第65話 お酒を下さい、お願いします
「結構目立った筈だけど、割と扱いは普通だねぇ~」
「まぁ冒険者と教会は別組織だしな、その兼ね合いもあるのだろう。教会側が今裏で何かやっているのなら、これから何か起こるかもしれないが」
なんて、トトンとイズが会話している訳だが。
俺達は今、街の外の水門に来ていた。
本日はココの浄化と清掃、ついでに海から流れて来る魔物の掃討だそうで。
何度か失敗した経緯があるらしく、これ以上放置するとコレも兵士にお願いする事になるらしく。
そうならない為にと、俺達に白羽の矢が立ったという。
「あぁ、あそこの水門……そうか、まぁ対処出来そうになかったらすぐに報告するように」
街の外に出る時に、門番にもそんな事を言われてしまった程。
この街の冒険者攻撃職は、基本的に信頼がないらしい。
少ないからね、仕方ないね。
という訳で、さっさとダイラが仕事を進めていれば。
「うむ、例の如くなんか来たな」
水門の下、というか水の底から。
ポコポコと気泡が上がって来たのと同時に、敵意が向けられた。
来るんだねぇ、街の近くにも。
などと思いつつ、杖を構えて準備していれば。
「クウリ! なんか出て来たよ!? 早く早く!」
「わぁってるって。“シャドウバインド”」
とりあえず水から勢いよく出て来たソイツを捕らえてみれば。
わぉ、デカい。
ホホジロザメみたいなのが出て来たではないか。
キラーシャーク。
ま、ネトゲモンスターあるあるの雑な設定のエネミーだ。
「あーなるほど。ココの掃除が上手く行かない理由って、コイツが原因か。まぁ食われるよな」
「言ってる場合!?」
などと会話をしている内にバインドは解け、そのまま水の中にリリースしてしまいそうになったが。
「トトン、エアハイク設置。イズは三枚おろしにしてやれ」
「「了解」」
トトンが使った無属性魔法、空中に足場を作るという“エアハイク”。
それが無属性で良いのかよって言いたくなるが、まぁゲームスキルだからね。
機動力命の無属性だからこその優遇措置、という所なのだろう。
でも凄いのは、パーティメンバーなら使用者以外でも足場として使える事。
と言う事でそこに足を付けたイズが双剣を振るい、サメは落下する前に捌かれてしまった。
んでもって。
「ダイラ、プロテクションで落下阻止。持ち帰るぞー」
「んもぉぉ!」
空中に張られたプロテクションにより、三枚おろしのサメが停止する。
それらをイズがインベントリに納め、普通に帰って来た。
「おっつ」
「あぁ、お疲れ」
なんか、アレだね。
この街に来てからは意外と普通に仕事出来てるね俺達。
そんな訳で、とっとと掃除の仕事を終えて帰ろうとしたわけだが。
「んーなんだろ。もうちょっと居そうな気がするんだよねぇ……さっきサメの肉片やら内臓が落ちた時、下が騒がしくなったし」
というトトンの一言により、もうしばらく様子を見る事になったのであった。
釣りをしてみたり、餌を撒いて大物が来ないか様子を見たり。
「なんか、平和だな」
「デカイヤツが迫って来てる状況で言う台詞かなぁ!?」
魚人の足が生えた秋刀魚みたいな、それなりにデカイ獲物が陸に上がった時は驚いたが。
礼の如くダイラがヒットし、イズが釣り上げた。
まぁうん、居たねって感じ。
海のモンスターって結構見た目おかしいのが発生するので、見ていると疲れるのだが。
とりあえずプラズマレイを叩き込み戦闘終了。
ちょっと焼き魚になってしまったが、まぁ良いだろう。
そんな訳で、日が暮れるまで魚類の相手をする事になってしまった。
しかしながら、脅威は無し。
非常に、平和な冒険者暮らしだった。
※※※
「この街の良い所、サウナ」
「あっちぃぃ……」
