表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界平和に不都合なぼくたち  作者: さんかく
第三話 独裁者さん、お断り
83/153

第82回 世界平和と読まれないメッセージ

>Mayumi Wakamatsu


 佐倉くん

 20:43


 はい

 20:44 既読


 先生?

 23:38 未読



>ほのか(怖い)


 まゆちゃんから連絡あった?

 0:03 既読


 ない

 どうしたの?

 0:03


 メッセージが来てたんだけど、それっきり返信なし

 0:03 既読


 いつ?

 0:03


 20時40分過ぎ

 0:04 既読


 へんなの。

 0:07


 なんだろーな

 0:08 既読


>ほのか(怖い)から着信


「もしもし」


「うん」


「あたしもまゆちゃんにメッセージ送ったけど、既読になんないね」


「酔ってるとか」ヴー


「まさか」ヴー


「寝ている……ないな、ソッコーで返したしな」


「なんかさ」


「うん」ヴ、ヴ、ヴー


「やだよね、なんか」ヴー、ヴー


「やだ?」


「藤村もそう。なんか突然いなくなる」


「よせよ」ヴー、ヴー


「ごめん。でもそう思ったでしょう? 不安だからあたしに連絡してきた。戦争前だったら、流れていく日常の一コマだ」ヴ、ヴ、ヴ、ヴ、ヴヴヴ


「あしたまで連絡を待とう」ヴー


「うん、あした……遅刻すんなよ」


「大丈夫。エリカがワクワク過ぎて朝から騒ぐから」


「子供じゃん」ヴー


「さっきまで騒いでいたしな」ヴー


「海、楽しみだよね」


「ああ」ヴー


「楽しもう」


「どうした」


「ううん……おやすみ」


「うん」


 通話終了


>えりか魔王


 どーしよう!

 ねむれない!

 ねえ!

 これじゃ、あした、寝不足です!

 ねえ!

 ねってば!

 無視すんなー!

 寝ているの?

 ねえ、ねーってば!

 ユウタ

 ゆーちゃん

 ゆう的

 勇者さまー?

 ユウタ

 ユウタ

 ユウタ

 ユウタ

 ユウタ

 ユ

 ウ

 タ

 もういいもん!

 (あかんべーのスタンプ)


>ほのか(怖い)


 言い忘れたけどさ

 あんたは、いなくなんないでよ。

 1:34


……ほのか(怖い)がメッセージを取り消しました


 なんだそりゃ

 7:14 既読


※ ※ ※


「いなくならずに、佐倉ユウタ、参上」


「うざ」


 ほのかのつま先がぼくの太ももをかすめる。地味に痛いやつだ。


 ぴーかん照りとはこのことだ。


 夏の低い位置で積み上がる雲の塔は遠く、抜き身のように鋭く照りつける太陽が、アスファルトの照り返しも含めて、体を焼き付ける。


 海日和。


 まさにね。


 時計を見る。8時の集合にはほのかを始め、クラスの有志4人が集まっていた。


 そこに、メイ。

 不思議な組合せだけれど、コミュニケーションパラメータに数値振りまくりのメイは、ひと通り挨拶を済ませたようで、リアルメイドという生ける伝説的職業で話題の中心になっていた。さすが。


 ぼくとエリカは遅刻だ。


 朝6時からワーワー騒いでいた魔王様だけれど、出がけにグズグズしていて(女の子は色々あるの! らしい)、結局、それなりの距離を走ることになった。汗だくだく。とちゅう、朝はやくおきたからか、エリカはずーっと「ねむい、ねむい」としきりに目をこすりながら、ふらふらしていた。だいじょうぶかな。


 と、突然、「わっ」と声を上げて体勢がかたむく。足元をみると、またネズミの死体が転がっていた。


「うげえ! 踏んじゃった!」


「だいじょうぶか?」


「サイアク。でも、うん、大丈夫……」


 そういって突き出したピースマークの指先はくてんっと曲がっていた。電車のなかで寝ていてください。


「全員集合?」


「うん」


「電車は何時だっけ?」


「8時20分の急行」


 後13分ある。


「ちょっと水買ってきていい?」


 エリカはテンション高めだけれど、酷暑に猛ダッシュだ、水を飲まないとぶっ倒れる。


「あたしの水筒に麦茶入ってるよ」


「ぼくとエリカでがぶ飲みしちゃうこと請け合い」


「あんたじゃ、ヤだなあ」


「ひでえ」


「自販機ないけど、そこの先にコンビニあるよ」


 クラスメイトが、駅右手の角を指した。


「エリカ、麦茶でいい?」


「あたしも行こうか」


「いいよ、日陰にいな」


「じゃあ、アイスコーヒー、とってもあまいやつをたのむよ。なんだかとってもねむい」


「はいよ」


 エリカは、目をこすりながらも、夏の太陽に負けないぐらいにニカーっと笑った。


 駅の周辺は、人出も増えていた。


 普通の店も開いているけれど、荷台を担いだ行商のような店も多い。ビニールシートに商品を忙しそうに並べている。


 角を曲がる。


 コンビニの看板は、すぐそこだ。


 でも、それと一緒に、


 真っ赤な魔法陣の絵。


 悪魔がぽっかり口を開けたような、絵。


「あら? あらあらあら? これはこれは! 佐倉ユウタさんではないですか!」


 大志摩タエさんが艶然として笑顔を浮かべ、そこにいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