124話 妹プレイと姉プレイ
そして、玲衣さんはそっと俺の耳たぶを触り、つまんだり、引っ張ったりする。
「れ、玲衣さん……?」
「耳かきの前に、マッサージをして血行を良くしたほうがいいんだって」
「へえ……」
「晴人くん……じゃなかった、晴人お兄ちゃんのために調べたんだよ?」
「ありがとう。でも、妹プレイ、まだするの?」
「あっ、妹プレイって言った。晴人お兄ちゃんが満足するまではやるよ?」
「もう満足したよ。というか妹プレイ、俺がさせたわけじゃないから……。逆に、玲衣さんがしてほしいことある?」
俺が問いかけると、玲衣さんは俺の耳たぶを熱心にマッサージしながら、考え込んでいた。
やがて、玲衣さんはいたずらっぽい笑みを顔に浮かべる。
「じゃあ、今度は晴人くんに弟になってもらおうかな」
「へ?」
「わたしを『玲衣お姉ちゃん』って呼んでみて」
「れ、玲衣お姉ちゃん……?」
「ふふっ、晴人ってば甘えん坊なんだから」
玲衣お姉ちゃん、じゃなかった玲衣さんはおかしそうに笑っている。
今度は俺が弟、玲衣さんが姉ということらしい。呼び捨てで呼ばれるのは、たしかに新鮮だ。
もともと「姉みたいに晴人くんを甘やかす!」というのが今回の玲衣さんの行動の目的みたいだったし、妹の真似より、姉のフリの方が自然だ。
雨音さんみたいな格好をしてきたのも、膝枕や耳かきをするのも、それが理由みたいだし。
玲衣さんはウェットティッシュで俺の耳を丁寧に拭く。雑菌で炎症を起こさないためらしい。本格的だ……。
「晴人くん、横を向いて」
優しく玲衣さんが俺に言う。たしかに俺は仰向けで、このままでは耳かきができない。
俺は素直に従い、右を向いて左耳が上に来るようにした。
やがて、玲衣さんはステンレスの耳かき棒で俺の耳を優しく耳かきしてくれた。
ひんやりとした感触だけど、たしかに心地よい。
「耳かきが気持ちいいのは、耳の中に迷走神経っていうのがあって、そこを刺激すると快感が生まれるからなんだって」
「快感……」
「エッチな意味じゃないからね?」
玲衣さんがくすくす笑いながら言う。
耳かきそのものが気持ち良いのはもちろんだ。玲衣さんは丁寧に優しく耳かきをやってくれていて、とてもとてもリラックスできる。
けど、耳かきそのものより、自分を大切に思ってくれる人が、自分のために時間を使ってくれることが、嬉しいのだとも思う。
「晴人くん、じゃなかった、晴人、とっても気持ちよさそうだね」
「玲衣お姉ちゃんのおかげでね」
からかうように俺が言うと、玲衣さんが照れたように目を伏せてしまう。恥ずかしいながら言わせなければ良いのに。
「いくらでもわたしに甘えていいんだよ?」
「じゃあ、お言葉に甘えて……」
俺は玲衣さんに身を任せる。時間がゆっくりと流れている。
婚約のことも、自分の無力さも、全部忘れて、俺の時間が玲衣さんの時間で埋められていく。
耳かきの音が心地よい。俺も玲衣さんも黙ったまま、でも幸せな雰囲気でその時間を過ごす。
やがて一通り耳かきが終わったようで、玲衣さんが手を止める。
「今度は反対側をやってあげる」
「は、反対側?」
「えっと……ダメ?」
「いや、俺はもちろん、嬉しいんだけど……」
「なら、今度はこっちを向いて」
玲衣さんは何気なく言うが、俺は一瞬ためらった。
でも、まあ、いいのか……。
俺は玲衣さんの膝の上で頭の向きを変える。
さっきまでは右向きだったから、俺の視線は部屋の方へ向けられ、後頭部が玲衣さんの身体の側になった。
ところが、左向きに頭の向きを変えると、当然、俺の顔は玲衣さんの身体の側に行く。
つまり、俺は玲衣さんの下腹部のあたりを凝視する形になるのだ……。しかも、へそ出しルックなので、直に肌も見える。
俺も自分の体温が上がるのを感じたけど、玲衣さんもこの体勢の問題に気づいたらしい。急に「えっ、えっ」と慌て出す。
「ど、どうしよう……これ、思ったより恥ずかしいかも……」
玲衣さんのうろたえる姿も……可愛かった。
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