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悪役令息の役どころからはサクッと離脱することにする。  作者: をち。


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8/21

アルフレッド・マージェスという男

返答次第では俺も「いけすかない貴族連中のひとり」だと切り捨てられるのだろう。

だが、別におかしな理由ではない。


()()()()だ。10歳で従者になって以来ずっと俺についていたシルが、この『秘密の宝石店』を知っている理由を考えた。

宝石が目的で知り合ったわけではないだろう。シルは宝石には興味がないし、俺がシルに頼んだことも無いからな。

ということは、店主と個人的な付き合いがあったから。

伯爵家の三男であるシルの知り合い。可能性としては街で出会う、もしくは学生時代の同級生。

仕立ての良いドレス、シンプルだが最高の素材・最高の縫製の服。なかなか手に入らない茶葉。それに、どんなにガサツにふるまおうと育ちは出るものだ。()()テミス、()()()の店、アル、マージ。

放蕩物の長男だと言われるマージェス伯爵家の()()フレッド・()()()ェス。きみだろう? 」


ぐるりと振り返るアルに、シルが「俺は何もいっていないぞ? 」と両手を挙げた。


「……ではなぜ『お前も大変だろう』と言った? 俺は()()()()()()だぞ? しかも()()()()()()()()()()()()()()()()()変わり者だ。いい兄だと? 堅苦しい貴族というものを嫌って、家を飛び出し弟に押し付けた兄が? 」


()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」


当たり前のことを聞くな、と睨め付ければ「マジか! そうか、シルかぁ」とアルの肩から力が抜けた。

どうやら排除されずに済むようだ。


「マージェスの長男は不義理をして家を出た前妻の子。次男は後妻の子だというのは有名な話だ。後妻である現夫人はとても素晴らしい方だそうだな。教養もあり、かつ包容力にあふれた優しいお方だと聞く。アルの弟も同様。真面目な好人物だ。彼は俺の弟とは違い、兄を立てて君にとても懐いていたのだろう? 」


「……」


無言は肯定だ。


「………君は優しい男だ。そして、義母と弟を、父をとても愛している。そんな君が父を裏切った実の母と、その子である自分をどう思うか。そう考えれば君の行動に説明がつく。まだ続けた方がいいか? 」


「いや。もういい。十分だ。……まさか見破られるとはな。あ、一応言っておくが、親父に強要されたわけじゃねえぞ? 俺がしたくてやったことだ」


「そんなことは分かっている。わざわざ家族と弟のために放蕩息子のふりをして家督を譲る兄。それを理解しつつ、兄の意志を尊重し、兄をさりげなく支える家族。うちと違って素晴らしい家族だと思うぞ? 幸せ者だな、アルは」


「全て知ったうえで俺を『幸せ者』だというのか? はははは! 参ったな、これは! 」


大笑いしたあと、アルは身を乗り出すようにして生き生きと語りだした。

その目は興奮と喜びにキラキラと輝き、口元は隠し切れぬカーブを描いている。


「そうなんだよ、俺は好きでやってるんだ。幸せなんだ! こういうのが俺の性分に合っている。

元々宝石が好きでさ。母がいたころは、母が集めた宝石を並べて眺めて過ごしていたんだ。子の面倒をみるような女じゃなかったからな。そうやって一日中遊んでいたんだよ。

その趣味が高じて、自分で加工するようになった。こっそり道具を買ってさ。まずは石ころから初めて。

学生時代、宝石職人の師匠のところに通っていたのがこいつにバレてな。それから協力してもらってたんだよ」


こっちがこの男の素か。うん。やはり悪くない。

シルがアルの話を補足した。


「買い出しで街に行ったら、どう見ても貴族の坊ちゃんがこそこそ路地の店に入っていくから、何事かと思ってな。

それがこいつだ。

放蕩者っていう割に授業も真面目に受けているし、それなのに成績は悪い。どう考えても手を抜いてやがるだろ? だからおかしいと思っていたんだよ。で、ついでだっていうんで問い詰めて白状させたわけだ」


「つまり、シルは俺の共犯者ってわけ」


パン、と手と手を打ち合わせた二人。

なんだ。すごく仲がいいんじゃないか。


俺はムッと唇を引き結んだ。

すっと片手を上にあげる。


「? どうした、ミル」

「? 」


「俺にも()()をやれ」


「「は? 」」


強引に二人の手を取り上げさせた。


「さっきのやつ、手を合わせるやつだ。俺にもしろ。俺だってアルの共犯者になったんだから、される権利はある」


あんぐりと二人の口が開いた。


「え? もしかしてミル、寂しかったのか? 」


「は? ミルもやりたかったのか? 」


ふは、と笑い、パン、パン、と交互に手を合わせてくれた。

こういうことをしたのは初めてだ。手がジンジンする。


「……」


俺は叩いた手をじっと見つめた。少し赤くなっている。


「いい音がしたな。ジンジンと熱い。……悪くない」


小さく呟けば、アルが震える声で言った。


「なにこのかわいいの! 悪役? 言ってるやつ、馬鹿じゃねえの!? 」


「だろ? 見る目がねえよなー? 」


「? 可愛いか? 可愛げがないとか、表情が変わらないとか言われているんだが。だから悪役扱いされている」


事実を述べたのにシルが笑う。


「そりゃ、面白くもなきゃ笑わないだろ? ミルはかわいいよ」


「ああ。シルの言ったとおりだ。かわいいな、これは」


「……そうか。かわいいのか」


シル以外に初めていわれた。

うん。……悪くない。


ご拝読頂きありがとうございます♡

こちらは休日4回更新、平日朝晩7時、17時台に更新予定となります。

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作者のモチベーションが爆上がりして踊り狂います。


アルファポリス様、カクヨム様でも公開中です。

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