第11話【セレスフィア視点】白亜の宮と金色の蜘蛛の巣
王城の正門前。グリフォンがその巨体を地に降ろした瞬間、周囲の喧騒が嘘のように静まり返り、畏怖と驚愕に満ちた視線が、私たちに突き刺さった。
門を固める近衛騎士たちの動揺、遠巻きに見守る王都の民衆のどよめき。その全てが、私の狙い通りであった。
私たちは、賓客として、王城内にある白亜宮の一室に通された。
目も眩むような豪奢な調度品、窓から見える手入れの行き届いた庭園。だが、これは歓迎ではない。金で彩られた、美しい鳥かごだ。私たちの行動を完全に監視下に置くための。
「セレスフィア様、ここは敵地の真っ只中です」
カシウスが、部屋の隅々まで警戒を怠らず、低い声で囁いた。
「ええ。ですが、今はこうするしかなかった。この王城こそが、今の私たちにとって、最も安全で、最も危険な場所なのです」
私たちは、あまりに無力だ。だからこそ、神獣という圧倒的な奇跡を白日の下に晒し、誰にも簡単には手出しができない状況を作り出す必要があった。
クッションの山で無邪気に眠るポヨン様を見つめる。この聖獣とグリフォンの存在が、私たちの唯一にして最大の切り札だ。
その時、扉が静かにノックされ、侍従が恭しく告げた。
「リンドヴルムご令嬢。第二王子リチャード殿下が、ご挨拶にとお見えです」
来た。
蜘蛛の巣の主の一人が、早くも姿を現した。
「お通しして」
私は、覚悟を決めた。私はもう、ただ守られるだけの駒ではない。
この小さく温かい奇跡と共に、この盤上そのものをひっくり返してみせる。




