77話 琴音の宣戦布告
少し書き換えました。
琴音はそのまま俺の唇に、自分の唇を重ね、幸せそうに微笑んでいた。
俺は琴音に告白され、そしてキスをされたのだ。
やがて、琴音はキスを終えて、くすっと笑った。
琴音が強引にしたこととはいえ、玲衣さんの前でキスをしてしまった。
俺はうろたえて、玲衣さんのほうを見た。
玲衣さんは衝撃を受けたように固まっていた。
一方の琴音は相変わらず、バスタオル一枚で、しかもずぶ濡れだった。
なんというか、目のやり場に困る。
「先輩? 姉さんの前で私のこと、そんなやらしい目で見ていていいんですか?」
「見ていないよ」
「先輩の嘘つき」
琴音はくすくす笑い、そして玲衣さんに向き直った。
「ねえ、姉さん。私、毎日、先輩と一緒に寝ているんですよ? この意味、わかります?」
琴音の言葉に玲衣さんはかああっと顔を赤くした。
まずい。
誤解されている。
玲衣さんは口をぱくぱくとさせ、俺と琴音を指差した。
「寝ているって、まさか、そういうことをしてるってこと……?」
「先輩のことを責めないであげてください、姉さん。ずっと二人きりで、命の危険にさらされていたら、そういう関係にもなってしまいます」
琴音は愉快そうに言った。
明確な嘘こそついていないけど、明らかに誤解されるように言葉を選んでいる。
たしかに俺と琴音は一緒のベッドで寝ている。
だけど、それは琴音が怖くて眠れないからで、やましい関係では一切ない。
俺は説明しようとしたが、琴音の細い人差し指に口を塞がれた。
琴音のちょっとした仕草に俺は動揺してしまう。
「こ、琴音……」
「姉さんに言い訳するんですか? でも、一緒に寝たのも、キスしたのも、本当のことですよね?」
「そうだけど……」
「それに、わたしが先輩のことを好きなのも、本当のことですよ」
琴音は顔を赤くして、俺を上目遣いに見た。
「先輩は私のこと守ってくれました。だから……これからも、姉さんじゃなくて、私のことを守って欲しいと思ったんです」
綺麗な黒色の瞳に見つめられて、俺はどきどきした。
こんな美少女が俺のことを好きと言ってくれるのは嬉しいけれど、でも、俺には玲衣さん、そして夏帆がいる。
俺が口を開きかけると、琴音はふたたび俺の口をふさいだ。
ただし、今度は口をふさいだのは指ではなくて唇だった。
琴音を突き放すこともできる。
でも、俺は琴音を受け入れてしまった。
俺のことを好きだという琴音を、無理やり突き飛ばして、キスを拒むなんて、できなかった。
琴音はやがて身を離した。
そして、目を伏せて、小声で琴音は言う。
「返事は……いりません。だって、先輩が私より姉さんのことを好きなのは知っていますから」
「だけど……」
「でも、私は姉さんに負けたりしません。いつか先輩の一番になるんですから!」
透き通った声で、琴音は言い切った。
それは俺に対する言葉でもあり、玲衣さんに対する言葉でもあるようだった。
琴音はつかつかと玲衣さんの前へと進んだ。
「姉さん。姉さんは先輩のこと、好きですか?」
「……っ! わ、わたしも晴人くんのことが好き。ううん、大好きなの」
「そうですよね。だから、姉さんは私の敵。でも、それは昨日までとは違った意味での敵です」
「恋敵ってことよね?」
玲衣さんは小さくつぶやき、琴音は微笑んでうなずいた。
「姉さん、それに晴人先輩。覚悟しておいてくださいね?」
琴音たちが可愛い、晴人と玲衣さんと琴音の関係がどうなるか気になる!という方はぜひ↓のポイント評価をお願いします!






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