第64話 テオドシウスの城壁
「くはははっ! 流石だなダイラ! なぁにやっても通る気がしない!」
「冗談言わないでよ! 既にいっぱいいっぱいだってば! クウリは派手好きな癖に“いやらしい”攻撃が多過ぎなんだよ!」
などと会話しつつ、攻防を繰り返した。
正面から攻撃を繰り出して、その隙に両サイドから攻撃魔法を放つ。
視線すら向けていないのに、ダイラはコレも平然と防いでみせた。
しかも、最小限の防壁で。
「カオスフィールド!」
「キャンセルさせてもらうよ! 解呪!」
「なんちって」
「ホラまた後ろから来る! とは言え解呪しないといけないの確かなんだから、あぁもう! 忙しい!」
互いに休む間もなくスキルを連発させ、魔法を相殺させる形で試合は進んで行った。
デカいスキルを使う時は、大抵囮。
本命は細かいスキルか、デバフなどの間接系魔法。
とはいえ両方に対処しないといけないのが辛い所だろう。
別方向から攻撃が来ると分かっていても、囮に使われたスキルを無視すれば一発で大ダメージなのだから。
「さっすが」
「あぁ、もう。疲れた」
やがて落ち着いた頃に、二人してMP完全回復ポーションを飲んだ。
ダイラに関しては、物凄く大きなため息を溢しているが。
そして、一休憩挟んだ所で。
「さて、やりますか」
「こっちとしては、既に疲れちゃったけどね……いいよ、やろっか。どうせこのままじゃ終わらないし、依頼未達成になっちゃう」
コチラは口元を吊り上げ、相手は再度溜息を溢した。
だがしかし、次の瞬間には二人揃って目尻を吊り上げてから。
「「“覚醒”!」」
準備は整ったとばかりに、両者ともオーバードライブ状態に変化する。
使用時間は一分程度。
つまり、あと一分で勝負を決める事になる。
とはいえ、殺し合う訳じゃない。
とにかく派手に、祭りを盛り上げれば良い訳だ。
そうすれば、俺達の元に大金が入って来る。
その達成条件の一つが……ダイラの“奥義”の使用。
「“テオドシウスの城壁”!」
「プラズマレイ! エージング! ドレイン!」
ダイラが要塞都市を作り上げた瞬間、此方からはレーザーが降り注ぎ、呪いの霧が周囲を巻き込む。
更には相手から魔力を奪いつつ、片腕を上空に振り上げて。
「“シューティングスター”」
「だぁぁぁ! 絶対やると思った! 一斉攻撃にしても、盛り過ぎだってば!」
振り上げた掌の先からは、紫色に光る球体が大量に出現し、多くの魔弾が曲線の軌跡を残しながら放たれた。
それらはダイラの作り上げた城に突撃し、大爆発を起こす。
シューティングスター。
言葉だけなら、闇魔法? とか思ってしまうだろうが。
このスキルに関しては、ほぼ全ての属性に変化可能な範囲殲滅魔法。
属性を変え、色を変え、効果を変えて。
流れる流星群の様に相手へと襲い掛かる。
そしてその威力は一般スキルにしては別格な上に、着弾後は爆発によりダメージまで発生するというおまけ付き。
つまりこのスキルさえ取得すれば、聖属性魔法だとしても範囲攻撃が出来るという。
ステータスに大きく影響される技でもあるので、攻撃力はプレイヤーによって様々だが。
好きなんだよねぇ、コレ。
プラズマレイと同じくらいに、気軽に使えるスキルだ。
ちょっとリキャストタイムは長いから、取り回しは悪いけど。
とにかく、こっから先はとにかく派手に、真正面から。
「ちょっとぉぉぉ!? そこら中で爆発してる! 完全に戦争だってば!」
「お前の奥義ならこんなの余裕だろう? ホレ、プラズマレイ追加」
「そのスキルのリキャストタイム絶対バグだってば! なんでそんな連射出来るの!? 闇魔法特化だからって、恩恵貰いすぎでしょう!?」
物凄くクレームを受けながら攻撃を続けてみる訳だが。
やはりダイラの“奥義”は抜けない。
どんな攻撃をしようと、絶対に防がれてしまうのだ。
間接的な攻撃、つまり呪いなんかもあっと言う間に解呪されてしまうというおまけ付き。