早くもバテ始めたトトンを横目に、本日も宿に設置されたサウナにお邪魔した。
いやぁ、うん。
こういう施設は、本当に良い。
心が安らぐよ。
「サウナがあるなら、酒を飲んでも体からアルコール排出出来るのでは?」
「駄目だからね? クウリ。そもそもサウナも温泉も、お酒飲んだら使うなって書いてあるでしょう? 絶対ダメ。死ぬよ?」
この街に来てから、ダイラが強くなった気がする。
主に俺に対しての当たりが。
駄目かぁ……早い所身体を慣らして、普通にお酒を楽しみたいんだけども。
「ちょろっと、少しだけ風呂上りに楽しむとかは……」
「本当に少しなら良いよ? 多分クウリは全然満足出来ない程度だけど。何度でも言うけど、そのアバターかなり弱いからね? 俺とイズに関しては普通に飲めたって事は、多分体質だと思う」
わー、マジで面倒臭いこの身体。
ゲーム内であんまりお酒系アイテム使わなかった影響かなぁとか思ってたけど、イズとダイラは確かに大丈夫だもんな。
だとしたら、俺のアバターが極端に酒に弱いって事なのだろう。
“向こう側”で言ったら、ほ〇酔いの一缶を小さいグラスに何度も分けて飲んだのに、泥酔するレベル。
喉の奥に指突っ込まれたからとは言え、吐いたからね。
派手に酔っぱらった上に、痙攣してたらしいからね。
「イズ……甘酒とか……」
「酒粕というアイテムは無かったからな……作るとしたら自分達でどうにかするしかない」
はい、終了。
駄目かぁ、駄目なのかぁ。
コッチの世界では、俺は酒が飲めないまま生活を送るしかないのか?
しかしながら、社会人時代のストレス発散方法と言えば間違いなく酒だったし。
旨い物食った時とかはお酒欲しくなるし。
どうにか出来ないかなぁ……なんて、思っていれば。
「ゴメンもう無理……先に出るねぇ。汗かき過ぎて、何か疲れたよ……ご飯食べ行きたい……」
フラフラするトトンがサウナを後にしようとしている姿を見て、ふと思いついた。
この世界にだって、お酒が弱い人は居る筈だ。
だったら、そう言う人でも飲めるお酒を専門家に聞けば良いんじゃないか?
「風呂とサウナの後だけど……ちょっと外食して来ようかな」
ワクワクしながらトトンの後に続いてみると、ダイラからガシッと肩を掴まれ。
「ク ウ リ。外であの状況になったら、本当に取り返しの付かない事になるよ!?」
めっちゃ怒られた。
しかしながら、酒好きはもう一人居たらしく。
「俺が同行しよう。正直、その……クウリの雰囲気と、アバターの体質に苦しんでいる姿は、俺にとっても少々来る……。俺も酒が好きだからな、気持ちは分かるんだ」
「イズ! 前の事を覚えてるでしょう!?」
「しかし、まぁ……なんだ。物凄く弱い酒、というか慣らす酒は無いかと調べるのも良いかと思ってな。流石に甘酒を一から作るのは俺には無理だ、知識がない」
そんな会話をしている二人を見つめていれば、トトンが元気を取り戻したらしく。
「これからご飯行くの!? 行こう行こう! このまま外に出て涼しくなりたい!」
最後の一人も賛同してくれて、ダイラは苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべてから。
「俺が止めてって言ったら、すぐ飲酒止めるんだよ?」
「分かった!」
「絶対だからね? もう少し、とか。まだ平気、とか無しだからね?」
「了解だぜ!」
と言う事で、最後の一人も脱落した。
やったぜ、酒が飲める。
という訳で、意気揚々と俺達は風呂を上がり外出の準備を進めるのであった。
居酒屋、酒場、ビアガーデーン!
ウッキウキの状態でさっさと着替えを済ませてから、俺達は宿の外へと飛び出すのであった。




