第86話 今後の方針
食事を終えた後、そのまま部屋に戻り……やはり、リジェネお披露目になってしまった訳だが。
結果、トトンが寝ました。
「リジェネ……確かにリジェネかもしれないが」
「なんか、演出が物凄くない?」
以前シスターから、今度は目を開けて謳ってみろって言われたけど。
いやうん、ダイラの言う通り演出過多だわコレは。
歌い始めはごく普通だったんだけど、効果発動したのかな? って辺りからめっちゃ月光差し込んでますねって状態に陥ったのだ。
そりゃもう、ビカァァ! って感じに。
当然この一か所だけ光が照射されている訳では無いので、多分俺に当たる付近の光だけ可視化されたって事なんだろうが。
なに、コレ。
「現状だとあまり効果が実感できないが……負傷もしていないし、戦闘中ではないからか?」
「すげぇーって演出と、最近の疲労感は抜けたって感じだけどね。あと、妙に落ち着く。流石は“寝落ちの詩”、これ作業中に口ずさむと本気で眠くなるんだよね……」
と言う事で、良く分からないという検証結果に。
恥を忍んで鼻歌謳ったのに、損した気分だ。
「あ、そうだ。お前等今後はどうするんだ? この後の一ヶ月研修も受けるの?」
気恥ずかしさを紛らわせる形で、二人に問いかけてみると。
少々悩んだ様子を見せるダイラとイズ。
そして。
「正直、俺は受けたいと思う。しかし他の所であまり実りが無い、という状況なら辞退しよう。俺達の主目的は、四人で生き残る事だからな。俺だけ我儘を言う訳にもいかない」
「うーん……俺ももう少し調べたいかなぁとは思うんだけど、正直一ヶ月消費して成果が上げられる自信がない。それから……トトンが、結構飽きて来ちゃっててね。基礎さえ覚えちゃえば、自分達でも検証出来るんじゃないかってブータレてたよ」
と言う事らしい。
正直イズが現地の剣術を学ぶって言うのは、かなりのメリットなんだよな。
以前に出会った魔女と今後戦闘になった場合、対応策になりえる訳だし。
でもダイラとトトンの方に関しては……どうなんだろうな?
ここから始まるのはごく普通の魔法授業、つまり手数を増やしたり他の魔法を覚えたりって可能性が非常に高い。
ダイラの言う通り、使い方さえ分かれば……正直ゲーム知識があるので、色々なスキルを独学で試す方が早いのかもしれない。
あとはトトン、こっちに関しては授業に対しての飽きが来ていると。
これは一番不味い、ゲーマーにとって飽きは敵だ。
そして何より、飽きてしまえば他の事にも無気力になりかねない。
「俺の方は……正直、順当に回復スキルを教わろうとしてもあんまり意味がないんだよな、ダイラが居る訳だし。だったらこのリジェネを調べたい所だけど……これに関しては、普通の授業を受けるだけじゃ試す機会も無いだろうし」
困ったねこりゃ。
調べたい事はあっても、あんまり効果的な授業が受けられそうにない。
それこそあのシスターに直接指導を受けながら、他とは別の授業が受けられるというのなら……もう少し実りはあるのかもしれないが。
というか、ヒールは使えないのにこっちは使えるってなると、やはりスキルツリーの様には考えない方が良いのだろう。
それまでの段階とか全部すっ飛ばして、こんな訳の分からない魔法が使える様になってしまったのだから。
俺の適性……というか才能がリジェネ一点張りだったらどうしましょ。
「あっ、そうだ。皆、その判断もう少し待ってもらっても良いか? んでダイラ、ちと協力して欲しい事があるんだけど」
「え? うん、別に良いけど。どうしたの?」
「イズも、もう少し待ってもらって良いか? ちょっとした繋がりで発生したイベント……って言ったら悪いけど。そっちの様子を見てから、全体の予定を調整したい。時間が出来るなら、イズは次の一ヶ月訓練に参加した方が良いと思うし」
「そう言ってくれるのはありがたいが……今度はどうした?」
そんな訳で、俺が出会ったシスターオーキットのお話を情報共有するのであった。
旦那さんの呪いを調べる&解呪する為に。
※※※
翌日。
「シスターオーキット、来ましたよ~」
日が落ちた頃に、仲間達を連れた状態で教会へと足を運んでみれば。
相手は緩い笑みを溢しながら、俺達を迎え入れてくれた。
「いらっしゃい、シスタークウリ。次の研修の申し込み……という雰囲気ではありませんね。例の件でよろしいですか?」
それだけ言って、シスターは俺の仲間達を見回してから。
普段の鬼婆とは思えない程、優しい笑みを溢して頭を下げて来た。
「皆様、初めまして。私はこの教会で訓練生の指導をしております、オーキットと申します。シスタークウリの教官でもありましたので、是非遠慮などせず気軽に接して頂ければと」
凄い、余所行きって感じの態度。
俺からすると、物凄く違和感があるのだが。
そして仲間達に関しても、やはり違和感はあったらしく。
「シ、シスタークウリ……プ、ププ」
「違和感が、凄いな」
「クウリが祈ってる所とか、全然想像出来ねぇ~。今までと真逆じゃん」
好き勝手言ってやがりましたとさ。
クソッ、コイツ等……俺だって似合ってない事くらい分かってるっつぅの!
などと拳をギリギリしていれば。
「シスタークウリ。こういう時は、関係者である貴方が皆様の紹介をするものですよ?」
「あ、はい。すみません、シスター。えっと前にもちょろっと話しましたけど、一応俺がリーダーやってます。まずタンクのトトン、この一番ちびっこいのです。見た目に反して、めっちゃ強いので」
「どーもー」
「んでアタッカーのイズ、キリッとした黒髪の方です。魔法剣士なんで、幅広い戦術に対応可能な万能型です」
「初めまして、シスター。一週間、クウリがお世話になりました」
オカンか、って思ったけどオカンだった。
イズだからね。
「んで最後に、こっちの“性女”と呼ばれる神官。一応他の街で現場最高位に認められてる聖職者の、ダイラです。前に言ってた凄腕ヒーラーってのがコイツですね」
「ねぇクウリ? 今絶対“聖女”の漢字が違う言い回しだったよね? 勘違いじゃないよね? 今は普通の服着てるから、止めてね?」
若干のジト目を向けられつつも、仲間達の紹介を終えてみれば。
シスターはクスクスと笑いながら、俺に瞳を向けて来る。
「良い仲間に恵まれたようですね、シスタークウリ。貴女は少々お転婆ですから、悪い仲間でも連れていたらどうしようかと思ったのですが……杞憂だったようです」
「うっ! いや、まぁ確かに大人しい性格ではないですけど……普段から馬鹿ばっかりやってる訳じゃありませんって……」
なんかもう、シスターに対しては頭が上がらなくなってしまった。
大人になってから、あんなにはっきりと叱ってくれる人って居なかったので。
いつの間にか、こういう関係性になってしまった様だ。
とかやっていると。
「クウリが……ちゃんと言う事聞いてる!?」
「反発してないどころか、従順になってるよ!? 聖職者ってやっぱり凄い!」
「あの、シスター。お転婆というのは……コイツはいったい何をやらかしたのでしょうか? ご迷惑をお掛けして無ければ良いのですが……」
うっせぇうっせぇ!
もう挨拶はいいから仕事に移るんだよ!
なんて、反論してみたものの。
シスターは楽しそうな様子で、俺の悪行をバラし始めるのであった。
抑圧されていたからと言って、改めて聞くとやり過ぎたなぁ……やんちゃな高校生かよって、自分でも言いたくなって来た。




