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生徒会しーずんすEX!  おーしゃんず、ばか。

作者: 雨木あめ

細かいこと無しで、ただただ妙にクスリと笑える。がコンセプト。

そんな掛け合いがメインのお話です。


この短編は連作短編の番外編です。が、そんなことはまったく関係ないただのお祭り騒ぎハイテンションコメディーとなっております。

設定とか細かいこたあ知らなくてもいいんだよ! 少しでも笑ってもらえれば大満足! そんな感じです!

 「「うーみだー!」」

 「、、、、だー」

 「随分とベタだなおい。あと朱音、語尾だけあわせてそれっぽく乗っかるな」


 人のいない春の砂浜。

 僕たちは駐輪場に自転車を放り捨て、そんなベタな掛け声とツッコミを伴ってそこを歩いていた。

 僕の背中には、バーベキューセット。

 そして他のメンツは、クーラーボックスとその他諸々。

 

 ……お解かりいただけただろうか。

 そう。

 もう見間違えも出来ないくらい、間違いなく。

 今日は──浜辺でバーベキューなのである。

 

     ◆


 という訳で海である。

 かといって決して夏ではない、とある春の日のこと。


 なにがどういう訳か解からないかもしれないが、海なものは海なのだ。

 あえて説明的に言うならば、5月、生徒会役員5人中4人(会長である僕、理由悠、三年副会長の匠、二年副会長の友香、会計の朱音)で学校での仕事帰りに近場の海に来た。

 そんな時の、お話。

 馬鹿馬鹿しすぎてちょっと真面目には語れない、そんなコメディー10割な日々の特別なヒトカケラ。

 

 まあ。

 傍からみたらどんなに面白くても、恥ずかしくても。

 これも──僕達の日常なのだ。



     ◆



 「材料が足りねえ」

 パチパチと鳴る赤くなった炭を煽ぎつつ、匠が呟く。

 「ん? そうでもないんじゃないか?」

 僕はクーラーボックスの中に満載されている、肉や海鮮類、野菜やらを取りだしながら問いかける。

 「バカヤロウ、お前はそれでも食べ盛りの思春期か」

 「言わんとしてることは解かったが、それ成長期な」

 お前そのニュアンスだとちょっと色々なところからツッコミ食らうぞ。

 今女性陣はパラソルやらシートやらを設置して、こちらの準備が完了するまで待機しているからいいものの。なにやら談笑しているようだから、こちらの会話は聞こえてないみたいだしな。

 「思春期の高校生男子が二人揃って、この程度の食料で足りると思ってるのか」

 ずびしっ! とトングで僕を指してふんぞり返り、目を見開いて威圧してくる。が、残念ながら迫力もなにもないので、冷静にツッコミをいれてみる。

 「あ、訂正する気はないのな」

 最初からわざとだったか、それとも間違ったことが恥ずかしいのか・・・。

 正直どっちでもいいが。

 「ともかくだ!」

 匠は仕切りなおすように大声を張り上げる。

 「こんなんじゃ足りないぜ! 賭けてもいい!」

 「ふむ……いや、僕たちはそりゃあ食べ盛りだから食うけどさ、女性陣はそうでもないだろ? だったらこのくらいでも……」

 僕の眼にはベストな量にうつっている食材たち。

 「悠……お前ここがどこだか解かってるか?」

 「うん? いや普通に海──」

 「そうっ! 海だ!」

 「それがどうした」

 「海にきてはしゃがないやつはいねえ。そしてはしゃいで腹がへらねえやつもいねえ」

 「……それで?」

 「はしゃいではしゃいで食ってはしゃいでやってたら、こんな量で足りるわけねえだろうが!」

 「お前はどれだけテンション高いんだ」

 海といってもまだ春である。まさか海に飛び込む訳じゃあるまいし、お腹がすくほどテンション上げて臨んでいるわけではない、と思う。

 いやしかし、僕の見解が甘いのかもしれない、という疑心もでてきた。女性陣もなんだかんだ楽しそうに談笑している現実がある訳だし、匠ももしかしたらしっかりそこまで考えてるのだとしたら、なかなか……

 「まあ、少なくとも俺は普段の倍は食うし」

 「結局自分のためかよ!」

 「当たり前だ!」

 「認めちゃった!?」

 僕の感心を返せ!

