87話 誰を選ぶの?
雨音姉さんは、Tシャツ一枚のみを着た姿で、俺を抱きしめている。
今は深夜で、遠見の屋敷の和室で、俺と雨音姉さんは二人きり。
「私をどうする?」
と雨音姉さんはからかうように、けれど恥ずかしそうに俺にもう一度言った。
近くには、布団もあって……。さっきまで俺は夏帆と琴音の二人とあそこで寝ていて、二人に抱きつかれ、キスをされていた。
「私ともそういうことをする?」
雨音姉さんは、俺の耳元に甘い声でそうささやいた。
風呂上がりなのか、ふわりとした良い香りがして、俺は動揺する。
「そ、そういうことを夏帆たちにさせないために、雨音姉さんがここに来たんじゃ……」
「私は従姉だからいいの」
「それはなんか違う気が……」
「それとも、従姉の私でもえ、緊張する?」
雨音姉さんは俺を抱きしめながら、そう言った。
その柔らかさと温かさにくらりとする。
「こんなことして……もし俺が雨音姉さんと間違いを起こしそうになったらどうするの?」
「へえ、やっぱり、晴人君、私にいけないこと、感じているんだ?」
「し、してない!」
「私の胸、水琴さんよりも夏帆よりも大きいでしょ? 触ってみる?」
雨音姉さんは、つんつんと自分の胸をつつく。
……さすがにおかしい。
雨音姉さんはいたずら好きだけど、こんなことをする人じゃない。
そう。普段なら。
その時初めて、俺は雨音姉さんが酒に酔っていることに気づいた。
目がとろんとしていて、息遣いが荒い。
「め、珍しいね。雨音さんがこんなに酔うなんて」
「だって……他の子たちに晴人君をとられそうで心配で……」
雨音さんは上目遣いで俺を見て、そんなことを言う。
「少し前までは、私だけが晴人君と一緒に住んでいて、晴人君と一緒にいるのは私の特権だったのに、今じゃ三人も美少女を侍らせているし……」
「いや、それは誤解で……」
「三人ともとキスしたのに?」
俺はうっと詰まる。雨音姉さんは寂しそうな目で俺を見る。
「私ともキスしたい?」
「そ、それは……」
「できない?」
雨音さんの柔らかそうな唇がささやく。相変わらず、雨音姉さんは俺に抱きついている。
このままだと本当に雨音姉さんにキスして、そして……その後、どうにかしてしまいそうだ。
俺は誘惑に耐え、雨音姉さんをまっすぐに見つめる。
「雨音さんは俺の従姉で、姉代わりで、大事な家族だから。そんなこと、できないよ」
「……晴人君の女たらし。そう言ってくれるのは嬉しいけれどね」
雨音姉さんは微笑んだ。
そして、雨音姉さんは俺を見つめた。
「ねえ、晴人君は……誰を選ぶの?」
「え?」
「水琴さん、夏帆ちゃん、それとも琴音?」
「選ぶだなんて、そんな……」
「だって、三人とも、晴人君のこと、大好きだもの。晴人君が自由に選ぶことができるの。決めないの?」
雨音姉さんは俺の耳元でそうささやいた。
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