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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
4章

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第92話 サテライト・レイ


 焦るな、たまたまかもしれない。

 何より子供の言う事だ、もしかしたら似たような名前と何か勘違いしている可能性だってある。

 そんな事を考えながら、子供達と別れて教会に戻った俺に対し。


「シスタークウリ、一時間だけ休憩と言った筈ですが?」


 シスターオーキットが、物凄く怖い顔を此方に向けながら待っていた。

 とは言え、今はいつも通りのテンションに戻る気にもなれず。


「なぁシスター……サテライト・レイって聞いた事ある?」


「何ですか? 藪から棒に。さてらいと……?」


「サテライト・レイ。別名月光ノ雷」


「んん?」


 此方にも同じような言葉があったりするんじゃないかと思って、物知りなシスターに聞いてみた訳だが。

 どうやら外れか? 彼女は不思議そうな顔をしながら首を傾げてしまった。

 やっぱり手掛かりとしては、あの少年だけか?

 でも何故あの子がその名前を知っていた? 本当に何かしらの影響を受けて、俺に“伝える”為に何者かの魔法が影響したとか?

 つっても、俺は“こっち側”の魔法に詳しくない。

 だからこそ、考えるだけ無駄の様にも思えるが……。


「シスター、聖魔法で誰かの夢に登場したり、何かを伝えたりする魔法ってあるの? さっきの子の夢に、何か変な言伝するヤツが出て来たんだってさ」


「お説教だと思っていましたが……まさか貴女自ら授業に切り替えるとは、正直驚きです。まぁ良いでしょう。相手の夢に侵入する、または何かしら伝える様な夢を見せる。ソレは本来夢魔の所業です、それを模した魔法ならありますが。どちらかと言えば、闇魔法使いの貴女の方が詳しいのではないですか?」


「いや、俺が使えるスキルにそういう物はないんだよね……ゲームスキルだから、夢とか関係ないし。やっぱりスキルツリーにも存在しない魔法だってある……俺が知らないだけって可能性もあるが……だとすると、今度は闇魔法関係を調べた方が早いのか?」


 ブツブツと呟きながら考え込んでみれば。

 シスターオーキットは大きなため息を溢してから。


「よく分からない単語が並んでいますが、もう月の出る時間となりました。まずはイシュランの所へ行ってもらえますか? それから……なんだか曖昧でしたが、彼の方も誰かに何か伝えないといけない事がある。とかなんとか。目覚めた後では、よく覚えていないと言っていたので、正直呪いの影響かと警戒したんですが……不調は出ていないんですよ。もしかしたら、先程の貴女の話と関係があるのでしょうか?」


「っ!? 本当にイシュランさんがそう言っていたんですか!?」


「え、えぇ……つい最近ですが、朝起きると“言わなければいけない事があったのに”、と。無意識に呟いている様でした」


 同じだ、あの子供と。

 だったらやはり、何かしらの影響が出ていると考えて良いのかもしれない。

 しかも俺がリジェネを行使して大きく影響した人物にのみ、この現象が発生している。

 だとすれば、イシュランさんからも何かしら情報が貰える可能性が高い。

 とはいえ……その情報を俺に伝えようとしている相手が分からない、というのは些か不安を覚えるが。


 ※※※


「おや、シスタークウリ。今日は随分と早い時間に来ましたね。オーキットの授業はもう良いのかい?」


 そのままの勢いで彼の部屋に押しかけてみれば、どうやらまだ書類仕事の途中だったらしい。

 優し気な微笑みを溢しながら、一旦手を止めて俺を招き入れてくれたイシュランさん。

 が、しかし。

 此方としては、今すぐにでも聞いておかなければいかない事があるので。


「サテライト・レイ。または、月光ノ雷。この言葉に、聞き覚えはありますか?」


「……えぇと、ちょっと待ってくれ? わからない、しかし妙に引っかかる」


 途端に苦しそうに顔を顰めた彼は、額を押さえて椅子の背もたれに体重を預け始めた。

 もしかしてまた体調が悪くなったのだろうか?

 そんな事を思って駆け寄った俺に対して、彼は掌を向けてから。


「すまない、シスタークウリ。いつもの月の魔法を使ってくれるかい? 動悸が凄い……こんな事、今まで無かったのに」


「す、すぐに!」


 と言う事で、いつも通りリジェネを行使していく。

 とは言っても、俺は鼻歌を歌っているだけなんだが。

 それと同時に月光は強くなり、窓から彼に降り注ぐ光は強くなる。

 そして、彼が落ち着いて来た頃。

 タオルで汗を拭ってから。


「先に一つ謝っておこう、シスタークウリ。私は、先程君が言った言葉の意味を理解出来ていない」


「そう……ですか」


 もしかしたら、そう思ったのだが。

 やはり此方が都合よく考えただけで、全く関係なかったと言う事なのだろうか。

 もしも“あのスキル”が使用可能となっているのなら、イズの言っていた通り“個人の強化”に間違いなく繋がっていたのだが……。


「でもね、君の魔法を受けている間に随分と落ち着いて、ちゃんと思い出した事がある。とても信じて貰えないかもしれないが……私はここの所ずっと、夢の中で誰かに言伝を預かっていたんだ。そして……伝えるべき相手が君だと仮定して、私が覚えている内容は」


 彼の真剣な表情に、思わず生唾を飲み込んだ。

 同じだ、あの少年と。

 間違い無く何かを掴んでいる。

 これ等のキーワードを揃えて、俺に何かをさせようとしている奴が居る。

 だからこそ、息を飲んだまま次の言葉を待っていれば。


「“もう、使える”だ。条件は全て揃ったと、そう言っていた気がする……すまないね、こんな曖昧な情報ばかりで。でも私にも何がなんだか……」


「ありがとうございますイシュランさん! ちょっと行って来ます!」


 それだけ言って彼の部屋を飛び出してみれば。

 部屋を出た瞬間にシスターオーキットと鉢合わせしてしまった。

 もしかして、俺の様子がおかしくて聞き耳を立てていたのだろうか?

