お休み前にご褒美を
さてさて。今日の仕事は今日中に終わらせましょ。プリンを作れということでしたので・・・まずはプリン入れる容器をどうしますかな?どうも食器には木製のものが多かったようだが・・・スプーンやフォークはそれでもいいのです。しかし器の方は調理用の道具としては駄目ですな・・・んーーー陶器なら、作れるか・・・粘土も土のうちだし、いや待て!確かガラスは砂から作られているはずだ!ガラスの器ができるか・・・いや、やはりやりすぎてはいかんな・・・我、外にある土を掘り返す。その中から使えるものを取り出す・・・
“金魔法Lv.1抽出!”
“ン デデデデーン”
“なにからなにを抽出されますか?”
えーと、この土から粘土分を抽出してちょ!
“テ・テ・テ・テーン“
目の前にあった土の山から、白いさらさらした粒子が取り出された。
これが、たぶん粘土分なんでしょうね。粘土分は砂よりも粒子の細かい土だから砂を形作る魔法が使えるはずや!我、水魔法でサラサラ粒子に水をかけてから土魔法Lv.17砂形成でコネコネし、最終的にマグカップを10個作り上げた。あとは火魔法で焼き固めるだけです。
できたカップを形を壊さないように石のテーブルの上に置き、火魔法Lv.3炎で焼き上げます・・・
「スネークよ・・・これはいったい何してるのだ?」
「スネークちゃんの火魔法ですね!青くてきれいな炎です。これは私の火魔法より温度が高いのではないでしょうか!」
「スネークさんは~オニクを・・・焼いているのではないようですね・・・あれは器かなぁ?」
ニクを食い終わったエマさんがまともなことを言っている!
“これはプリンを作るための器を作っているのだ!冷えるまで触っちゃ駄目よ!”
冷めるまで、我、別のことをする・・・
エマさんや、今ジャガイモ持ってる?ああ持ってる・・・それじゃ10個ほど皮剥いてくれない?・・・剥き終わったかい?それじゃあ、ハンナちゃんもご高覧あれ。我の金魔法!
“金魔法Lv.1 抽出”
“ン デデデデーン”
“なにからなにを抽出しますか?”
“イモからでんぷんを抽出して”
“テ・テ・テ・テーン”
イモと白い粉・・・でんぷんに分かれました。そしたらこのでんぷんを
”金魔法”Lv.2分解“
“ン デデデデーン”
“何を分解しますか?”
“でんぷんを分解して”
“テ・テ・テ・テーン“
変な音とともに、白い粉が別の白い粉になった。ブドウ糖ですな!砂糖とは違うけどまあいいか。
“ハンナちゃんエマさん、この白い粉ちょっと舐めてみ?”
“おいスネークよ!私には聞かないのか?”
“ボルちゃんは自分に厳しそうだから、ご褒美は後にした方がいいだろ?これはプリンの味付けだぞ!”
“そ、そうか?私のことを騙してないか?”
“我がボルちゃんを騙したことがあるか?”
“騙されたように風結晶を取られたからなぁ・・・”
“あ、あのこと根に持ってたのね!我、騙してないでしょ?嘘もついてないし!”
白い粉を指につけたエルフ二人、声をそろえて
「「甘――――――――い!!!!!」」
ボルちゃんも舐めてみるか?
”いや、私はプリンなるものができるまで我慢するぞ!”
ボルちゃんは意地っ張りですなぁ!我、ニヤリ!
残ってるポルちゃん夫妻と村長家族にも味見をしてもらう・・・
「これは砂糖かな?・・・王室に献上されているのは黒い砂糖と聞いたが、この白さは一体?」
「お父さん知らないの?北の帝国では貴族の嗜好品で白い砂糖もあるらしいよ。黒い方だってお金を払えば平民でも買えるのよ?平民と言っても大富豪とか成功した冒険者ぐらいのほんの一握りなんだけど」
皆さん目が銭マークになってるで!
“これは舐めすぎると虫歯になるのだ!夜中に舐めたら寝る前に絶対歯を磨かないといけないのだ!それと舐めすぎたら病気になるから、ほんの少し使うことにしないといけないのだ!”
