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人間はひどく強欲な生き物であると、常々思う。
例えば皿に残った最後の一つのパイを一瞬んで自分の口に運ぶ行為であったり、
自分より明らかに劣る相手を罵り淘汰し足蹴にする行為や、
貸した分に理不尽な程の高額な利子を付けた金を請求する行為もまたしかり。
それらは全て、本能が求める欲に突き動かされ行った愚行である。
けれど人は、その行為がさも当たり前かのように振舞って生きている。
おそらく人間は、自分が欲深いのだと特に意識したことはないのだろう。人間とはみなそういったものだから、仲間意識というのか、みな平等に欲に忠実であるがために、違和感は感じない。
そしてかく言う俺も、その欲深い人間の一人である。
シグリア王国第2王子、カイン・ウォーカー。
金髪碧眼、見ている者を一瞬で惹き付ける鳥肌が立ってしまいそうな程美しい容姿に長い脚、引き締まった肉体。
非常に勉強熱心であり、教育係の者も彼が15のときに「教える事はもう何もない」と城を出た。つまりはかなりの博識で、王子でありながら国一番の物知りであるとも噂されている。
戦の際は国の兵士と共に前線に立ち、自ら先頭をきって駆け抜ける様は異様な迫力がある。剣の腕もたしかなもの。
誰が見たって文句のつけようのない男。
そんなシグリア王国第2王子には、ある秘密があった。
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シグリア城・パーティ会場にて。
「カイン王子、この度は19歳のお誕生日、誠におめでとうございます」
「テイラー将軍、どうもありがとう。お前にはいつもよく世話になっている。これからもよろしく頼むぞ」
「もちろんです王子」
様々な装飾物にその身を飾った大勢の貴族達が各々、ワインを嗜み盛り上がる中、一際人が密集し集まっているその中心にカイン・ウォーカーはいた。