 「しかし、食材が足りなくなるのは事実だぜ?」

 「ぐ……まあ確かにな」

 匠が2倍食べる、というフィルターを通して見ると、急に食材が足りないようにも思えてきた。女性陣が1.2倍、僕も荷物を搭載した自転車で海までの坂を登ってきているため、1・5倍食べるとすると。ふむ、これは匠の意見も一理あるかもしてない。 

 「けど、食材なんてどうやって調達するんだ? もう一回買出し行くには街は遠いよな」

 「悠……お前ここがどこだか解かってるか?」

 「うん、一回このくだりやった気するけど……。いや普通に海──」

 「そうっ! 海だ!」

 「なんで2回やらなきゃいけないんだろう……」

 無駄な体力消費である。しかし、そんな疲れた僕なんか気にもせずに、匠は続ける。

 「食材なら──目の前に山ほど泳いでやがるぜっ!」

 「狩猟ハントする気か?」

 「その通り!」

 まあ合理的ではあるが、いかんせん手段がない。僕が運んできた荷物の中に海での食料調達の道具はなかった。

 「はっはっは、そんなこともあろうかと個人的に食料捕獲用の道具を用意してある」

 「へえ」

 「へへへへ。とびきり効率的なヤツだぜ……」

 言いながらごそごそと、自分の荷物をあさる匠。

 さすが計画犯。妙に準備がいい。効率よくて砂浜でも使える道具、となると……簡易の網とかだろうか?

 「全知にして万能の道具。そいつは……」

 言いすぎだろ。なんで道具に全知が宿ってる。なんてツッコミをいれる暇も無く飛び出してきたのは──

 「もりだ!」

 「モリ!? 潜って突くの!?」

 匠の手に握られているのは、とったどー、でお馴染み、効率の欠片もないあの三又のフォーク状のブツである。

 真面目に考えてた僕めっちゃ馬鹿じゃん。せめて釣竿とかにしろよ!

