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悪役令息の役どころからはサクッと離脱することにする。  作者: をち。


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新たな仲間と計画

こうしてアルが俺と手を結ぶことになった。

アルには使える伝手や販路があるから、正直非常に助かる。

俺とシルだけでは家名を隠して動くにも限度があるからな。




改めてアルが茶を淹れなおしてくれた。

茶はそれを供する人の自己紹介にも似ている。それが分かってのことだろう。

今度の茶葉は少し癖がある。


「ハーブティーか。ミントと……ベースはセイロン? 」

「正解! 俺のオリジナルのブレンドだ。ミントは頭がスッキリするだろう? ミントの清涼感とセイロンの濃厚なコク。これが俺の味」

「うん。理解した。これに……レモングラス、明るさと自然な甘やかさ足してみるといい。よりアルらしくなる」

「……ミル、お前、人たらしすぎ」


人たらし? 俺のどこが?

思ったことを言っただけなのに、なぜかアルが赤くなった。


さあ、本題に入ろう。


「今から話すことは口外しないでくれ。いいか? 」


「ああ。わかった。俺の仕事は信用第一だ。客や依頼主の情報は漏らさねえよ」


シルがこくりと頷いたので、計画を話すことにする。


「根拠は言えないが、俺はとある理由から、近いうちにこの国には無い流行病が他国からこの国に持ち込まれることになると推測している。その病には特効薬があるのだが、この国では扱っていない。だから、あらかじめ俺がそれを輸入し、蓄えておく。そして病が流行り出したら一気にそれを売り捌こうと思う」


輸入の際にこの国にはない病の薬だけを大量に買い付ければ、この国に病が入った際に、俺がそれを撒いたと疑われかねない。

だから、輸入するのはその材料だ。ついでに長期保存できる食料と瓶詰めも輸入する。病が流行れば働き手も減る。となれば、食料の自給率も下がるはずだ。病を避けうちに籠る人もいるだろう。だからこその保存食なのだ。


話をしているうちに、アルの表情がどんどん深刻なものになっていった。


「いや、それ、もし本当なら大事(おおごと)じゃねえか! ……なんで知ってんのか、理由は話せないんだな? 」


「ああ。だが俺はそうなると確信している」


病の流行を想像したのか、眉をひそめるアル。


「その流行を止めることはできないのか? 」


まあ当然の疑問だろう。


「おおよその時期は分かるが、どこから入るのか、誰がいつ持ち込むのかまでは分からない。だから防ぐことはできない。だが、最悪の状況になるのを食い止めることはできる」


「……その根拠は言えないんだよな? 」


「ああ。言っても信じないだろうしな。話を聞いて臆したか? 理由も言えない、根拠も言えない。こんな話、信じるものはいないだろう。だから俺が()()()()()()()になる。俺がやらない場合、多くの人命が失われることになるだろう。だから俺はやるぞ。人を救えて、まとまった金も手に入る。一石二鳥だからな。それに……悪役が国を救うなんて面白いだろう? 」


「確かに面白いが……そんな馬鹿げた話……」


「嫌なら降りていいんだぞ? 」


「待って⁈ 信じるのは俺とシルくらいだって言おうとしたんだって! やるよ! やってやるよ! 悪役を救国の英雄にしてやる! クソどもに逃した魚のデカさを見せつけてやるのも面白そうだしな」


叫ぶように言ったアルが、俺の方に身を乗り出してきた。腹は決まったようだ。


「で? 俺はなにをすればいいんだ? 」


「アルとは共同経営ではなく『投資』『業務提携』という形で協力してもらうことにする。商会と付き合いのあるアルには買い付けを頼みたい。買い付けるものは俺が都度シルを通じて指示する。どうだ? 頼めるか? 」


「はは! そんくらい、お安い御用だ。買い付けの名義はどうする? お前だって知られたくないんだよな? 」


「そうだな……M S商会にしてくれ。その名義で商会を新たに立ち上げよう。表だってはシルを経営者ということにしておく。俺はそのオーナー、アルは提携先、ということだ」

「ちなみにM Sは」

「ミル、シル、だな」

「ミルと俺か! ……いいな、それ」

「だろう? シルは俺の家族だからな。ずっと一緒にいるのだし問題ないだろう? 」

「なんだよお前ら、結婚でもすんのかあ? 」

「なんだアル、やきもちか? 大丈夫、君も仲間だ。一応マージのMでもあるのだぞ? 」

「それ、俺が買付に動けばマージの店の別名義だと勘違いされるぜ? 」


言ってハッとしたように目を見開くアル。


「………まさか、それも狙いか? 」


それに対して俺はニヤリと笑って見せた。


「勘違いするのは勝手だ。放っておいて利用してやれば良い」


しーん。

信じられない、という目でアルが俺を見る。


「マジで怖え坊ちゃんだな! 」


褒め言葉だと思っておこう。


「でもかわいいし最高だろ? 」


そう言ってシルがまた頭を撫でてきた。

シルの撫で癖は困ったものだ。髪をいくら直してもきりがない。撫でるのは家にいるときか後頭部だけにしろと言っておかなくては。


前髪を撫で付けながら、俺は胸を張ってみせた。


「かわいくは無いが、俺が最高なのは間違いない。それだけ努力はしてきたからな。お前たちも大船に乗った気でいていいぞ。俺とシルの未来がかかってるんだ。必ず成功させてやる」


ピュウ。

アルが口笛を吹いた。


「漢前だなあ! 」

「ドヤるミル、可愛すぎないか? なあ、聞いたか? 『ミルと俺の未来』だと! 俺の未来には希望しかねえ」

「お前、そんなヤツだっけ? 」





ご拝読頂きありがとうございます♡

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