書籍化記念SS② コーラを飲む?
これは遠見の屋敷の離れに引っ越しした日のこと。
「離れだけでもこんなに広いんだ……!」
「うちのアパートとは違うわね」
夏帆と雨音姉さんが離れのダイニングで楽しそうに言う。
俺と玲衣さん、夏帆、そして雨音姉さんの四人が、この離れにそれぞれ部屋を与えられている。食事は一緒のダイニングで四人で摂るけれど、なんと遠見家の料理人が用意してくれるらしい
至れり尽くせりだけれど、あまりにも急な話で驚きの連続だったし、引っ越し作業のせいでかなりの疲労感がある。
俺がふうっと息を吐くと、夏帆がくすっと笑う。
「晴人、お疲れだね」
「そうかもしれない……」
「はい。コーラ、買ってきたの。飲む?」
夏帆が俺にコーラのペットボトルを差し出した。ちょうど冷たい飲み物を飲みたい気分だったので助かる。
「ありがとう」
「どういたしまして」
俺のお礼に夏帆は嬉しそうに微笑んだ。俺は蓋を開けて、冷たいコーラを飲む。甘さと炭酸が、心地よい。
冬場とはいえ、部屋は暖房が効いていて、いろいろ作業したら喉が乾いてしまっていた。
玲衣さんは自分の部屋に行き、荷物を置いているみたいだった。
夏帆が俺をじーっと大きな瞳で見つめる。
「夏帆? どうしたの?」
「え? ううん。なんでもない」
夏帆が顔を赤くした。なんでも無いという感じではないから、どうしたんだろう?
「ね、それより晴人。ここってすごく広い大浴場があるんだよね?」
「らしいね」
「ちょっと楽しみ!」
夏帆はわくわくという感じで、顔を輝かせる。
この街は大して有名ではないけれど、いちおう温泉が湧いている。
遠見家は温泉旅館のようなものも運営していたし、それを自分の屋敷の浴場にも引いているようだった。
「晴人、さっそく入ってきたら?」
「え、でも……」
そんなにすぐに使えるのだろうか? 雨音姉さんが横から口を挟む。
「もう使える状態だって、メイドの渡会さんが言ってたわ」
「そうなんだ……」
まあ、たしかに疲れたし、ちょうどいいのかもしれない。一通り引っ越しの整理も済んでいるし。俺も夏帆と同じで、実は大浴場を楽しみにしていた。
普通の家には、温泉なんてないし。
結局、俺は夏帆の提案に乗った。
夏帆がくすっと笑う。
「上がってきたら、冷たい飲み物、用意しといてあげる」
「ありがと」
「ついでに、あたし、も用意しておこうか?」
「え?」
「お風呂にする、ご飯にする、それともあたし?……ってやつ」
俺が頬を赤くすると、夏帆はいたずらっぽく目を輝かせた。
<あとがき>
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