 「シュノーケルもある」

 「随分と準備万端だなあ!」

 「きらりん☆」

 「うぜえ」

 自分の声で効果音をつけて三つ又のモリと自分の歯が光っている描写を作るな。そしてそれを僕に説明させるな。

 「そして水着は無いというね」

 「前言撤回!」準備万端でもなんでもない「コイツ馬鹿だ、馬鹿だよ!」

 というかなんでそれがなくてモリとシュノーケルがあるんだ。

 「だから磯でカニとか小魚とか突いて来る」

 「ああ、うん。最初から海に潜る気はさらさら無かったんだな」

 ナゾ解明。ある意味とんでもなく合理的である。そしてシュノーケルいらないよな、それ。

 「ああ……春の海は、冷たいだろ?」

 「冷たい」

 「だから俺はいざとなったら悠を海にぶち込んで素潜り漁させるつもりだったぜ」

 「まあその時はお前を打ち殺してコンクリ結んで海に沈めてるがな」

 「はっ、やってみやがれ」

 「おお、やってやら・・・うんまあとりあえずモリをこっち向けるな」

 両手を挙げてフリーズする僕。正しく銃を向けられたときの対処法である。

 狂気反対。間違えた、凶器反対。ここで惨劇を引き起こすわけにはいかない。

 「冗談だっての」

 「いや、目が本気だったぞ?」

 少なくとも、モリの柄のゴムを限界まで引き絞って射出準備していたヤツのセリフではない。

 「とりあえず行ってくるから、火見ててくれ」

 「了解。とりあえず2、3回海に落ちてから帰ってこい」

 「はっはっは、ぶち殺すぞYOUゆう!」

 「誰が上手いことを言えと」

 なんてじゃれあいの後、匠は磯へ狩猟に、僕は砂浜で洗濯…じゃなくて、炭に風を送り続ける作業につくのだった。

 ぱたぱたぱた。


     ◆


 ぱたぱたぱたぱたぱたぱた……。

 無言でうちわを振る僕。


 ぱたぱたぱたぱたぱたぱた ぱたぱたぱたぱたぱたぱた。

 陽射しと炭の熱が板ばさみで熱を送ってくる。


 ぱたぱたぱたぱたぱたぱた ぱたぱたぱたぱたぱたぱた ぱたぱたぱたぱたぱたぱた。

 遠くでは一切手伝わずに20分以上話しっぱなしの女性陣。


 ぱたぱたぱたぱたぱたぱた ぱたぱたぱたぱたぱたぱた ぱたぱたぱたぱたぱたぱた。

 ぱたぱたぱたぱたぱたぱた ぱたぱたぱたぱたぱたぱた ぱたぱた──ぶちっ。


 「だああああ! 遅い! 遅すぎる!」


 ひたすら何十分と振ってきたうちわを放り投げ、絶叫。

 「磯で食料調達するだけにどんだけかかってるんだあのバカ! めちゃくちゃ地元っこだろ! 子供のころから慣れてるだろ! ていうかそこの女性陣『うわあ暑さでおかしくなっちゃったよ……』みたいな目でこっちを見るなあ!」

 パラソルの下の優雅な空間に怒りの矛先を向けてみるが、うるさいなあという視線で軽く受け流されてしまった。

 もう先に始めてしまおうか、そして全部食べつくしてやろうかなどと脳内で割と本気で検討を始めた、その時──

 「捕ってきたぞ~」

 ようやく待ち望んだバカの声。

 「っ! やっと帰ってきやがったこのヤロ・・・っつ!?」

 般若の形相を作って声のしたほうを向いて、けれど思わずビクンと肩を揺らし3歩ほど後ずさってしまった。

 無理も無い。と僕は思う。

 なぜなら、匠がぶんぶんと振り回しているモリの先には──ぐにょんぐにょんの太く黒い謎の物体が刺さっていたから。

 「大物だ~」

 モリを振りながらこちらに全力疾走。ぐにょんぐにょん。

 「ちょっと待て匠、お前それ何!?」

 「食べ物だぜ~」

 ぐにょんぐにょんぐにょん。

 「絶対嘘だ! って、うわあそれ振り回しながら近づくなよ。なんか汁、汁飛んでるから!」

 全力で腕をぶんぶんふって何とかダッシュとぐにょんぐにょんを止めさせる。

 「何!? 何でそんなあからさまに食料じゃないもの捕ってきた!?」

 「いや、魚とかは思いのほかすばしっこかったから、岩の影で動かないでいたこいつを捕ってきた」

 「理由を聞いたのは僕だけど、聞きたくなかったそんな合理的な返答!」

 「大丈夫大丈夫、たいていのものは最悪食っても毒中って泡吹いて死ぬだけで、焼けば食うだけなら食えるって」

 「お前それ死ねって言ってるのと一緒だからな」

 「ちげーよ。苦しんで死ねって言ってるんだよ」

 「お前最悪だな!」

 「おーい、材料そろったからはじめようぜー」

 「何パラソル組に声かけてんの!? あああ、ほら『お腹ペコちゃんですよー』とかめっちゃオッサンくさいこと言いながら嬉しそうな顔でこっちむかってきてるし。え、ちょっと待って、マジでそれ食うの?」

 「あたりまえだっつーの。なんのためにこれ捕ってきたと思ってるんだよ?」

 「何のためだよ」

 「罰ゲームのため」

 「やっぱ計画犯じゃんかぁ!」

 じゃんかぁ、ゃんかぁ、んかぁ──。 

 なんて、僕の絶叫ツッコミが無人の砂浜に響き渡ったわずか20分後。

 この謎の物体Xは目的どおり罰ゲームで、こんがり焼かれてなお生存反応を残した状態で後輩女子による世界一怖い『あ~ん』を経て、僕の口に丸ごと放り込まれることになるのだが。


 ──それはまた、別のお話。



いかがでしたでしょうか。


本編既読の方も未読の方も、楽しんでくださったら嬉しいです!

本編「生徒会しーずんす!」では連作短編形式で、生徒会メンバー五人組がこんなんじでコメディーと青春やっております。

お気に召しましたら、そちらもぜひどうぞ!


ではでは、また。

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― 新着の感想 ―
[一言] 今回も楽しくいただきましたよYOU! てか、えっ? アレッ何でだろ?匠が自分に見えて気t(ry でもアレだよね!何にも考えてないフリしながら獲物を狩るのは楽しいよね!匠君に激しく同意! …
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