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97話 はとこも結婚できるんだけどね?

 雨音姉さんは15歳のときに、両親を火事で失った。俺の母もそのときに亡くなっている。

 それ以来、俺と父さん、そして雨音姉さんは家族として一緒の家で暮らしてきた。


 雨音姉さんは最初こそ、俺や父さんに遠慮していたけれど、しだいに本当の弟のように俺を可愛がってくれるようになった。


 家族を失った心の傷を埋めるために、雨音姉さんは俺を必要としてたのかもしれない。

 一緒に釣りに行ったり、カラオケに行ったり、映画を見たり、図書館へ行ったり。


 俺が推理小説を読むようになったのも雨音姉さんの影響だ。

 俺にとっては、雨音姉さんとの時間はかけがえのないものだった。


 ただ、だからといって、雨音姉さんと結婚するなんて、思いもしなかった。


 ウェディングドレス姿の雨音姉さんを俺は想像してみる。雨音姉さんは純白のドレスで着飾り、とても美しかった。普段はラフな格好をしているので、ギャップがある。


 そんな雨音姉さんが大人な表情で、俺の隣で微笑みかけて……。

 恥ずかしくなって、俺は自分の頬が熱くなるのを感じた。


 玲衣さんはむうっと頬を膨らませる。


「雨音さんと結婚しているところを想像していたでしょう?」


「そ、それは……えっと、していました……」


「やっぱり。それに、雨音さんに抱きつかれたときも晴人くんってば、デレデレしていたでしょう?」


「デレデレなんてしていないよ」


「嘘つき。雨音さんとわたしの胸の大きさを比べて、わたしのより大きいって比べたりしていたでしょ?」


「そ、そんなことしていないよ」


「本当に?」


 どきりとする。実際、雨音姉さんに胸を押し付けられたときは、玲衣さんよりずっと大きいなんて考えてしまった。

 なにか言い訳を言わないと俺はテンパってしまう。


「そ、それに、玲衣さんも十分に大きいし……」


「へ!?」


 俺は失言に気づいた。玲衣さんから振られた話題とは言え、胸が大きいなんて言っても、何のフォローにもなっていない。


 玲衣さんが嫌な思いをしただろうか……と思って、反応を見ると、玲衣さんは顔を真っ赤にしていた。


「ごめん。嫌だった?」


「ううん。晴人くんに女の子として見られている気がして、嬉しいな。でも、やっぱり、晴人くんって胸の大きい女性の方が好きなんだ……」


「そ、それは……えっと、違うというか……」


「雨音さんが羨ましいな。わたしよりもずっと大人で綺麗な人で胸も大きくて……。それに、晴人くんと昔から一緒にいて、強い絆で結ばれているから。きっとわたしなんかより、雨音さんの方が、晴人くんにとって大事だよね」


 雨音姉さんと俺は、従姉弟として幼い頃から互いを知っていて、五年前からは同居する家族でもあった。


 一方、玲衣さんと一緒に住むようになってから、まだ二週間も経っていない。


 でも、だからといって、玲衣さんが大事じゃないわけじゃない。

 玲衣さんは俺にまっすぐな好意を向けてくれていて、結婚指輪まで渡してくれた。


 雨音姉さん自身も、俺に「私よりも水琴さんのほうが大事なんでしょう。」なんて言っていた。

 

 二人のどちらの方が大事かなんて言えるわけないけれど……少なくとも、俺も玲衣さんに言えることはある。


「俺にとって、玲衣さんは大事な存在だよ」


「嘘」


 玲衣さんが不安そうに、でも、期待するような表情で言う。俺は微笑んだ。


「雨音姉さんはさ、家族として大事だけれど……でも、恋人になったりはしないから」


 俺は雨音姉さんを、姉としてしか見れない。いや、もちろん、ハグされたりスキンシップされたら、意識してしまうけれど、それは生理的なものだ。雨音姉さんと彼氏彼女になるところなんて想像もつかない。


 玲衣さんは、雨音姉さんが俺を男として好きだと言うけれど、信じられない。きっと雨音姉さんも、俺を可愛い弟としか思っていないはずだ。


 一方で、玲衣さんは違う。玲衣さんは俺を好きだと言ってくれて、一時は恋人のフリをしていた。

 アパートで同居していたときだって、互いを異性だと強く意識していた。


 そういう意味では、俺にとって、二人はまったく違った意味を持つ。

 玲衣さんは俺の言葉をしばらく吟味していたようで、そして、納得したようにうなずいた。


「そっか。わたしは、晴人くんの恋人になれる……なる可能性はあるものね。晴人くんは雨音さんを女性として見たりしない?」


「しないよ」


「良かった。……桜井さんと、わたしも同じ」


 どういう意味だろう? 玲衣さんとユキが同じ?

 俺が怪訝な顔をしたので、玲衣さんはくすっと笑った。


「桜井さんがわたしにヤキモチを焼いたように、今度はわたしが雨音さんにヤキモチを焼いちゃったってこと」


「ああ、なるほど……」


「そうそう、晴人くん。一つ言い忘れていたけど……」


 玲衣さんが急に俺に近づき、俺の腕をつかんで軽く引っ張る。

 そして、俺の耳元にその唇を近づけた。

 

 玲衣さんの吐息がくすぐったくて、俺は自分の体温が上がるのを感じた。


「結婚できるのは、従姉だけじゃなくて、はとこもだから。ね?」


 そう言って、俺のはとこの玲衣さんはいたずらっぽい笑みを浮かべた。



2巻予約受付中ですっ!


また、カクヨムに新作ラブコメも投稿しているので、ご興味ある方はよろしくお願いしますっ! 雨音姉さんみたいなお姉さん感のある(しかしポンコツな)幼馴染がメインヒロインです!


タイトル:清楚完璧な美人のエリート警察官僚上司が、家では俺を大好きな甘デレ幼馴染だった ~美人幼馴染(26)と同居したら愛が激重。恋人でないのに二人でお風呂!?~


次回は、雨音姉さんのターン! 続きが気になると思っていただけましたら


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