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117話 女神様の妹・ふたたび(1)

 結局、俺たちは週末の土曜日を遠見家の屋敷で迎えた。

 屋敷の離れには、俺、玲衣さん、夏帆、雨音さんの四人で、共同生活を送っている。


 以前は玲衣さんと夏帆が俺に迫って、雨音さんがそれを止めてくれる立場だったのが、今や雨音さんも俺をめぐる争奪戦に加わる側になってしまった。


 おかげで気が休まる暇がない。もちろん、雨音さんはこれまでどおりの大人の余裕(?)で玲衣さんや夏帆を止めてくれるのだけれど、その後に「私なら、晴人くんに無理をさせずに、大事にしてあげられるのにね」なんて、俺にだけ聞こえる声で甘くささやくから、心臓にとても悪い……。



 可愛い美少女や美人のお姉さんと同居して、しかも彼女たちは俺を好きと言ってくれる。嬉しくないといえば嘘になる。


 でも、この状況は本来ならおかしい。早く解消しないと……。

 その最初の一歩が、琴音との婚約解消だった。


 琴音は、屋敷の本邸に部屋がある。

 俺はその部屋を訪れることにしていた。


 本当は離れにきてもらうか、あるいは広間とかのオープンなスペースで話したかったのだけれど……。

 琴音の要望で、二人きりで琴音の部屋で話し合うことになってしまった。


 琴音には事前に携帯で連絡をした。「大事な話がある」とだけ伝えてある。婚約破棄だなんて、言いづらかったし、そういうことは直接面と向かって話したい。


 豪華な屋敷の廊下に、俺はビビりながら琴音の部屋の前に立ち止まる。

 

 そして、ノックする。


「どうぞ」


 涼しげな声が扉の向こうから聞こえてきた。

 俺は扉を開ける。


 琴音の部屋は広々としていた。九畳ぐらいあると思う。

 ぬいぐるみとか、少女趣味のグッズがたくさん置かれていて、ちょっと意外だった。


 琴音は大人びたイメージがあるけれど、よく考えたら年下だ。


 家具は豪華で、正面奥にあるベッドも天蓋付きだ。

 その上に黒髪ロングの美少女が座っていた。

 

「先輩♪ 来てくれて嬉しいです!」


 琴音が弾けるような明るい笑みを浮かべる。

 ベッドの上の琴音は、白いワンピース姿の部屋着で、清楚な「お嬢様」という印象だった。実際、琴音は間違いなくお嬢様だ。


 遠見家という大金持ちの家に生まれているし、立ち居振る舞いだって上品だった。玲衣さんは私生児として冷遇されていたけど、琴音は違う。

 遠見本家の嫡流なのだ。


 琴音は裸足で、脚をぶらぶらとさせている。

 ワンピースの裾の丈が短くて、白くきれいな脚が太ももまで見えていた。


 俺は慌てて視線をそらすと、琴音がくすっと笑った。

 

「今、私に見とれていましたよね?」


「ち、違うよ……」


「先輩の嘘つき。でも、いいんです。先輩は私に異性として興味があるんですよね」


「俺にとって、琴音は大事な人――玲衣さんの妹だよ。それだけだ」


「嘘が二度目ですね。お仕置きをしますから、ここに座ってください」


 そう言うと、琴音はぽんぽんとベッドの上を叩いて示す。ちょうど琴音のすぐ右隣のあたりだ。


 女の子と二人きりというのでも緊張するのに、同じベッドの上に座るのは……まずい気がする。

 けれど、琴音は気にしていなさそうだった。


「二人で監禁されていた時だって、同じ部屋で一夜を明かしたじゃないですか」


「ご、誤解を招くような言い方はやめてほしいな……」


「実際、いろいろしたじゃないですか。あんなこともこんなことも……。それに、誤解されたって、私はいいんですけど。それに、ここには私と晴人先輩の二人しかいません。だから、誰にも誤解される心配なんて無いんですよ」


 ふふっと琴音が妖艶に微笑む。まだ15歳の少女はおしとやかで、それでいて蠱惑的だった。


「先輩は大事な話があるんでしょう?」


「まあね」


「それなら譲るべき点では譲っておいた方が、後々楽ですよ」

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