Survival1:東京<Tokyo>-無知-
この物語の主人公である雪原は、単なる商社マン。
彼は、商談をするために田尻コーポレーションに足を運んだ所から始まる…。
(某企業・地下4階会議室)
「外部の者から聴かれて無いだろうな?」
「ハッ、盗聴されておりません!」
「宜しい。では、“例の企画”について会議を始める。」
「…暑い。しっかし、夏の外回りはキツイな。」
俺は、ズボンのポケットからハンカチを取り出して汗を拭った。
今は、7月の上旬。日射しが強く、朝からとても蒸し暑い。そんな時に、部長から外回りを頼まれるとは、運が悪すぎる。
街には、日傘をさしながら歩く貴婦人が多い。他には、喫茶店に入って仕事をサボって涼しんでいるサラリーマンやキャリアウーマンが見られる。まぁ…昼間の東京はそんなモンだ。
さて、前方に見えたのは俺の会社の取引先である“田尻コーポレーション”だ。日本で5本の指に入る大企業だ。やっとの事で提携の時点まで持ち込めたのだ。
俺は自動ドアを抜け、受付嬢に
「私は、春日コーポレーションの雪原と申します。取締役の東雲さんをお願いします。」
と、言った。
「かしこまりました。少々お待ち下さい。」
受付嬢が内線で呼び出してから数分後、エレベーターから一人の男が降りてきた。
「あ、どうも…お忙しい所をすみません。」
「いえいえ、こちらこそ御世話になっております。」
挨拶をし、お互いに名刺交換を交した。
(田尻コーポレーション代表取締役 東雲 作雄-しののめ さくお-)
「これはどうも…えぇと…雪原…」
「要真です。珍しい名前だとよく言われます。」
「ハハッ。で、今回のそちらの用件は?」
(ふぅ…無事に取引を終わらせた。これで部長に怒られずに済むなぁ。)
俺は、田尻コーポレーションを後にして東京駅に向かっていた。
「さぁて、会社に戻って夕食を食ってから残業するか。」
こんな呑気な考えが出来たのは今の内だった…。
この後…俺自身、今まで聴いた事が無い最も残酷なゲームに参加する事になるとは…。