おたまちゃんのゆめ
はじめて児童向けにかきました。
よろしくお願いします。
ふかい、ふかい森のなか。
そこにはちいさな池がありました。
その池に住む、黒くて小さなおたまちゃんは、池からでることができません。
しかし、森に住むともだちがやってきては、池の外のことを教えてくれるのでした。
「おたまちゃんおたまちゃん、こんにちは」
「わぁ、ウサギさんこんにちは!」
おたまちゃんのところにやってきたのは、ふわふわした白いウサギさんでした。
「ねぇねぇ、おたまちゃん。おたまちゃんは、お花って知ってる?」
「お花? お花ってなぁに?」
池の外を知らないおたまちゃんは、お花を見たことがありません。
「お花っていうのはね、森にたっくさん生えているんだ。いろんな色があって、とってもいい香りがするんだよ」
「お花かぁ。見てみたいなぁ」
ウサギさんのはなしをきいて、おたまちゃんは花がどんなものか、おもいうかべます。
(きっと、池の中にはない、いい香りがするんだろうなぁ!)
おたまちゃんは、おもいます。
(いつか、ボクは池をでて、お花を見にいこう!)
ウサギさんがいなくなった後、次におたまちゃんのところへやって来たのはリスさんでした。
「おたまちゃーん、こーんにちはー」
「あっ、リスさん!」
「そうだ、おたまちゃん、川って知ってる?」
「川? 川ってなあに?」
池の外をを知らないおたまちゃんは、川というものをきいたことがありません。
「川っていうのはね、おたまちゃんのいる池みたいに水があるところだけど、その水がずーっとどこかにながれているんだよ」
「へぇ、それはふしぎだなぁ」
そして、リスさんのはなしをきいて、おたまちゃんは川をおもいうかべます。
(きっと、池よりも大きくて、たくさんのさかなさんがいるだろうなぁ!)
おたまちゃんは、おもいます。
(いつか、ボクは池をでて、お花を見てから川を見にいこう!)
リスさんがかえった後、おたまちゃんの住む、池のうえのお空をトリさんがとおりました。
「トリさん、トリさんこんにちは!」
「おや、おたまちゃんか。こんにちは」
トリさんは池のちかくにきて、池の中をのぞきこみました。
「ねぇねぇ、トリさん。何か池の外のおはなしをおしえて!」
「ふむ、外のおはなしか……。そうだ、海を知っているかい?」
「海? 海ってなあに?」
森のなかの池にいるおたまちゃんには、海なんて見たことも聞いたことも、ありません。
「海っていうのはね、おたまちゃんのいる池みたいに、たくさん水があるんだけれど、とってもひろくて、キレイなんだよ」
「へぇぇ、そうなんだ。一度でいいから、見てみたいなぁ!」
トリさんのはなしをきいて、おたまちゃんは海をおもいうかべます。
(きっと、池よりも川よりも大きくてひろくって、とってもキレイなんだろうなぁ!)
おたまちゃんは、おもいます。
(いつか、ボクは池をでて、それからお花を見て、川を見て、それから海を見にいこう!)
(ボクはこの池いつかをでて、そとのせかいを見るんだ!!)
おたまちゃんにゆめができたのです。
そのあと、トリさんがいなくなって夜が来ました。
くらい、くらいしずかな夜です。
おたまちゃんも、池のなかでねむっていました。
しかし、どこからか、ほっほーう、ほっほーうという声がして、おたまちゃんはめざめます。
池のそとを見ると、そこにはフクロウさんがいたのでした。
「こんばんは、フクロウさん」
「やあ、こんばんは、おたまちゃん。森の夜はしずかだね」
おたまちゃんはフクロウさんにいいます。
「ねぇ、フクロウさん、フクロウさん。ボクは、池をでたいんだ。いつか、池のそとのせかいを見るんだ!」
「そうかい、そうかい。でもね、おたまちゃんは、小さいから池からでられないよ」
フクロウさんはかなしげにそう言います。
フクロウさんはいろいろなことを知っている、ということでゆうめいです。
でも、おたまちゃんはあきらめません。
「でも、ボクがもっと、もーっと大きくなったら、きっと出られるでしょう?」
「そうだねぇ。……ああ、もしかしたら、おたまちゃんが大きくなったら、池からでられるかもしれないよ」
フクロウさんは、ゆっくりとおたまちゃんにそういいました。
「ほんとに!? じゃあボク、がんばって大きくなって、いつか海を見にいくよ!」
「そうかい、そうかい。がんばるんだよ」
そうして、おたまちゃんとフクロウさんがはなしをしてから何日かたったある日。
おたまちゃんに、二本の足がはえてきたのです。
おたまちゃんにはなしにきた、ウサギさんやリスさんはおどろきます。
「わぁ! おたまちゃん、おたまちゃんに足がはえてるよ!」
「ほんとうだ! どうしたのおたまちゃん!」
「えへへ、ウサギさん、リスさん、きっとボクはこの足で、池の外をあるくんだ!」
「そうなんだ!」
「それはたのしみだね!」
おたまちゃんはうれしそうに、はえてきた二本の足を見つめました。
そして、また何日かたったある日。
おたまちゃんのからだに、もう二本、足がはえてきたのです。
「おたまちゃん、こんにちは」
「あ、フクロウさん! 見て見て、足が四本もはえてきたよ!」
やってきたのは、フクロウさん。
そして、おたまちゃんの足を見たフクロウさんはいいました。
「おたまちゃん、おたまちゃんはね、オタマジャクシなんだよ。オタマジャクシはね、大きくなったらカエルさんになるんだ」
「カエルさんに?」
おたまちゃんはおどろきます。
そう、おたまちゃんは、大きくなって、みどりいろのカエルさんになっていたのです。
「さあ、おたまちゃん。いまなら池からでられるはずだよ」
「うん!」
フクロウさんにいわれて、おたまちゃんは池のはしにむかって、そしてじめんに足をつけます。
おたまちゃんは、足をつかって水のなかからとびだしました。
ついに、おたまちゃんは池からでたのです!
「フクロウさん、でたよ! 池からでれた!」
じめんに立ったおたまちゃんはえがおでフクロウさんにいいます。
「よかったね、おたまちゃん。さあ、そとのせかいをみるんだろう?」
「うん。でもそのまえにウサギさんや、リスさんやトリさんに会いにいかないと!」
「そうかいそうかい」
フクロウさんといっしょに、じめんをあるいておたまちゃんはたのしげです。
こうして、おたまちゃんは池のそとにでるゆめをかなえたのでした。
おしまい。