾斜を登っていくボルさんになかなか追いつけない。その姿を見失う直前に止まってくれるが、追いついたと思う前に再び移動していく。気づけば一山を越え、下りの傾斜に入った。
「もう少ししたらまた水場がある。あの辺りだが、わかるか?そこで昨日の雌のガルスを生け捕りにした。もしかしたらもっといるかもしれないので、ここからはゆっくりでいい~音を立てずに移動してくれ。できれば息も潜めておいてもらいたい。気配を殺していかないと逃げられるか攻撃されるかもしれないからな」
それだけ言い残して、さっと下り坂を滑るように駆けていった・・・言っただけあって音も立ててない。
「あれ位じゃないとガルスは狩れないのかねぇ・・・」
「でも、結局は罠を使うんだろ?それだったら俺たちとおんなじじゃんか?」
「このあんぽんたん!生け捕りじゃなければ弓でサクサク落としているわい!生け捕りにするからこその罠だろうが!」
「ポルティエさん、ここからは喋らないで行きましょう、そうボルドウィンさんに言われたはずでは?」
おっとそうだった。俺は唇に指をあて、小声で皆に伝える。
「それじゃ、いくぞ!オレが先頭を行く。みんなドジ踏むなよ!」
「ポルティエさん、しーーーっ・・・」
俺たちはボルさんの言ってた水場とやらに着いた・・・ここであってるかな?あたりを見回す・・・ヴェヒターが俺の方を叩いたと思ったら指を下りの方向に差した。
{煙が立ってるな・・・あれが、ボルさんの言っていた罠なのか?}
小声でつぶやいてたら、今度はヴェルダーブーホが俺の肩を叩いて、別の方向を指差した。どうやら4か所煙が立っている。あれ、全部罠なのか?一番近くの煙が立っているところに、音も立てず忍び寄ると・・・でかいガルスガルスが木の根元で縛られていた。
{ここはこのままにして、次の煙の立つところへ行ってみるか!}
小声で皆につぶやくが、一人うかつにガルスのところへ近づいたやつがいる。ガルスの様子をみたかったんだと思うが、あまりに不用意に近づいたため、まっすぐ立ち上っていた煙が乱れそいつに向かった・・・煙に巻かれたそいつはアワアワとなり膝から崩れ落ちる・・・そのうかつな奴とは、期待通り、ヴァッへであった。
{あーー、やっぱりあの煙が罠だったんだよぅ}
{どうします?このまま進みますか?}
{いや、ほっとくわけにもいかんだろう?ヴェヒター、ヴェルダーブーホ、フレンデはここで待機だ。くれぐれも煙を吸うんじゃないぞ。風向きには十分注意してな!危険を感じたら、ガルスは置いていっていい。前の岩場のところまで撤退すること。他の者たちは次の場所へ移動だ}
俺たちは煙の立つ場所へ移動する・・・煙のあがっているところには漏れなく木の根元にガルスガルスが縛られていた。探している間にどんどん煙の立つ場所が増えていく・・・やばいぞ、持って帰れるのか?もう止めないと!
俺たちはもう気配を殺すことなくボルさんを探した。そうしないとどんどん煙が立つのが増えていくからだ。大声を出したら、向こうで気づいてくれたようで、しばらくするとこちらにボルさんが来てくれた。
「どうした?ポルティエ殿?」
「いや、もう十分じゃないか?あまり多くても運びきれないぞ?」
「そうか?一人一羽ぐらいは運べると思ったが?」
「俺やあんたならそうかもしれんが、他の者には厳しいかもしれん。今、全部で何羽縛った?」
「雌が12羽、雄を10羽縛った。雄はまあ物の数には入らんが、繁殖用に何羽かつれて来いと言われてな。全部生け捕りにした。そろそろ頃合いか?」
「あの煙は痺れ草を燃やしたんだな?ヴァッへのやつが吸い込んでいま麻痺ってる」
「そうか・・・注意しておくの忘れてたな。ガルスガルスだと3時間ぐらいで麻痺が解けてたから人間も同じくらいだろう。それでは、この辺りで昼休憩をしてから帰るか」
俺たちは一旦縛られたガルスガルスを麻痺ってるヴァッへのところまでもっていき、そこで昼休憩をすることにした。昼飯の用意は、俺たちはしていなかったが、ボルさんが栗を湯がいてくれた。満腹になると荷物なんか持てなくなるので、ほどほどにしておいた。さっさと昼飯を食べ終わると、あとは帰るだけだが・・・
「これを背負って帰るのか・・・」
一人痺れているアホがいるので16人が雌12羽、雄10羽を背負うのか・・・一人はだれかが背負うので、実質15人、ほぼ一人一羽か、げーーーー!
本日はこれにて。
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