第79話 シスタークウリ、爆誕
宿屋に付いた皆は、それはもうテンションが高くなってしまった。
魔術適性を見てもらった結果、それぞれ新しい可能性が見つかったので。
イズに関しては無属性、コレは間違いなく大当たりだと言って良いだろう。
更に無属性の魔術を習う場所は、結構な武闘家揃いだそうで。
マジで肉体派の訓練場らしく、本人は乗り気も乗り気。
これはもう仕事を受けてうんぬんかんぬん~ではなく、明日からそちらに掛かりきりになりそうな勢いだ。
そしてトトン、コッチは風の適性があるそうで。
昼間の神父も言っていたが、心の在り方で向いている才能も変わって来るって話がこれなのかな。
何があっても、何処に吹く風って性格のトトンらしいと言えばらしいのかもしれない。
コイツに関しては魔法学校的な所にしばらく通う事を勧められていた。
短期間でも講習は受けられるそうなので。
わぉ、ウチのパーティから学生さんが生まれてしまった。
元々学生だったって話だし、学校の続きだとでも思えば気は楽なのかもしれない。
最後のダイラに関しては、結構意外というか……地の属性持ちなんだとか。
地盤をしっかりしたいとか、そういう心配性な所が出たのだろうか?
まぁこれに関しても、やはり学園をお勧めされてしまい、トトンと一緒に魔法学校に行ってみるとの事。
「街に入った瞬間、見事に別行動だなぁ~」
なんて、気の抜けた声を上げてみれば。
ダイラに関しては困った表情を浮かべながら。
「俺達の目が無いからって、ド派手に暴れたりしないでね?」
「わぁってるって……しかも、俺が入る所が……アレだし」
思わず溜息を溢しながら、俺がお勧めされた施設の案内を目の前に持って来た。
教会……しかも、住み込み。
まずは一週間程お試し期間があり、その後本格的な聖魔法の勉強をするのだとか。
しかもその間は、シスターとしての教えを頂戴するとかなんとか。
嘘だろぉ……勘弁してくれよぉ。
俺に聖職者とか無理だよぉ……。
「ある意味楽しみだね、クウリのシスター姿」
「まさかクウリが聖職者とはねぇ~、帰って来たら見せてねー? シスターコス」
「うっさいお前等、あとコスと言うな。今から恥ずかしいわ」
二人に呆れた声を返してから、ベッドに飛び込んで悶えた。
俺の趣味と真逆なんだよなぁ、ホント。
我儘言うなら、俺も他の魔法適性の方が良かった。
それだったら普通に学校行けば良いし、魔法の基礎の基礎から教わるチャンスだったかもしれない。
だというのに……よりによって聖属性って。
「まぁそう気落ちしなくても良いじゃないか。俺の方もとりあえずお試しで参加してくるから、クウリもその期間だけでも頑張れ」
「とかなんとか言って、イズが一番嬉しそうなんだけどな」
「そ、そんな事はっ! ない……ぞ?」
もうね、さっきからソワソワしっぱなしなのよ。
無属性を覚えられるのもそうだが、コッチの世界で色んな人間と試合出来るのが楽しみで仕方ないみたいだ。
元々剣を習っていたみたいだしね、こっちに来てからも戦闘には一番前向きだったイズらしいと言えばそうなのだが。
「はぁぁ……ま、とりあえず。一旦金稼ぎは後回しにして、お勉強しますかねぇ~」
「やる気ねー」
「クウリー? お金払って教えを乞うんだから、真面目にやって来てね?」
そんなお言葉を貰いながらも、その日の内に申請書を作って行くのであった。
あーいつから始まるんだろ、気が重い。
聖属性魔法の頂点がパーティに居る上に、俺がソレを覚えて何かの足しになるのか? っていうのも今の所思いつかない。
しかも教会に住み込みってのが……一番気が重いのだ。
前回の街でも、あんまり良い雰囲気なかったし。
何より祈ったり清楚な暮らしをしたり、そういう事するんでしょう?
自信無いよぉぉ……。
※※※
時間とは早いもので。
申請書を出したら、一週間程度でとんとん拍子に事態が動いた。
各々準備する物などもあったが、“お試し”の期間に関しては制服の貸し出しなども行っているらしく。
俺は迷うことなく借りる事を選んだ。
自分専用の修道服とか、正直いらないので。
「おぉ~似合ってるね、クウリ。シスターと言えば金髪! みたいなこだわりがあったんだけど、銀髪もなかなか……」
「新コス! 新コス!」
「うるせぇやい」
ダイラは妙に此方を見て来るし、トトンはテンションが高い。
それこそお前等は学生服着なくて良いのかよと言いたい所だが、お試し期間は服装自由なんだそうで。
トトンはまだしも、もう片方はそれなりの年齢の見た目をしているので、それこそコスプレって感じになりそうだったのに。
結局からかわれるのは俺だけになってしまった。
最後の一人、イズに関しては。
「なんか、そっちはいつも通りって感じだな」
「まぁ、軍服だからな。訓練生の制服だそうだ」
あんまり普段と変わらない雰囲気のイズ、相変わらずピシッとしておられる。
何かズルい、俺もそっちが良い。
「とりあえず各々一週間、お試し期間が終わったらこの宿に集合なぁー。トトンとダイラは毎回ココに帰って来るけど、俺とイズは泊まり込みだからなぁ。嫌になって出戻りして、宿で暇な時間送る様な事になるなよー?」
「お前が一番不安なんだけどな」
とかなんとか、イズに言われてしまったが。
うん、そうだよね。
俺自身も、一番自信ない。
「まぁ、何はともあれ一週間後に情報共有しようか。魔法の基礎知識なんかも習って来るから、クウリの役にも立つでしょ」
「俺授業苦手ー」
「トトンも、頼むから頑張ってくれ」
そんな訳で、新しい街で新しい試みを開始した俺達。
各々指定の場所へと足を向けて歩み出したのだが……あぁぁぁ、自信ねぇよぉ。
シスターなんて、一番俺の柄じゃないよぉぉ……。




