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悪役令息の役どころからはサクッと離脱することにする。  作者: をち。


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拠点探し

ある程度話がまとまったところで、少し小腹が空いてきた。


「アル、他にもまだ話したいことがあるのだが……場所を少し移さないか?

少し腹が減ってきた。外で一緒に食事をしながら、というのはどうだろうか?」


へ?とアルが目を丸くした。


「なんだ、デートのお誘いか?

シル、いいのか?」


ふざけたことを言い出したアルにシルが送ったのは氷点下の視線。


「三人でに決まっているだろう」


「冗談だって!」


こほん、と咳払い。


「もちろんご一緒いたしますよ、ミルリース様?

で、どちらで参りましょうか?アルテミス?アルフレッド?」


わざとかしこまるアル。

俺はその手を取ると、大切そうにそっと掲げた。


「どっちも君だろう?お好きな方で。

ただし、アルテミスなら俺にエスコートをさせてくれ。俺のエスコートでは不満かもしれないが……」


ぴゅう!


アルが口笛を鳴らす。

だからそういうところだぞ、アルテミス!

レディにふさわしい態度で頼む!


「カッコいいなあミル!じゃあ……アルテミスで」


支度するから待っててくれ、というアルを見送り、俺も身なりを整える。

俺もレディにふさわしくしなければ。







数刻後。

現れたアルテミスは……とても美しかった。

光沢のある濃紺のドレスは、俺に合わせてくれたのだろう。

初めて会ったときと同じように身体に沿うようなシルエットが美しい。

女性にしては長身だが、華やかな美貌と存在感が見るものに疑問を抱かせない。


「…………ヒールか」


「何かご不満でいらっしゃるの?レディにヒールを履くなとでも?」


そういうわけではない。だが……


「俺にもう少し身長があればと思ってな。

こればかりでは努力ではどうしようもない。

申し訳ない。伸びるまでもう少し待って欲しい」


しょんぼりと呟けば、アルテミスがほほ笑んだ。


「ミルはとてもかっこいいですわよ?私の知る男性の中では一番かも」


「おいおい!俺がいるだろうが!」


シルが突っ込めば


「シルはねえ……。レディに対する扱いがなっていないんだもの」


軽く首をすくめてアルテミスがクスクスと笑った。




「シルに勝ったとは光栄だ。

では、参りましょうか?」


アルの手を取りマージの店を出た。

ヒールのアルに合わせていつもよりも短めの歩幅でゆったりと歩を進める。


シルが先に立ち、馬車の扉を開けてくれた。


「ありがとう、シル。

どうぞ、アルテミス」


「あら」


優雅に腰をかがめてするりと滑り込むように馬車に乗り込む姿は、美しい女性にしか見えない。

うん。やはりとても綺麗だ。


5歳でルディアスと婚約してから、俺は男でありながらまるで女性のように扱われてきた。

「男性と二人きりで居てはいけない」

「遅くに出歩くべきでばない」

エトセトラ、エトセトラ、エトセトラ。

当たり前のことすら制限されてきたのだ。


きちんとした男の立場で美しいレディをエスコートするというのは初めてで、少し胸が躍ってしまう。

シルを参考にしたのだが、どうだろうか?

上手くできていればいいのだが。





個室を貸し切りできる店をシルが手配してくれた。

ここならば安心して話ができる。


「どうぞ?」


手をさしのべて降りる手助けをする。

ふわりと羽のような身軽さで降りてきたアルテミスは、さすがだ。


エスコートというのは、される側にもそれなりの筋肉が必要なのだ。

しっかりとした体幹を維持しながら、しかもあくまでの優雅に、というのはなかなかに骨が折れるものなのである。

アルはどれくらい鍛錬を積んだのだろう。

ここまで極めているのだ。放蕩モノのふりどころか、いっそ一流だと言っていい。

俺はアルに対する尊敬の念を強めた。




個室に入り、その日のおススメを注文。

思ったよりも遅くなってしまったので、さっそく本題に入ることにする。


「さて、実はな。邸を借りようと思ってな。

今からあげる条件で心当たりがあれば、紹介願いたいのだが…

商会の拠点としても利用できるような、三階建ての邸。できれば一階は事務所、二階は客間、居間、キッチンなど、三階を俺とシルの私室に当てたい。

大通りから一、二本の場所。

ゆくゆくは買取できれば望ましい」


次々とあげていけば、アルテミスから優雅な仮面がするりと滑り落ちた。


「俺、何言われてるんだ?

いくらなんでも、駆け落ちすんなら他国にしろよ」


「駆け落ちか!それもいいなあ!」


シルがにやにやし出した。 


「?きちんと話を聞いていたか?

MS商会の拠点の話だ。

シルもアルにあわせなくていい。


ゆくゆくは公爵家を出てそちらには移る予定でな。

邸が手に入り次第、徐々に荷物を運び込むつもりなんだ」


「いや、マジで驚いた。

アルテミスどっかいっちまったわ!

ちょ、ちょっと待て」


スー、ハーと深呼吸。


「取り乱してしまったわね?ごめんなさい。

ええと……商会にも使えそうな邸、ね。

あるわよ」


アルテミスが戻ってきた。


「あるのか?」


「ええ。明日でよければ案内するわよ?」


「明日も学校なんだ。

……友人ができたから、サボるのはやめにした」


「あらあらあら!良かったわねえ!」


「ああ。みんなこんな俺にとても優しくしてくれるんだ。

休んで心配させたら申し訳ないからな」


「ふふふ。そうねえ。心配させるわけにはいかないわよね」


そういうアルテミスの目がとても優しくて、なんだか涙が出そうになり慌てて下を向く。

アルテミスはそんな俺に気付かぬふりをしてくれた。


「なら、先にシルに確認してもらいましょう!どのみち二人で住むんだし。

どうかしら?」


「俺はそれでいいぞ?

ミル、俺が先に確認して、OKならミルも、って感じでどうだ?

シル兄さんに任せとけ!」


「シル兄さんなら安心だな!

それで頼む」




楽しい予定がどんどんたっていく。

この感じなら、公爵家を早いうちに出ることができそうだ!


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