コミカライズ連載開始SS みんなで餅つき! その①
コミカライズがガンガンONLINEのアプリで連載開始です!
12月27日。冬休みのその日。
俺と玲衣さんは遠見の屋敷にいた。
まだアパートに戻る話は目処が立っていないし、しばらくは屋敷の離れにとどまることになる。
俺は玲衣さんと一緒に離れのリビングで紅茶を飲んでいた。夏帆と雨音さんは用事があるみたいで出かけているので二人きりだ。
「美味しい……」
玲衣さんがふっと息をつき、微笑む。
「口にあったようで何より。まあ、渡会さんに頼んでもらったものなんだけどね」
さすが大金持ちの遠見家。紅茶の茶葉も良いものを揃えているのだとか。
見様見真似で高級茶葉を使って紅茶を淹れてみたけれど、上手くいってよかった。
「あとで夏帆たちにも飲んでもらおうかな」
俺が何気なく言うと、玲衣さんが頬を膨らませて俺を睨んだ。
「二人きりのときに他の女の子の話をしないでほしいな」
「あ、ごめん……」
「それに、晴人くんに紅茶を淹れてもらうのもわたしだけがいい」
玲衣さんってけっこう嫉妬深いな……。その原因が俺だから、悪い気はしないけど。
「なにか失礼なこと考えたでしょう?」
玲衣さんにジト目で睨まれる。
俺は肩をすくめた。
「別に。玲衣さんが可愛いなって思っただけだよ」
「ふ、ふうん……。わたし、そんなに簡単にごまかされないんだからね?」
そう言いながらも玲衣さんは顔を赤くしている。
うん。やっぱり玲衣さんは可愛いな。
それにしても外がなにやら騒がしい。
「ちょっと様子を見てくるよ」
俺はそう言って、離れから出た。
庭に謎の人だかりができている。
その中央にいたのは……琴音だった。
玲衣さんの異母妹、遠見家の嫡子。
彼女はなぜか赤の和服姿だった。黒髪清楚な見た目の琴音にぴったり似合っている。
なにか木製の長い道具みたいなのを手に持っているけれど。
「あっ、晴人先輩!」
一瞬で琴音に見つかる。ちょっと様子を見るだけのつもりだったのに、逃げられなさそうだ……。
俺は仕方なく琴音の近くまで行く。
「何しているの?」
「お誘いしようと思っていたところだったんです。これが……遠見家恒例の行事……餅つきです!」
琴音がドヤ顔で言う。
ああ、なるほど……。
年末に旧家で餅つきをするのは伝統の一部だったりする。
そして、遠見家を代表して琴音が餅をついているのだろう。
臼と杵が目に入る。
「鏡餅を作るんだ?」
「それが本来の目的ですけど……」
琴音の言葉の続きを、隣にいるメイドの渡会さんが補足する。
「実は、つきたてのお餅が美味しいので楽しみにしているんです」
周りのみんなも、うんうんとうなずいている。使用人や遠見家の親族、そしてその子どもたちが集まっているらしい。
当主は忙しくて不在のようで、ゆるい空気が流れている。
「ということで張り切っていきますよ!」
おー、と琴音が腕を天に向かって突き上げる。つられて、みんなも腕を上げた。
琴音も最近明るくなっているなと感じる。
良い傾向だとは思うけど。
「私のお餅、先輩も食べてくださいね!」
「あ、ありがとう」
「というか一緒に餅つきしましょう! ほらほら、夫婦の共同作業みたいな。手を重ねて杵を持てばそれっぽいです」
「それは普通、ケーキの入刀なのでは?」
「夫婦だとは認めると?」
「認めていないよ!?」
そんなくだらないことを言い合いながら、そろそろ戻らないとな、と思う。
まあ、まだ時間はほとんど経っていないし、玲衣さんも気にはしていないはず……。
と思って後ろを振り返ったら、そこには玲衣さんがいた。
「は、る、とくん? 琴音と随分楽しそうにしているのね」
玲衣さんがじーっと俺を見て、そんなことを言った。
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