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悪役令息の役どころからはサクッと離脱することにする。  作者: をち。


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俺の友人とシル

ルディアスのことは面倒だったが、おかげで言いたいことも言えたし、今後は自由になった。

なによりクラウスたちだけでなくクラスメートまで味方してくれたのも嬉しかった。


学校に登校してよかった。

これも本屋でご令嬢たちに出会ったおかげかもしれない。

本を選んでくれた礼もかねて、なにか菓子でも贈ろうか……。





殿下を残して外に出ると、クラウスがこう言いだした。


「なあ、時間があるなら、カフェでお茶していかないか?

ミル、これからはアイツに遠慮しなくてよくなったんだろ?

せっかく出会ったんだ。交流を深めようぜ!」


「奇遇だね。僕も同じことを考えていた」


「まさか私たちを置いていくわけないわよね?」


「もちろん私たちもご一緒させていただくわ!」


「ミル、どう?」


まさか、俺を誘ってくれているのか?

友達もなじめてなら、友達と出かけるのも初めてだ。

こんなことがあるとは思ってもみなかった。


だが、今日は初日。きっとシルが心配していることだろう。

どうしようか……。


俺は思い切って提案してみた。


「もしもみなが良ければなのだが……うちの馬車で行くのはどうだろうか?

俺の侍従が迎えに来ていると思うんだ。できればみんなを紹介したい」


するとご令嬢たちから悲鳴のような歓声が上がった。


「『俺の侍従』って、シル様ですか?ミル様を心配して?

きゃああああ!そうよね、そうですわよねええ!

こんなにお可愛らしいミルですもの、さぞかしご心配ですわよねえええ!」


「勿論いいですっ、いえ、ぜひお願いいたしますっ!

いいわよね、クラウス、ジーク?!」


ノーと言わせぬ謎の勢いだ。

クラウスとジークが少しひいている。


「あ、ああ」


「いいけど……ミルフェとランジェ、ミルの侍従さんになにか思い入れでもあるの?

ちょっと怖いよ……」


「え、ええ?まっさかあああ!シル様がミルといちゃいちゃされるのが眼福だなんて思っておりませんくてよっ!」


「ええ!間近でお二人をガン見しようなんて、そんなこと考えていないわよっ!」


俺とシルがいちゃいちゃ?

……前回の俺たちは彼女たちからするといちゃいちゃして見えたのだろうか?なんということだ!


「ミル、いいか?こいつらこんなこと言ってやがるけど」


「あ、ああ。いちゃいちゃはしていないが、それでよければ……」


「うふふふふ。お二人が同じ場に存在して下さるだけで満足ですから!」


「あとは脳内でいくらでも補完できるから!大丈夫よ!」


脳内でなにを補完するつもりなのだろう。しかし、良いというならば俺に異論はない。



登校初日。

こうして俺は人生二度目のカフェに行くことになった。








門の前に出れば、案の定シルが馬車の横で待っていた。


「おかえりなさいませ、ミルリース様」


外仕様の敬語で侍従らしく礼をとり、パチリと片目をつぶって見せる。

ご令嬢たちが声にならない悲鳴をあげた。

一度会っただけだというのに、二人はすっかりシルのファンのようだ。


「ああ、ただいま。シル。

彼らは……俺の友人だ。

ご令嬢たちは先日会っただろう?

その隣の背の高いのがクラウス・ベルヘルム。辺境から来たのだそうだ。

メガネのほうがジーク・オルフェウスだ。頼りになる級長なんだ。

二人とは今日友人になってな。あの……とても良くしてもらった」


ちょっと照れながら紹介すれば、二人とも嬉しそうに笑ってくれた。

友達を紹介するのなんて初めてだったが、間違っていなかったようだ。よかった。


クラウスもジークも丁寧にシルに自己紹介し、さらにこんなことまで言ってくれる。


「ミルのことは俺たちに任せてください」


「友達ですから。しっかりとミルを守ります」


守ってもらう必要はないが、それでも二人の気持ちが嬉しい。




俺の友人たちにむかってシルが再度頭を下げた。


「皆さま、ミルリース様がお世話になりました。

ミルリース様にあなた方のような友人ができたことを嬉しく思います。ありがとうございます。

ミルリース様の侍従、シリウス・ブレインと申します」


「……ブレイン伯爵家のシリウス様?

確かとても優秀な方だと聞いております。成績優秀、武術にも優れているとか…」


ジークはシルを知っていたようだ。

俺のシルは優秀だからな!噂になっていてもおかしくはない。


「私の名をご存じでいらっしゃいましたか。お恥ずかしい限りです。

ブレイン伯爵家が三男になります。が、十のときに家を出てミルリース様のおそばにお仕えすると誓っております。

私のことはシルとお呼び下さい。今後もお会いする機会があると存じますので、以後お見知りおきを」


俺はシルの服の裾を引っ張った。


「シル、みなでカフェに行くことになったのだが。送ってもらえるか?」


「それはようございました!もちろんお送りいたしますよ。

ミルリース様、高等部はいかがでしたか?」


「ああ。とても楽しかった!クラスメートも……みなやさしかった。行ってよかったと思う」


「そうですか」


シルはニコリと笑って俺の肩をぽんぽんと指で叩いた。

耳元で小さく囁く。


「ミル、良かったな」


そしてそのまま馬車の扉をあけ、皆に声をかけた。


「みなさま、どうぞお乗りください。

カフェまでお連れ致しましょう。

ミルリース様も、ほら」


いうやいなや、ひょいっと片手で俺を抱き上げそのまま馬車に乗せてしまう。

かあっと顔が赤くなるのが分かった。

シルめ!人前でなんてことを!俺は男だからエスコートなど必要ないと言っているのに!

ほら、みなが驚いているではないか!


「…ふふっ。とても仲がおよろしいのね?」


「眼福眼福!」


「いやなんつーか、一緒にされたかねえけど……ランジェの言ってる意味が分かった気がするわ……」


「ええ。ミルは……とてもイイ侍従をお持ちなのですね」


いい侍従という言葉に何か含みがあるような気がする。

俺は黙って下を向いてみんなが乗り込むのを待ったのだった。



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