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席替えが原因なんだよなぁ
宇津井くんは宇津井くんじゃない
宇津井くんはいつも屋上にいた
授業中もお昼休みも放課後も
ずっと屋上にいた
彼は屋上にいる間絶えず空を見上げ
両手のひとさし指と中指をクロスさせた状態で
呪文のような何かを唱えていた。
私はそんな宇津井くんのことが
ここ一ヶ月異常なまでに気になって仕方がないのだ。
私がそうなってしまった原因は席替えにある。
席替えをしたときに私は窓側の一番後ろの席になった。その席は彼のことを観察するには絶好の場所となっていたのだ。
いつの間にか彼を観察するのが私の日課となっていた。
別に好きなわけではない、でもとてつもなく興味を引かれてしまうのだ。
まるまる一ヶ月彼を観察し続けた。
気づくと私は
宇津井くんが 30cm動いただけで
底知れぬ興奮と満足感を得てしまうほどに宇津井くん中毒になっていた。
もう遠くから彼を見ているだけじゃ我慢できなくなってしまっている。
脳みそが宇津井くんを欲しておかしくなりそうなのだ。
「私行ってきます!!」
四時限目の授業を抜け出し私は屋上へかけた。