まぁ此方も奥義で攻めれば結果は違うのだろうが、今回は禁止だからな。
と言う事で、攻撃の手を休める事無くスキルを連発していると。
周囲の観客たちは、もはや無言。
だというのに、会場には耳を劈く程の爆音が響き渡っている。
レーザーが降り注ぎ、そこら中で爆発して、休む暇がない程の攻撃が降り注ぐ。
それでも一切攻撃を通さない光の要塞の出現に、誰しも目を奪われている様だった。
しかしながら……この奥義は、数十秒しか保たない為。
「はいっ! スキル終わり! 終了! もう攻撃しない! 覚醒時間残ってても、もう無理だからね! 終わりでーす! 終わり終わり! 試合しゅーりょー!」
“テオドシウスの城壁”が消滅し始める中、ダイラは叫びながら必死で訴えかけて来た。
そっかぁ、もう終わりかぁ……楽しかったのに。
などと思いつつ、発生寸前のスキルを停止させてから杖を下ろした。
そして相手に駆け寄って。
「ほい、MP回復ポーション」
「うぅ……ごめんねぇ。スキル終了後にMPが全部回収されるスキルって、結構使い辛いね……」
倒れそうになったダイラを支え、ポーションを飲ませるのであった。
でもまぁ、満足。
ゲームの時みたいにスキル連発出来たし、ダイラの防御力もちゃんとこの目で確認出来た。
と言う事で、ホクホク顔でダイラにポーションを与えていれば。
『こ、これは……どっちだぁ!? どっちが勝ったんだぁ!? 申し訳ありませんが、私には判断出来ません! 黒魔術師クウリの激し過ぎる攻撃に耐えきった、聖女ダイラ! この点だけを言えばダイラ氏の勝利なのですが、先程の大魔法直後に聖女は倒れ、黒魔術師に支えられながら治療を受けています!』
どうやら、非常に判断に困る戦闘結果にはなってしまったらしく。
司会者からは、困惑の声が上がって来た。
だけだったら、良かったのだが。
『しかしある意味、非常に美しい光景となっているのは確かです! 闇属性と聖属性を司る者達が手を取り合い、求めあっている! 闇夜を照らす月光の様な銀髪と、全てを照らす様な淡く鮮やかな金髪! それだけではありません! 害悪を全て弾き返す攻撃的な黒鎧に、他者に全てを晒すかのようなエッ……ではなく、自らを隠さない白装束! 対照的な二人が、今支え合っている! この光景に、わたくしは興奮を隠しきれません! 誰かこの光景を絵に! 金持ちは居ないか!? “写真”を撮れ! この光景は現代の芸術だ! 会場に飾ります、“魔道カメラ”をお持ちの方はすぐにでもシャッターを切る事をお勧めします! 買いますので!』
おい、待てやコラ。
急に何を言い出してるんだコイツ。
『早く! 早く撮りなさい! コレは非常に良い……それはもう今後二度と撮れない光景ですよ!? まさに闇と光。対照的なそれらが交じり合った瞬間です! 早く撮りなさい! 急げぇぇ!』
周囲から、バシャバシャとシャッターを切る音が聞こえて来る。
“こっちの世界”でもカメラがあるのかと驚愕してしまったが。
それ以上に、この環境に絶句してしまった。
「「と、撮るなぁぁぁぁ!」」
『おぉっと、流石はパーティメンバー。息はぴったりな御様子で』
「うるせぇ! この野郎!」
「恥ずかしいんで止めてもらって良いですか!?」
『良い! それぞれ性格が違う感じで責めてくるのが、凄く良い! 最高じゃないですか!』
暴走司会者は止まらないらしく、ダイラが動ける様になるまでシャッターの音は鳴りやむ事をしなかった。
マジで勘弁しろよ……撮るなら戦闘シーンを撮れよ。
などと思ったりもするが、後日。
この会場の入り口付近には、歴代の戦士たちの写真やら絵が飾られている様で。
その中の一枚に、俺がダイラを支えている写真が飾られる事になった。
別に良いんだけどさ、使用料も貰ったし。
でもさ、百合っぽい雰囲気を出している感じの説明文と、エフェクトはどうにかならなかったの?
やめろ、マジで。
そしてタイトルが『聖女と魔女、禁断の恋』ってなんだ。
怒るよ? マジで。




