2.
ローンバート大陸歴三千四百六年
「わたしは、わたしはなにもしておらん。これは、冤罪だ。陛下、わがモーティマー家が王家を支え続けてきたことはだれもが知っています。わたしも、わたしも陛下を支え続けてまいりました。それが、それがこの仕打ちなのですか?」
「だまれっ、この裏切者めがっ! 余ばかりか、余の家族まで害そうとしおって。首を切り落とすだけでは飽き足らぬ。首は朽ち果てるまで門前にさらし、胴体は野良犬どもにくれてやる。よいか、みなの者っ! 余を裏切る者の末路をよく目に焼き付けておけ」
「せめて家族だけでも、家族だけでも……」
「生かすと思うか? 家族も同様だ。さっさと処刑しろ」
「陛下っ、これほど言ってもわからぬのかっ! いいだろう。それならば、わがモーティマー家の最強の呪いの術をかけてやろう。おまえだけではない。現存する王家すべてが死に絶える術だ。わが一族の無念、思い知るがいい」
「さっさと処刑せぬかっ! グハッ……」
「陛下っ」
「苦しめ、もがけ。痛みで錯乱し、憤死せよ」
処刑場が設えられている大広場内は、大混乱している。
わたしは、それを見、聞いた。
養父であり命の恩人であるアラン・ラザフォードの胸の中で。