死神
ずっと先まで続く線路
何も考えず
ただ
そこに佇む
○死神○
遠くには、何もない。
ただ、線路が続くだけ。
「この先はどうなってるかなって考えたら、ドキドキしない?」
僕の横で、君が言った。
横を見ると、君は真っ直ぐ前を見ていた。
僕よりも前向きな瞳で、未来を見ていた。
「知ってる? 此処ってつい最近までは使われてたんだって」
「へぇ」
「でもあまりにも人身事故が多いから、廃線になったんだってさ」
人身事故。
人は何を思って、列車の前に自身の躯を差し出すのか。
列車が死神に見えなかったのだろうか。
それとも、それが例え死神だろうとこの世界がつまらなく感じたのだろうか。
ボ ク ガ キ ミ ヲ コ ロ シ テ ア ゲ ル ヨ
そう言われて無意識の内に拒絶し、
君を突き飛ばしていたのは、
何時の話だっただろう。
でも、
君がそう願ったから僕は君を死神に捧げたんだ。
僕に感謝してほしい。
「どうしたの? さっきから黙り込んじゃって」
「へ? いや、別に?」
「そう? ならいいけどさ」
ニヘラっと笑った君は、あの日捧げた人とは違う。
でも何故こんなにも似ているんだ。
何故君はあの人と、うり二つなんだ。
「さぁ行こうか」
そう言って歩き出し、君は唐突に止まった。
僕だけを残し、君は線路脇に降りる。
「? 何?」
「そこにいて」
暫くして、地響きが起こる。
僕の躯はあっという間に引き裂かれた。
僕の死体を目の前に、君は笑った。
「僕を突き飛ばしたりするからさ。さぁ、地獄に堕ちよう。君は僕とずっと一緒だ」
後に残ったのは、
列車に踏みつぶされた血だまりのみ。
死体と少年の姿は何処にもなく、
少年達が着ていた服がそこに置かれていた。
−end−
死神がいたら、っていう話です。
もし自分が人を殺めてしまった時、
その被害者が死神になって復活したら、
とても怖いですよね。
何故か、そんなお話がフッと浮かんで書いてみた作品です。
気に入って貰えたら、
とても嬉しいです。