96話 従姉弟は結婚できるでしょう?
俺は慌ててユキに言う。
「帰り道だよ」
「普段はここ、通らないよね。まさか……夏帆を差し置いて……」
ユキは顔を赤くして、ラブホテルと俺たちを見比べる。
俺はぶんぶんと首を横に振った。玲衣さんには言わなかったけれど、俺たちはラブホテルに入れない。
「たまたまゲーセンの帰りに通りがかっただけ。制服を着たまま、入れるわけないよ」
「あっ……」
玲衣さんとユキは顔を見合わせ、その後に俺に顔を向けて「それはそうだ」という表情をした。
高校生の立ち入りは禁止だし、制服を着ていたら当然、入店は禁止だ。
「そういうわけだから、冗談だって言ったんだよ」
「ああ、そっか」
玲衣さんがほっとしたような、がっかりしたような複雑そうな表情を浮かべる。
「というか、ユキこそどうしてこんなところにいたの……?」
「わ、私もゲームセンターに寄ってたの」
「なるほどね」
ユキも意外とゲーム好きだ。格闘ゲームなんか、けっこう強かったりする。
ユキは寂しそうに微笑んだ。
「また、アキくんの家でテレビゲームしたり、ゲームセンターに寄ったりしたいな。夏帆と一緒に」
俺が答えるより先に、玲衣さんが口をはさむ。
「本当は晴人くんと二人きりが良いんじゃないの? 今朝だって晴人くんに抱きついていたし」
「あ、あれはそういうのじゃないから! 私はアキくんと夏帆と一緒がいることが大事なんだもの。……私、まだ水琴さんのことを認めていないんだからね?」
「大丈夫。桜井さんが認めても認めなくても、わたしは晴人くんのものだもの」
バチバチと玲衣さんとユキの視線が火花を散らす。
俺は慌てた。このまま二人で帰るというのは、さすがに気まずい。
けれど、ユキが腕時計を見て、ため息をついた。
「お母さんが駅まで車で迎えに来てくれるの」
「そうなんだ」
「でも、二人きりだからって、イチャイチャしたらダメなんだからね……?」
ユキは「うーっ」と威嚇するように玲衣さんを睨む。でも、雰囲気が小動物めいているからか、可愛い仕草にしか見えない。
それは玲衣さんも同じだったようで、「あはは」と苦笑いをしている。
そして、ユキは名残おしそうに去っていった。
俺たちも隣に並んで帰り道を歩き始める。
玲衣さんがくすっと笑い、少し首をかしげる。
「桜井さん、わたしたちに嫉妬していたね」
「そう……なのかもね」
昔からユキは大事な友人だった。
ユキは俺と夏帆をくっつけようとしていて、でも、俺のことを好きであるようで。
そんなユキは、俺の隣にいる玲衣さんを許せないのかもしれない。
玲衣さんは柔らかい表情になる。
「わたしはね、ヤキモチを焼かれるのも、悪くないかもって思っているの」
「え?」
「だって、嫉妬されるぐらい、わたしが晴人くんに大事にされているってことだもの。佐々木さんにも、桜井さんにも、琴音にも、雨音さんにも、すごくヤキモチ焼かれるぐらい、晴人くんに好きになってもらうの」
玲衣さんがふふっと笑う。その笑みは妖艶ですらあった。玲衣さんの想いの強さに圧倒され、俺はたじろいでしまう。
「少なくとも、雨音姉さんは関係ないんじゃないかな……」
「どうして?」
「だって、雨音姉さんは俺の従姉で家族だよ。俺に異性として好意を持っているわけないし……」
玲衣さんはぴたっと足を止めた。そして、まじまじと俺を見つめる。
「本当にそう思う?」
「え?」
「雨音さんは、晴人くんのこと、好きな気がするな……」
「まあ、そりゃ、家族としては好きだと思うよ」
「そうじゃなくて、男の子として意識していると思うの」
「まさか。雨音姉さんはいつも俺をからかってばかりで、俺を男として見ているなんて、そんなことないよ」
「そうかな。家族でも互いを好きになってしまうことはあるでしょう? 従姉弟は結婚できるし」
「雨音姉さんと俺が結婚……か」
考えたこともなかった。もしそうなったら、父さんはどんな顔をするだろう?
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