クラスメートたち1
まだ少し時間があるとうので、構内の簡単な説明を聞きながら教室へ。
校舎は大きく分けて中央棟と東棟に分かれている。
東棟には職員室、食堂、実験室、実習室、図書室などがあり、教室は中央棟だ。
中央棟の一階が一年、二階が二年、三階が三年となっているのだそうだ。
ちなみに、南棟は校舎ではなく寮のため、俺には用がない。
「俺たちのクラスは一番奥だ。
知っているかもしれんが、AからCクラスまでは経営科で成績順。DとEクラスは騎士科になる。
経営科には嫡男や、高位貴族が多い。でもって、DとEは次男以下が多いな。
ちなみに、女性の大半は経営課だ」
「中等学校とあまり変わらないのだな」
「ああ。でも、人数が違う。
中等学校は俺みたいに地元で通うやつも多いだろ?
特に地方の生徒やなんかは、王都に出てくるだけでも大変だからな。
でも、後を継ぐためには王都の貴族学園を出ることが義務付けられている。だから高等学園から王都に出てくる生徒も多いんだ」
クラウスは高等学園からの参加組。俺の噂は、入学式で聞いたのだという。
申し訳なさそうに教えてくれた。
「『Aクラスには要注意人物がいる、第一王子のイージス様と、第三王子ルディアス様の婚約者ミルリース様だ』って聞いたんだ。
『氷の令息って言われてる、無表情無感情でお高くとまった奴だ』って噂になってた。
だけど、みんなミルにあったら違うってすぐに分かると思うぞ?
だって、ミル、かわいいもんな! 」
「いや、表情については言われている通りだ。いまはまだ表情筋の鍛錬の途中なんだ。
だから気持ち悪い顔をするかもしれん。許してほしい」
決行真面目にお願いしたのだが、クラウスはそれを聞いて目を丸くし、笑い出した。
「鍛錬? なんだそれ! ミルって面白いな! 」
「面白い?そんなことは初めていわれた。可愛げがない、とはよく言われるが……」
「はあ? 俺に言わせれば可愛いしかねえと思うけど……。
誰がそんなことを言うんだ? まさか……婚約者か? 」
人好きのする顔に一瞬殺気のようなものが浮かぶ。
出会ったばかりなのに「俺が文句言ってやろうか? 」なんて言ってくれるから、嬉しくて目頭が熱くなる。
友達ってこういうものなのか。
でも、俺のせいでクラウスが目をつけられてしまってはいけない。
「いや、本当にその通りなんだ。俺は勉強ばかりでな。他のことに割く時間などなかった。
だが、それを今後変えていこうと思う。目下努力中といったところだ」
だから大丈夫だといえば、クラウスはそれ以上は踏み込まずに引いてくれた。
「そうなのか? ……まあ、ミルがいいならいいけど。
またそんなこと言われたら、俺に言えよ? 」
ぽんぽん、と繋いでいないほうの手で頭を叩かれる。
「ミルってさあ、そんな奇麗な外見して、中身が俺の弟に似てるんだよなあ。なんか放っておけないっていうか」
「そうか? 弟はいくつだ? 俺はおそらくお前と同じ年齢だと思うんだが……」
「あははは! 分かってるよ、クラスメートなんだからさ!
あーもう! そういうとこな! 王都って気取った奴が多いと思ってたんだが、まさか公爵家の息子がこんな奴だとはなあ!
ふは! 学園生活が楽しみになってきた! 」
良かった。また元の人好きのするクラウスに戻ってくれた。
「クラウス、俺も楽しみだ。友達がいるというのに憧れていたんだ。君がいてくれて嬉しい」
ちょっと勇気を出して口にしてみれば、呆れたように肩をバンバンと叩かれる。
「だーかーらー! なんでそんな可愛いこといっちゃうかなあ! 」
痛いぞ、クラウス。もう少し力加減に気を付けて欲しい。
「これからは思ったことはきちんと口にすることにした。
そうしないと何も伝わらないと思いだしたからな。
なにかおかしなことを言っただろうか? 」
「おかしかねえよ! ただ……ミルってあれだ……あー……俺もミルと友達になれて嬉しいってこと! 」
「それならいいが。俺もクラウスと友達に慣れて嬉しいと思っている」
それにしても、昨日からずっといいことばかりが続いている。
アルに続いてクラウスとまで友人になってしまった。
こんな幸運続きでいいんだろうか。
幸せすぎて少し不安になったら、脳裏にシルの「今までの分な! 」という顔が浮かんだ。
そうか。
今まで俺には何もなかった。だからその分の幸運が一気にやってきているのかもしれない。
それなら、我慢してきた甲斐があったというものだ。




