第65回 世界平和と関南コンフィデンシャル
電話がなった。
「ユウタくん、緊急よ」
「はい」
時間は、20時56分。
※ ※ ※
モンスター襲来。対象:鳥獣型、数:20、エリア:広範囲に分割。
復興対策本部の指令=「1班は東3体、2班は南部5体、3と4班は北西7体、5班は北北東3体。佐倉ユウタは単独行する南東部モンスター1体を撃破後、2班を援護」
「了解」
「佐倉ユウタさん」
「はい」
「武運を」
走行音/銃声/爆発音。
「だから、いっただろう? 鳥獣型には拳銃は無理だ」
にやけた声。下卑た笑い声。
作戦進行度:40パーセント。
”6班”からの連絡=なし。
「1班、現場到着」
「2班、まもなく」
「3班、4班、現在モンスターと交戦中」
「5班、現場到着、モンスターの姿、未確認」
「佐倉ユウタ、現場に到着」
ぼくは指定の場所に立つ。狭められた道路/広くない場所/破壊された工場地帯=的確な罠を仕掛けるためには最適な場所。鳥かご。どんな声で、鳥はなく?
時間:22時48分。作戦開始から48分。入電から2時間弱。
頃合いだ。
無線=「佐倉ユウタ、モンスター1体を撃破。繰り返す、モンスター1体を撃破」
本部からの入電=「佐倉ユウタ班、撃破確認。回収は後回し。南部へ向かって頂戴」
回答=「了解」
車に乗り込む。移動をする、わずかな距離を。
無線。鋭い電子音。ぴ、ぴ、ぴぴ、ぴー。”6班”からの連絡。鳥が動いた。
作戦進行度:80パーセント。
罠にかかるか? こころの声。
「かかるよ」
ぼくはひとりごちる。うまい餌の味は忘れられない。
車から降りる。徒歩で移動する。
ルート上の”6班”メンバーからの電子音。予定通り。
こんなときどうするかって? 待つんだよ、期待して。
となりの男がするどく息を吐く。「落ち着いて。いまのところ、うまくいっている」
「落ち着けって?」
高揚で言葉が乱雑になる。「無理だっつーの」
電子音。ぴ、ぴ、ぴー。3。
電子音。ぴ、ぴー。2。
電子音。ぴー。1…………鳥=ヘッドライトが一本道に入る。鈍いエンジン音が聞こえる。すばやく復興対策本部が後方を固める。逃げ場は、ない。
「ゴー!」
ナナミさんが叫ぶ。
1〜5班の車のライトが一斉に灯火する。
大型のバンの姿が現れる。
急ブレーキの音。一瞬の間が空いて、バンはバックで走り出す/仕掛けられた網に絡みとられるタイヤ/鳥はがんじがらめになる。
「確保!」
復興対策本部のメンバーがそのバンを取り囲む。
「抵抗はよせ! さっさと車から出るんだ!」
「ま、待ってくれ! 何かの誤解だ!」
ふたりの男が車中から転がり出てくる。すばやく隊員がふたりを確保する。開いたドアから中に入り、電波ジャックの装置をひっぱり出す。
ナナミさんはにやりとわらった。
「無線傍受を確認。よかったわ。これでこころ置きなく、あなたがたを逮捕できる」
車のヘッドライトに照らされたそのふたりの顔を見て、告げる。
「古川正一、今井照政。復興特別対策法63条2項、作戦執行妨害にて逮捕します。そしてあなたがたにはモンスターの違法取得嫌疑、および違法売買嫌疑もかけられています。くわしく本部で聞きましょう」
ふたりの顔にシャッターがまたたく。
あけみさんと、同僚の記者の顔は赤くほてり、高揚がみられた。
真実の独占スクープだ。
タイトル引用:L.A.コンフィデンシャル(文春文庫)ジェイムズ・エルロイ




