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勇者という最強種に復讐。いじめられっ子の俺だけが、前代魔王の恨みを継いで喚ばれた 〜普段は使い魔と合体して牙を隠し、戦う時だけ『人間』に戻って私達を壊した全てに復讐する〜

コンクリートの焼ける匂いと、鉄錆の混じった唾液の味。

 視界の端で、格闘技部員の佐々木が、獲物をいたぶる獣のような笑みを浮かべて俺の脇腹を蹴り飛ばした。

「おい、もっと声出せよ、蓮! いい音がしねぇだろうが!」

 石田もまた、倒れた俺の指を嬉々として、ゆっくりと踏み潰していく。

「佐々木、そこじゃない。こいつはここを攻められるのが一番嫌なんだよ。ほら、見てろよ」

 二人の瞳には、明確な加害の愉悦が宿っていた。暴力そのものを楽しみ、俺の苦痛を最高の娯楽として消費している。だが、そんな残酷な二人でさえ、背後にいる「彼」の反応だけを異常に気にしていた。

 取り囲む男女7人の中心。ベンチに座り、退屈そうにスマホをいじっている男――藤崎。

 藤崎は一度もこちらを見ない。ただ、面倒くさそうに指先で画面をスクロールし続けている。その「興味のなさ」こそが、佐々木たちを焦らせ、暴力を加速させる燃料になっていた。

 その時、屋上の扉が勢いよく開いた。

「いい加減にして、みんな!」

 幼馴染の陽菜ひなだった。彼女は唯一、僕を「人間」として見てくれる希望だった。

 その声を聞いた瞬間、藤崎が、ゆっくりとスマホを置いた。

 彼は何も言わない。立ち上がりもしない。ただ、座ったまま顔を上げ、陽菜の全身を品定めするように、じっと眺めた。

「……ッ!」

 佐々木と石田の顔が、歓喜に引きつった。

 藤崎がスマホを置いた。それは、彼らにとって「今の状況に興味を持った」という、何よりの称賛であり、さらなる暴走への許可証だった。

「あー……。藤崎、お前もそう思うだろ? こいつ、最近急にオンナの体になってきたもんなぁ!」

 佐々木が、獲物を変えた。陽菜の腕を強引に掴み上げ、逃げられないように背後から羽交い絞めにする。

「陽菜、お前さ。そんなに蓮が心配なら、俺たちが代わりに可愛がってやるよ。藤崎も『見たい』ってよ!」

「……っ、やめて! 離して!」

 石田も加わり、陽菜の衣服に手をかけようとする。

 藤崎は依然として一言も発さない。ただ、ベンチに深く腰掛けたまま、眼下で繰り広げられる地獄を、まるで映画でも見るような冷徹な瞳で鑑賞していた。

「おい、蓮、見てろよ! お前が守れなかったオンナが、今からどうなるか……!」

 女子たちの下卑た笑い声と、陽菜の悲鳴。

 藤崎の沈黙の圧力が、屋上の狂気を極限まで引き上げていく。

「やめろ……。やめろォォッ!」

 俺は泥だらけの体を引きずり、叫びながら藤崎の足元に手を伸ばした。その瞬間だった。

 ――足元が、光った

 無数の幾何学図形と、脈動する血管のような線が絡み合う、巨大な**「召喚陣」だ。

 屋上全体を檻のように囲むその陣のなかで、さらに俺たち9人の足元へ、それぞれ独立した「個別の召喚陣」**が浮かび上がる。

 暴力に酔いしれる佐々木の足元には、刺すような黄金色の陣。

 狡猾に俺の指を踏み抜いた石田の足元には、不気味な紫色の陣。

 泣き叫ぶ陽菜の足元には、透き通るような青色の陣。

 そして、ベンチに座ったまま動かない藤崎の足元には、他を圧倒するほど禍々しく、鮮やかな漆黒の陣が展開していた。

 だが、俺の足元には、石田と同じような紫の陣が現れた。しかしその紫は瞬く間に白に変色し、色彩という概念そのものを拒絶するような、あまりに無機質な――**「純白」**の魔法陣に変わった。

「陽菜……っ!」

 僕の手が届く前に、視界は圧倒的な「白」の暴力に塗りつぶされた。音が消え、温度が消え、俺の意識は底知れない深淵の中へと沈んでいった。


白が、一転して「闇」に変わった。

 目を開けたそこは、深淵のような暗がりに沈む廃城の玉座の間だった。

次に目を開けた時、そこは廃墟のような城だった。

空気は驚くほど淀んでいる。いや、違う。俺の体が、周囲の空気を無理やり飲み込んでいるような感覚。

「ここは……?」

周りを見渡すが、陽菜やいじめっ子たちの姿はない。

広い空間にいたのは、性別すら判別できないほど老いた人物と、一匹の猫だけだった。

「……同種よ。無理な召喚をして、すまない。だが……この世界を、救ってくれ」

老人が口を開いた瞬間、真っ赤な血が床に飛び散った。

「魔王様! 無理をなさらないでください!」

寄り添う猫が、悲痛な叫びを上げる。

(魔王……? こいつが?)

俺の知る魔王は、もっと禍々しい悪魔のような姿だ。目の前の老人は、あまりに「人間」に見えた。

喋る猫には驚かなかった。ネット小説やゲームの世界では、獣が喋るなんて当たり前だからだ。だがそんな事はどうでもいい

「陽菜……! 他のみんなはどこだ!」

僕は叫んだ。いじめっ子たちはどうでもいい。だが、陽菜だけは、今すぐにでも助けに行かなきゃならない。

「……君以外の者たちは、予定通り『あちら側』へ渡ってしまった。だが君だけは、私はどうしても君を必要としたのだ」

老いた魔王が右手をかざした瞬間、脳内に強烈な情報の奔流が叩きつけられた。

頭が割れるような痛みが走る。脳に刻まれたのは、この世界のルール。

• 魔石文明の発展:

この異世界は『魔石』によりすごい発展を遂げている。

• 人間の特異性:

人間という種族は、空気のように当たり前にある魔力という魔法を使う際の燃料を吸収できる能力がある。

• 唯一無二の存在:

この異世界には勇者以外の人間は存在せず、獣人だけの世界である。

「……っ、勇者、だと? あいつらが……」

「……っ、はぁ、はぁ……っ!」

さらに脳の最深部には、今の俺では決して触れることのできない「黒い封印」が置かれた。

「今の君に、私の記憶のすべてを託すのは酷だ……。君がこの世界で多くの人と出会い、真に強くなった時……すべては明らかになるだろう……」

魔王はそう言い残し、青白い炎に包まれて灰となった。

魔王の遺灰を見送った猫が、静かに俺の足元に歩み寄る。その瞳には、深い慈愛の色があった。

「……さて。今の貴方のままでいれば、獣人の特徴を持たないあなたは一瞬で見つかってしまいます」

「……貴方の体質は変えられませんが、私と同化することで魔力吸収を少しだけ抑えることができ、獣人の特徴も得られるでしょう。なので一度姿を偽装しましょう。いいですね?」

「……ああ、頼む」

猫がひかり、俺の体に溶け込んだ。

お尻のあたりが焼けるように熱くなる。

「……あ?」

光が収まったとき、俺の体には、人間にはあるはずのない「尻尾」が生えていた。

(聞こえますか。私の名はネロ。よろしく。同化した事により獣人の特徴の一つでもある尻尾が生え獣人達には猫族だと思われるでしょう。さらに魔力の吸収能力は抑えられているので獣人達にバレることはないでしょう。とりあえず城の外にある森をずっと北上し街を目指しましょう。レン

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