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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
4章

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第98話 再戦


 本日ものんびり遊んで、夜になったら飛行開始!

 という予定だったのだが。


「なんか、それなりに人通りあるねぇ~」


「だぁな、あれか? 訓練都市みたいな所の近くだから、行き来する人が多いというか」


「というより、単純に前の所より物流が盛んなんじゃないか? これでは夜になっても翼を使うのは難しいかもな」


「完全歩きになるってこと? あぁ……今からでも乗せてくれる馬車探さない?」


 なんて会話をしながら、暗くなってきた道をテクテクと歩いて行くと。

 何やらキャラバン? 的な団体がお休みしている。

 どうやらお酒まで嗜んでいるらしく、随分と陽気な声が聞こえてくるが。


「おや? おーい! 嬢ちゃん達! こんな時間に女の子だけで歩きかい? あぶねーぞー?」


 その内の一人が此方に気が付いたらしく、ブンブンと手を振って来た。

 絡まれたって感じでは無く、普通に声を掛けてきた感じ。

 周りの人達も何やら騒がしくなり。


「次の街までなら送ってやるぞー? おいお前等、荷物詰めろ詰めろ。四人乗れるスペース作ってやんねぇと」


 本来ならこの提案を断る奴は居ないって事なのか、早速準備し始める商人たち。

 いやまぁこの人達を警戒しないのかって話になって来る訳だが、見た目的には陽気なおっちゃん達と若い衆って感じだ。

 コレと言って嫌な感じはしないのだが……。


「どうする、クウリ」


「どうすっかぁ……確かにこのまま歩いてもかなり時間が掛かる上に、飛ぶならガチで深夜なんだよな」


「飛べるならクウリにお願いしたいけど、歩きなら乗せてもらった方が……」


「でも金取られんじゃねぇー? タダ乗りはさせてくれないっしょ」


 という事で、その辺の事を聞いてみると。

 相手も相手で割とキッチリしているらしく、次の街までの距離と食事まで着けるのならいくらですって感じに提示してくれた。

 この辺りしっかりしているのなら、まぁ身の安全としては保障された様なものだろう。

 盗賊とか出ない限り。


「うっし、んじゃ今回は馬車移動してみますか。何事も経験経験」


「前回の街では稼げなかったから出費が……と言いたい所だが、特にこの程度なら問題ないな」


「馬車の旅かぁ~なんかホントソレっぽいよねぇ。しかも何か、クッションまで準備してくれてるし。快適になる予感」


「俺は歩きでも良いけど。道中イズのご飯が無くなるのはちょっとなぁ~」


 何てことを言いながら、彼等に金銭を支払い馬車に乗せて貰えば、なんとすぐさま出発するとの事。

 ちょっと休憩して馬を休ませていただけで、今から野営するという訳ではないらしい。

 まぁ人数も居るし、交代で御者をすれば良いだけなのか。

 しかも物資が詰まっていると傍目に分かるキャラバンなのだ、むしろ野営の方が危ないのかもしれない。

 などと考えつつ、しばらくガタゴトと馬車に揺られていれば。


「停止ー! 停止ー!」


 前方から大きな声が上がり、急停止する馬車の群れ。

 何やら周囲の雰囲気が慌ただしくなり、護衛と思われる鎧を着た人達も忙しく前方に向かって走っていく訳だが……魔獣でも出たのか?

