86話 雨音姉さんの思惑?
琴音は薄いネグリジェで、夏帆は下着姿。
そんな二人は、俺の部屋のなかで、雨音姉さんを前にしてうろたえていた。
もともと、琴音の提案で、屋敷の女子が抜け駆けして俺に迫らないかを交代交代で監視するはずだったのに。
監視役の琴音も夏帆も、俺を誘惑しようとして、そのことが雨音姉さんにバレてしまった。
「二人ともレッドカード。退場」
と雨音姉さんは楽しそうに言う。
琴音が口をぱくぱくとさせる。
「で、でも……」
「晴人と変なことをするつもりだったでしょ?」
「ち、違います……」
「なら、二人の格好はなに?」
うっ、と言葉につまり、琴音は目をそらした。
事実だから、反論できないんだろう。
「まったく……」
と雨音姉さんは大げさにため息を付き、胸を張る。
雨音姉さんもTシャツ一枚という姿だから、俺はついその胸元を目で追ってしまった。
「あ、雨音さんだって、そんな格好、ダメなんじゃ……」
と夏帆が言いかけるが、雨音姉さんはにっこりと微笑んだ。
「大丈夫、だって、私は晴人の従姉だもの」
と言って、雨音姉さんは、二人を部屋から追い出してしまった。
夏帆も琴音も若干、納得いかなさそうにしていたけど、俺が雨音姉さんの言うことに従うように頼むと、二人ともしぶしぶ出ていった。
二人きりになって、俺はほっと息をついた。
あのまま、夏帆と琴音に迫られていたら……どうなっていたかわからない。
俺は雨音さんに向き直る。
「助かったよ。雨音さんが来てくれなかったら……」
「あの二人を押し倒していた?」
と雨音さんはくすっと笑う。
直接的な表現に俺はどう答えればいいか、わからなかった。
雨音姉さんは俺の耳元でささやく。
「本当は私に邪魔されて、残念だったでしょ? せっかく美少女二人といろいろできるチャンスだったのに」
「そ、そんなこと思ってない……」
「ふうん、ホントに?」
そして、雨音姉さんは、急に俺に近づいた。
「あ、雨音姉さん……?」
「昔は可愛くて良い子だったのに……今は可愛い女の子をいっぱいたぶらかして……」
「たぶらかしてなんかいないよ」
「でも、水琴さんも、佐々木さんも、遠見さんも、みんなあなたのことが好きでしょ?」
そう。それはそのとおりだ。
だけど……
思考は途中で中断された。
雨音姉さんが、ぎゅっと俺を抱きしめたからだ。
俺が小学生で、雨音姉さんが高校生だったときも、こういうふうに抱きしめられたことはあるけれど。
でも、今は、俺も高校生で、意味合いが異なる。
俺は心臓がどきりと跳ねるのを感じた。
「もう晴人君も……子どもじゃないんだ」
「うん……」
「ねえ、晴人君……私をどうする?」
雨音姉さんは俺にぴったり密着して、楽しそうに、でも頬を赤くして、尋ねた。
ヒロインが可愛い、雨音と晴人がどうなるかが気になるという方は、ポイント評価、お願いします!






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