 まぁ、そこは良いんだけど。


「シスターオーキット! もしかしたしら、俺ちょっと何日か研修休むかもしれません!」


「え? あ、え? まぁ恩もありますし、その日数は後日に持ち越しでも構いませんが……」


「ありがとうございます! 行って来まーす!」


「ま、待ちなさいシスタークウリ! 貴女この時間から何処へ行くというのですか!? もう夜ですよー!?」


 シスターの声を置き去りにしたまま、教会から走り出し。

 街中を駆け抜け、そのまま街の門も通過していく。

 本来なら仲間を集めたかった所だが、未だ研修に行っている為全員集めるのは不可能。

 だったら、今の内に俺だけで検証しておかなくては。

 何たって……“こちら側の魔法”を学んで、新しい“スキル”を手にしてしまったかもしれないのだから。


「ク、クククッ。マジかよ、まさかこっちに来て新しいスキルが見つかるとはな」


 歪んだ口元を隠しもせず、人気が無くなってた所で装備を変更。

 翼の効果を使って上空に旅立ち、どんどんと加速して本当に人気のない大きな湖まで飛んで来た。

 周囲の気配を探ってみても、人らしきモノは確認出来ず。

 試すなら、ココしかないだろう。


「“覚醒”」


 いくらやり込んでも、どうしても習得出来なかったスキル。

 しかも奥義の一つ。

 まさかとは思うが、スキルツリーの逆側に位置する聖魔法の習得が条件だったとか?

 更にリジェネの効果を考えると、結構な上位スキルが必要だった可能性が高い。

 だとすると、発見するなんてゲーム内では不可能。

 この奥義を手に入れる為に、他のスキルを皆犠牲にする勢いじゃ無ければ習得なんか出来る訳がない。

 それくらいにかけ離れた場所にある聖魔法と、闇魔法。

 だがしかし今の俺にはその両方があり、妙に強力なリジェネだって使えるようになったのだ。

 コレが条件だったのか、それとも他の何かだったのかは分からないが。

 それでも、試してみる価値はある。

 少年は口にしたのだ、“サテライト・レイ”の名を。

 イシュランさんは言ったのだ、“もう、使える”と。

 だったら、試してみたくなるのが攻撃術師ってもんで。


「見せてくれよ、俺が習得する事が最後まで叶わなかった、闇魔法最高位の“奥義”。夜の間、しかも月の光が無いと発動できないスキルって事だけは確認出来てたんだ。だからこそ、闇魔法と聖魔法なんだろ? その奥義を、俺に見せてくれ」


 本気の完全装備のまま、空中で杖を上空に振り上げ。

 そして、眼下の泉を睨んだ。

 今なら分かる、月の光を浴びていれば……身体におかしな力が巡っていくのが。

 だからこそ、出来る筈だ。

 今の俺なら、“きっかけ”を貰った俺なら。

 この奥義を放てるはずだ。


「“サテライト・レイ”! ブチかませぇぇ!」


 おかしな術式が発動しているのが分かる。

 今までに感じた事のない感覚が全身を包み込み、まるで月光に囚われるみたいに。

 というか、光が絡み付いて来たかの様に身体が重い。

 それでも、杖を振り抜いて目標地点に切っ先を向けた。

 結果。


「……へ?」


 カッ! と周囲が明るくなった。

 本当に、昼間みたいに。

 その後その光は収束し、俺が杖を向けた先に向かって……デウスマキナよりも太いレーザーとして照射された。

 俺の杖からじゃない。間違いなく、月から。

 つまり上空から降り注ぐ形になった訳だが……そのレーザーは広い泉の水をぶち抜いただけには収まらず。


「あ、あ、えーっと……」


 水柱が上がる暇もなく、全ての水分を蒸発させ霧を作り。

 更には、ソレでも収まらずに大地に巨大なクレーターを作っていく。

 待って、待って!?

 このスキルいつ終わるの!?


「停止! 停止ー!」


 慌ててスキルを止めてみれば、やがて月の光は収まり。

 そこにあった筈の泉を、地図から消しただけに収まった。

 その代わり、上空から見ると小さい隕石でも落ちたの? って程のクレーターが出来てしまったが。

 そして、周囲には泉の水が蒸発した事により発生した深い霧。


「……」


 コレ、現実で使って良いスキル?

 思わず頬をヒクヒクさせながら、そのまま急いで街へと逃げ帰るのであった。

 余談だが……適性スキルの方向性を選び、その後発生する基礎スキルは25種類程度から3つを選ぶ。

 勿論非適性のスキルツリーに手を出す事も可能。

 だが基本的に適正外のスキルを取れば能力値が下がる、つまり論外。

 後に派生するスキルからA~Z程度の選択肢が生れ、次の段階で被る事もあるが方向性によって能力値が変わって来るというのがこのゲーム。

 つまり、先に進むごとに植物の根の様に派生していく。

 ここまで言えば、どうしてこのスキルが習得し辛いのか理解して頂けるだろう。

 こんなの、誰が取得できるんだよ。

 ふざけてんのか、運営。

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