 しかしながら混乱に陥ったりはしていない御様子。

 はてと首を傾げながら、馬車の幌の外に顔を覗かせてみれば。


「は、ハハハ……遠いけど、あの派手で真っ赤なドレスは見間違えねぇわな」


 思わず頬が引きつったのが分かった。

 また来るみたいな事を言っていたらしいので、いつかは接敵するのだろうと警戒していたのだが。

 まさかこんなに早く現れるとは。


「行こう、クウリ。相手の目的なんて分かり切っている」


「だね、周りに被害が出る前に俺達で対処しよう」


 イズとダイラがすぐさま馬車を飛び降り、彼女に向かって歩み出した。

 いつもこういう事になるとビビっていたダイラだった筈なのに、今回ばかりは完全に覚悟が決まっている御様子。

 そして、最後の一人はというと。


「絶対倒す」


 ガルルッと唸る勢いで相手を睨み、二人の後に続いて荷台から飛び降りて行った。


「トトン、落ち着け」


「でも」


「分かってる、だが冷静になれ。あんまり感情的になると、変な所でミスるぞ」


「……了解、でも今回は俺が前に出るからね」


 と言う事で、俺達も先頭集団に向けて歩みを進めた。

 キャラバンの護衛達は相手に向かって武器を構えているが、どうやらまだ戦闘は始まっていないらしい。

 デカい長剣掴んだ女が馬車を止めているだけ、だからこそ警戒しながらも立ち退く様に説得している御様子。

 が、しかし。


「……来た、ね?」


「こっちとしちゃ、もう二度と顔も合わせたくねぇんだけどな」


 俺達の姿が見えた途端、真っ赤なドレスの魔女様は剣を構えた。

 それに対して、コチラは掌を向け制止を掛けてから。


「待った、まずは馬車を通すのが先だ。この人達は関係ない、俺達だけ残ればソレで良いだろ?」


「お優しいのね?」


「俺達はお前みたいに狂暴じゃないんでね、無関係な誰かを巻き込んだりしないさ」


「人を狂犬みたいに言わないでくれるかしら」


 少々不満気な表情を浮かべた魔女は、スッと剣を引いてから道を開けるかのように脇に逸れる。

 周りの人たちに関しては、何が何やらって顔を浮かべているが。


「悪いね、俺等の客だから。皆さんは先に行っちゃって下さいな」


「いや、でも嬢ちゃん達……こんな所に女の子だけ置いて行くって訳にも……それに相手さんはいったい何なんだ? どう見ても味方って雰囲気じゃねぇよな?」


 最初に俺達に声を掛けてくれたおっちゃんが、非常に心配そうな瞳を此方に向ける。

 更には、護衛の皆様もどうしたものかと視線を彷徨わせているが。


「多分、聞かない方が良いよ。それからもう一個ゴメン、出来れば早く行っちゃって。ここに残られても……正直、邪魔になる。可能な限り早めに、更には距離を空けてくれると嬉しいかな」


 それだけ言ってから、アクセサリーを除いた本気装備に変更してみれば。

 周囲からは「おぉっ」という声が上がり。


「角と羽……今回は無いの?」


「騒ぎになるのは御免でね、皆が行ったら本気で戦ってやるよ」


「そう、なら早くして」


 一応待ってくれるつもりなのか、剣を地面に突き立て、ソレに寄りかかる様にして背中を預けている魔女。

 ハッ、あんな雑な剣の扱い方をしているのに絵になる事で。


「あ、あの……嬢ちゃん達? 本当に残るのかい? こう言っちゃなんだが、正気の沙汰じゃねぇぞ?」


「大丈夫、これまでも四人だけで旅して来たんで。それに……ここに残ると、そこの魔女に斬られるか、俺達の攻撃に巻き込まれる。早く行っちゃって下さいな」


 未だ困惑気味皆様だったが、俺達の意思が変わらないと悟ったのか。

 徐々に馬車を動かし始め、先程のおっちゃんは俺達に小さな麻袋を投げて寄越した。

 此方が支払った料金、どうやらそのまま返してくれるみたい。

 こういう所でも、商人ってのはキッチリしてるねぇ。

 なんて思いつつ見送っていれば、護衛の皆様からは。


「気を付けろよ……アイツ、ただ者じゃない。本当に大丈夫か? 俺達も残った方が……」


「いえ、行っちゃって下さい。そっちの仕事は、キャラバンの護衛でしょ? なら、きっちりこなさないと」


「……すまない、恩に着る」


 それだけ言って、全員が街道の先へと消えて行った。

 さて、それじゃ始めますか。

 と言う事で、アクセサリーを含めた完全装備を整えてみると。


「やっと、終わった?」


「まさか本当に待ってくれるとはね。正直、意外だよ」


「何度も言うけど狂犬扱いしないで。私が斬るのは、私に牙を剥いて来た相手だけよ」


「ハッ! 正当防衛ですってか? なら何で、前の街の兵士を斬った」


 そんな言葉を投げ掛けてみれば、相手は非常に大きなため息を溢し。

 どうでも良いと言わんばかりの呆れた瞳を此方に向けて来た。


「襲って来た馬鹿を斬った、それを見ていた衛兵が私を敵視した。結果此方に挑んで来た、斬った。その後あの街では指名手配、私を見る度に皆剣を抜く。ホラ、言ったとおりでしょ?」


「あっそ……剣を振る前に、そのお口を使えって言いたくなるな」


「出会って早々、私のお腹に穴を空けた人には言われたくない」


 どうやら俺達も、彼女の中では先制攻撃を仕掛けた相手って判定になっている様だ。

 ま、確かに初手プラズマレイをぶち込んだのは事実だけど。


「じゃぁ、始めましょう?」


「全く嫌になるね、だが……前回ほど楽に勝てるとか思ってんじゃねぇぞ?」


「思ってないし、私は勝ってもいない。だからこそ……全力で行く」


 そう言ってから、とんでもない速度で突っ込んで来た魔女に対し。

 俺達の間に飛び込んで来た小さい影。

 ソイツは相手の攻撃をいとも簡単に弾き飛ばしてから。


「絶対、もう通さない」


 鋭い眼光を放つトトンが、相手に張り付くようにして立ち回り始めるのであった。

 さぁ、戦闘開始だ。


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