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世界平和に不都合なぼくたち  作者: さんかく
第一話 魔王さん、お断り
8/153

第8回 世界平和とそれを脅かした張本人の登場

 魔王の転生。

 これほど迷惑な転生もない。


 この魔王は他の世界で勇者に討伐されたあと、地球に転生してきた。

 科学力を持った現代でも、彼の強大な魔力の前には無力だった。笑っちゃうくらい無力だった。

 おまけに転生特典で超パワーも手に入れてきたというから、ほんとうふざけている。


「わたしは魔王である」


 真夏の炎天の下、白髪、長身の男は言った。

 真っ白なシャツ、丈の合っていないジーンズを履いた優男はテレビカメラの前で穏やかに宣言した。


 夏祭りを取材していたテレビ局のレポーターは生放送に割り込んできた男の言葉をまっとうには扱わなかった。当たり前だ。夏の太陽であたまがハッピーになっちゃったお兄さんにしか見えない。


 でも、男がゆっくりと腕を上下させると、周りのひとが頭を抱え、嘔吐し始めた。もちろんテレビ局クルーもだ。カメラの映像は乱れ、かろうじて映った画角の端で、男は薄いアルミニウム程度に口元を歪めて笑った。


「とっても悪い、魔王様だぞ」


 その時の犠牲者は死者20人。

 それが最初の事件だった。


 それからの話はとても長くなるし、他にたくさん本が出ているから割愛する。

 でも端的にいうと、魔法という強大な力に対抗する術はなかった。まるっきり歯が立たなかった。刃物も、弾丸もミサイルも効かない。とある国が核兵器を使ったのだけれど、さっぱり意味がなかった。強大なバリアみたいなものがあったんだろう。もちろん、核兵器の着弾があった地域は死の原になって、ただただ地球側に大ダメージを残しただけだった。


 そんな魔王は異世界からモンスターを召喚するという超強力なパワーを持っていた。

 自分から言っていたから本当なんだろう。

 魔王は最初にテレビを使って登場したことで、世界が驚嘆したことに狙いをつけた。

 もともと頭のいいやつだったようで、テレビやマスコミを使った恐怖のプロパガンダを多用していた。

 その一環のインタビューで魔王は答えた。


「この世界に転生する時だ、女神が現れたのさ。胸糞悪いことに、前の世界で祀られていた女神だが、そいつが言ったんだ。『あなたは長い時間をかけて再生するでしょう。そうすれば再び混沌に陥る。でも、もしあなたの魂ごとどこか別の世界に転生するのであれば、肉体の再生と新たな力を授けましょう』とな」


 その能力が召喚の力だった。


「その転生先がこの世界だったのさ」


 そこで魔王はインタビュアーににやりと笑って見せた。


「不運だったな」


 女神さま、なんてことしてくれたんだ。


 その女神がこの世界では「悪魔の聖母」として、忌み嫌われているのは当たり前の結果だろう。

 魔法だけでもとんでもないのに、モンスターたちの暴れようはとかくひどかった。おまけに魔王が倒されても、世界にはたくさんのモンスターが巣食っている。いくつかの種族はうまく適合して繁殖もしているようで、かえではその後始末にいま世界中を飛び回っている最中だ。


 さて、メッセージは届いているだろうけれど、こっちに帰ってくるのはいつになるのだろう。

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