表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令息の役どころからはサクッと離脱することにする。  作者: をち。


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/62

公爵夫人との決別

一方で、公爵家では少し変化があった。


アルバートに釘を刺したからか、使用人が俺の邪魔をすることはなくなった。

必要なことは頼めばきちんとやるようになったし、それ以上絡むこともない。

俺としては十分だ。

逆に手のひらを反すようにせっせと世話を焼かれるよりもよほどいい。



うるさいのは、レオリースと公爵、そして公爵夫人だ。

目の上のたんこぶがいなくなったのだから3人で楽しく食事を楽しめばいいだろうに。


公爵に会った数日後、学校から帰るとなんとまた公爵が待ち構えていたのだ。

レオリースといい、本当に待ち伏せが好きな親子だな。


「ミルリース。なぜ食事に降りてこない。お前も公爵家の一員なのだ。家族で食卓を囲め。

いいかげん意地を張るのはやめたらどうだ?」


俺のあの言葉を「反抗期」だとでも思ったのか?

意地で済む問題ならこうはなっていない。

相変らず公爵は見たいものを見たいようにしか見ない。

現実だと認めるのが怖いのだろうか。


「ふふふ。おかしなことをおっしゃいますね、公爵。私が公爵家の一員であったことなどありましたか?

先日申し上げたではありませんか。不肖の長男などお捨て置きください、と。

レオリースが後継教育を学ぶための猶予として、学生の間はこちらで『後継者のふり』を致しましょう。

ですが、それ以上は期待なさらぬよう」


「まだそのようなことをぬかすか!

これまで育ててやった恩も忘れ、なんたる言い草!この恩知らずめ!」


とっさに振り上げた公爵の手をシルがバシッと掴んだ。


「失礼いたします。暴力はおやめください」


「うるさいっ!使用人風情がっ!」


なんとか振りほどこうとするも、シルは涼しい顔。


「くそう!放せ!」


公爵は額に青筋を立ててブルブルと怒りに震えている。

鍛えてもいないし、基本的にはこいつは小心者なのだ。


「シル、放してやれ。どうせ何もできん。

公爵に申し上げます。ご不満でしたら、いつでも廃嫡していただいて結構です。

どのみち平民になるつもりですので、それが少し早まるだけですから。私は全く困りませんよ?

祖父が私に残してくれた信託財産もございますしね?」


淡々と述べていると、騒ぎを聞きつけたのか公爵夫人が現れた。


「まあまあまあ!こんなところで騒がないでくださいな!

ミルリース、お父様の言うことを聞きなさい。

こんな風に逆らうような子じゃなかったでしょう?

殿下の妻となるのにそのような生意気なこと、許しませんよ!」


出かける予定のないこんな時でも、彼女はしっかりと化粧も施し、全身を着飾っている。

中身のない薄っぺらな人、それが公爵夫人だ。

結婚するときも、祖父母から猛反対されたという。

公爵夫人はそのことを祖父母が他界した今でも恨みに思っていた。


産みの母だというのに、俺は彼女に抱きしめられた記憶などほとんどない。

レオリースが生まれる前から彼女は俺にこう言っていた。

「意地悪だったお義父様にそっくり!」

「何を考えているのか分からない子ねえ!こどもらしくない!あなたを見ているとイライラするわ」

そもそも血縁なのだから祖父に似ていて当たり前。父が祖母に似ただけだ。

それに公爵家嫡男だからと俺に「感情を出すな」「笑顔を見せるな」と教え込んだのは、あなた方だろうに。


幼い頃俺を育ててくれたのは、乳母だ。

シルが来るまで俺の唯一の味方だった彼女は、俺が4歳のとき「レオリース様とあまりに扱いが違いすぎます!ミルリース様もまだ幼い子供なのですよ!」と俺のために両親に抗議してくれた。そして……「生意気だ」と解雇されてしまったのだ。


それから1年後。俺は殿下の婚約者にされ、怒涛のような貴族教育が始まった。

それまでの「後継としての教育」に加え「王子の妻としての教育」が追加され、俺の毎日は勉強づけとなる。

地獄の日々の始まりである。


公爵と公爵夫人、幼いレオリースが庭で楽しそうに遊ぶのを横目に、俺は先生にムチ打たれながら厳しい指導を受けた。

俺には家族の時間など与えられなかった。


俺の記憶の中で、乳母を失ってシルが現れるまでのこの1年間の記憶はほとんどない。

楽しそうな家族への憧憬、毎日眠くて辛かったということ、与えられたムチの痛さだけは覚えている。


こうした理由で、俺にとって公爵夫人は文字通りの公爵の夫人。それ以上でもそれ以下でもない。

母親という存在などとうに諦めた。いうのならば乳母が俺の母だ。

俺を愛し育ててくれた大切な母を奪った公爵家の女。それが公爵比人だ。


「公爵夫人、一方的に騒ぎ立てたのは公爵の方ですよ?

私は放っておいていただきたいと申し上げたまで。

殿下の妻の座も私には不要です。あなたの愛する息子、レオリースにすべてお譲りいたします。

私は公爵家の嫡男という地位を放棄致します。ですので、今後私のことはおかまいなく」


「え?あなた何を言っているの?

ねえ、どういうこと?訳の分からないことをいうのはおよしなさい!

私のことを公爵夫人と呼ばないで!お母様、母上と呼びなさい。

嫌味なの?本当に嫌な子ねえ!

そんな風に育てた覚えはありませんよ!」


「奇遇ですね。私もあなたに育てらえた覚えはございません。

困ったなあ……分かりやすく話したつもりなのですが……これでもご理解いただけませんか?

ではあなたにも分かるようにこう言いましょう。

あなたはどうぞ愛するご家族のことだけお考え下さい。私は私で好きに致しますので。

では、失礼いたします。


アルバート、公爵夫人をお部屋にご案内さしあげろ。お疲れの用だぞ?」


「は、はいっ!」



「お前も家族だろう!」


悲鳴のような声が聞こえたので、思わず爆笑してしまった。


「あはははは!私も家族?面白い冗談だ!

申し上げたでしょう?私が家族だったことなど一度もございませんよ、公爵。

私の家族は乳母とシルだけです。薄情な私のことなどどうぞご廃嫡ください。

ああ、笑いすぎて涙まで出てしまった。

全く、冗談ばかり。愉快な人たちだ!なあ、シル?」


「そうですね、ご主人様。

さあ、お部屋に参りましょう。お風呂におはいり頂いている間にお食事を運ばせますね?

なにか召し上がりたいものはございますか?」


「そうだなあ……ああ、魚がいいな。ポワレにしてほしい」


「かしこましました」




大笑いした俺をみて驚いたようにぽかんと立ち尽くす公爵夫妻。

俺だって笑いたければ笑うさ。

こんなふざけた茶番、笑わずにいられようか。



ご拝読頂きありがとうございます♡

少しでもいいねと思っていただけましたら、ぜひ☆をポチっと……|ω・)チラリ


作者のモチベーションが爆上がりして踊り狂います。


アルファポリス様、カクヨム様でも公開中です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