空っぽのギフト
B国は、世界でも類を見ない内戦の状態にあった。
昼も夜もなく戦闘が繰り返され、死傷者の数もさることながら、民間での食糧不足も問題となっている。
民間人は荒れ狂う戦禍から逃げ惑いつつ、定期的に他国の輸送機を介して送られる、人道支援物資を頼りにして食いつなぐような有様だった。
ある日、ひときわ大きな輸送機がやってきて、大量の物資が民間人のキャンプ場へとばらまかれた。
「おお、今日はたくさん落ちてきたぞ!」
「どこの国からだろう。神様が送ってくださったのだろうか」
民間人たちは喜んだが、最初に封を開けた者が叫び出した。
「なんだよこれ、空っぽじゃないか!」
支援物資のほとんどは空箱で、食べ物や薬はいつも通りの量しかなかったのだ。民間人たちは、肩透かしを食らった思いだった。
数日後、民間で感染症が流行り始めた。重症ではないが、しつこく続く発熱と息苦しさが彼らを苦しめた。
「あれだ、あの空の物資が怪しいぞ。あれは神様なんかじゃない、悪魔からのギフトなんだ」
熱にうなされた民間人のひとりが、そんなことを口にした。
さらに数日後、急速に広まった感染症は徐々に落ち着きを見せ、罹った者たちもだんだんと回復するようになった。民間人たちは安心したが、そんな彼らのもとに、かの輸送機が再び姿を現したのだ。
「またあの輸送機か?」
「でも変だ。今度は戦闘区域に向かってるみたいだが」
輸送機はキャンプ場を通り過ぎ、黒煙の上がる戦闘区域にたどり着くと、また何かしらの物資をばらまいて飛び去ってしまった。
一方、輸送機の内部では、軍人と科学者の集団が話し合っていた。テーブルには、B国の地図が広げられている。
「これで、あとは待つだけか」
「はい。数日で国全体に感染症が蔓延するでしょう。特効薬を製造できないB国の両勢力は、我が国が提案した停戦協定を飲まざるをえないはずです」
「民間人に被害は出ないのだな」
「支援物資に偽装した弱毒性ワクチンに感染して、彼らは耐性を得ています。B国の科学力では、この感染症の出どころがどこなのか、特定できないでしょうね」
数週間が経過したB国では、もう戦う者はいなくなっていた。
しかし、病院は感染症に苦しむ軍人たちであふれ、路上でのたうち回る者も少なくなかった。
民間人たちは停戦の報せに一度は歓喜したものの、その惨状には言葉を失うしかなかった。
「やっぱりあれは、悪魔からのギフトだったんだ」
誰かが、そんなことを口にした。
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