レオリース
公爵夫人とひと悶着会った翌朝。
今度はまたしてもレオリースが現れた。
早朝に激しいノック。
しぶしぶ「誰だ」と問えばレオリースだったのだ。
勿論部屋に入れるわけがない。
そのままドアの前で対応させてもらう。
「こんな早朝から何の用だレオリース。もう俺のことは構うなと伝えただろう」
迷惑だということを隠しもせずに対応すれば、まるで小型犬のようにキャンキャンと俺に噛みついてきた。
「お兄様、昨日の晩お母様に何を言ったのですか?
お母様、ミルリースに酷いことを言われたって泣いていたんですからね!」
「ああ、その件か。
お前に伝えたのと同じことを言っただけだぞ?
公爵家もルディアスも俺には不要。全て公爵夫人の愛する息子、レオリースにやるとな。
だから俺のことは放っておいてくれと伝えただけだ。
何が悪い?」
「え?まだそんなこと言っていたんですか?そんなの無理に決まってるでしょう!」
「無理じゃないぞ。俺を廃嫡すればいい」
「だから、それが意味わかんないって言ってるんです!
廃嫡されたら困るのはそっちでしょう!どうやって暮らしていくつもりなんですか?」
「平民になるつもりだが?」
当然のこととして伝えれば、レオリースは呆れたようにため息をついた。
「平民ってどういうものか知ってるの?お兄様がそんな暮らしできるわけないですよね?」
「別に問題はないぞ?ここで利用されながら無駄な時間を過ごすより、平民として商売でもして生きる方がよほど有意義だ」
とん、とん、とドアを指で叩き「面倒だからさっさと出ていけ」とアピールしてやる。
しかしレオリースはしつこく食い下がってきた。
「あのさあ、わがままもいいかげんにしてよ。
お父様たちに愛されないのは自分が悪いんでしょ。なのに僕たちのせいにしないで!
そうやって人のせいにして拗ねてても、何も変わらないんだからねっ!
僕たちに当たるのはやめてよねっ!」
どうでもいいが、怒りのあまりいつもの被害者ぶりっこを忘れているようだ。
いいのか?素が丸出しだぞ?
「はぁ。…………言葉が通じないのか?
ハッキリ言おう。お前たちに愛されようと愛されまいと俺には関係ない。
昔は違ったがな。愛していたし、努力もしていた。しかしそんな時期はとうの昔に終わったんだよ。
俺はお前たちのことはどうでもいいと思っている。
強がりでもなんでもない、もう心底どうでもいいんだ。他人と同じなんだよ。
俺が望むことはただ一つ。俺を放っておいてくれ、かまうな。それだけだ。
理解できたか?
文句があるのなら俺を今すぐ廃嫡すればいい。いつでも出て行ってやるから。
なあに住むところなどどうとでもなる。心配するな。
じゃあ、もう俺に絡むなよ?俺は眠い。もう起こすな」
言い捨ててバタンとドアを閉めてやれば、ドアの向こうで悔し気に地団太を踏む音が聞こえた。
レオリースはまだ自分がどういう立ち位置になったのか理解できていないのだろう。
俺の言ったことで重要なのは、俺が平民になることではない。レオリースに後継を譲るということだったのに。
それはレオリースが第三王子の婚約者になることを意味し、レオリースに俺が今までされていた「公爵家当主としての教育」と「王族の伴侶に対する教育」が必要となることを意味する。
レオリースはこれまでのように好きに遊び暮らすわけにはいかなくなるということなのだ。
次男という自由を謳歌しながら、兄の婚約者であるルディアスの愛情と権力を傘に優越感に浸っていたレオリース。
今後はしっかりと義務と責任も担って貰おうではないか。
「ミル、大丈夫か?」
いつの間にかシルが俺のベッドに腰かけていた。
声を聞いて控えの間から出てきて様子をうかがってくれていたようだ。
「ああ。起こしたな。すまない」
そのままバタンとベッドに横になる。
「朝から疲れてしまった。
まだ少し時間があるだろう。もう少し寝よう、シル。シルもついでにここで寝ていけばいい」
ぐいっとシルの袖を引けば、「しょうがないなあ」とそのまま俺の横に寝そべってくれた。
「ほら、ここに入れ」
と布団をあげてやれば苦笑しながら滑り込む。
「ふふふ。あたたかいな。よく眠れそうだ」
とん、とん、と背を叩くリズムが心地よい。
その手にいざなわれるように、俺はまた再び眠りの国に旅立ったのだった。
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