「・・・いけないのだ!と言ってます!」
「これをたくさん作ってもらうわけにはいかんか?」
“作ったはいいけど、我がいなくなった後で困ることになりゃせんか?この味は癖になるからなぁ。依存症になる輩が出てもおかしくない。それよりは桃や柿を使って甘みを作る方がずっと村のためになるぞ!”
「・・・なるぞ!と言ってます!」
「いる間は作ってくれるんだな(ニヤリ)。それじゃあ頼んだぞ!」
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焼いた器を冷やしている間にプリンづくりをする。もちろん作るのはお料理担当のハンナちゃんだ。まずは材料をそろえてもらいましょう。ボルちゃん卵10個出して!アデーレさんは牛乳・・・はないんだっけ、ヤギ乳でもええか、小鍋一杯ぐらいかな?くださいな!それではハンナちゃん、まずは卵を割ってきれいな鍋にいれましょう!全部入れたら、ハイ!攪拌~、一生懸命混ぜてください!エマさんが交代?うーん、なんか力任せで壊しそうな感じがするのでパス!アデリナさんにやってもらいましょ。白身と黄身が満遍なく混ざるようにしてね!・・・アーダちゃんもやりたい?アーダちゃんには重要なお役目があります!この白い粉をスプーンで十杯、少しずつ入れてください。十、数えられるかな~?
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よくできましたー!ハンナちゃんは残ってる粉を持って石板のところに来て!我、今からこの中にちょっとだけ水を入れます。水が入ったらこの粉をスプーン1杯ずつ入れていってください。色が変わってきましたね!これ、カラメル反応ですな!より熱を加えると焦げて苦みが増すので注意してね!これだけでもお菓子になるのですが・・・すこ~し熱を加えた方がいいか。ちょっとだけ火魔法Lv.2で加熱。いい色合いですな!そちらは終わったらヤギ乳を少しずつ入れてください・・・ん?この乳は何だか冷気を感じる。
「ああ、これはできたバターを保存するための魔道具の中に入れていたものです。バター作りをする工房を村に導入するため試しに家で購入してみたのですよ」
“冷蔵庫みたいなものかな?そんなのがあるんなら、この村貧乏じゃないじゃん!”
「・・・ないじゃん!と言ってますが?」
「魔道具購入のため莫大な借金を抱えてしまってのぅ・・・バターとチーズ作りで借金は返しているものの、元金はなかなか減らんのだよ」
話をしている間にいい感じのプリンのトロトロ生地が仕上がった。そんじゃあ、その生地をこっちの器に入れてって。全部入りましたかな?それでは、我が石板の下から温めて見せましょう!火魔法Lv.2火!加熱をやり過ぎないように、様子を見ながら・・・いい感じに仕上がった。異世界プリンの完成です!
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出来上がったプリンを加熱していない石板テーブルに移動させて味見をしてもらう。もちろん熱いのであら熱が取れるまで待ちますが。本来、暑いこの季節には冷たいほうがおいしいと思うのだが・・・皆さん待ちきれなかったようです!待ちきれなかったといえば、お皿にひっくり返して食べることも却下!このままスプーンですくって食べることになりました。
”それでは、ただきます!”
「いただきます!と言ってます。それは古の勇者が、食事の直前にする挨拶ですね?やはり勇者となにか関係があるのでは?」
「いや、スネークは生まれてからそんなに経ってないのであろう?」
“あ、あまりこの話を掘り下げないでくれる?”
「まずはいただいてみるとしようか、皆様方」
皆、木のスプーンを使って口元に持ってくると、フーフー吹いてから、あーんと一口・・・
「「「「「「「「「うま~~~~ぃ!」」」」」」」」」
我、スプーンが扱えず!食べられないではないか!!我の様子を見たアーダちゃんが
「はい、すねぇくちゃん、あーんして!」
あ、アーダちゃん、君は天使だーーー!我泣き濡れてプリンを食する・・・味はそれなりだった。
本日は一話のみでした。
お読みいただきありがとうございます。




