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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
3章

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第63話 クウリVSダイラ


 そんな訳で、お祭り当日。

 そこら中で露店が出ている為、適当な食べ物を買って口に運びながら、件の会場へと足を運んでみれば。


『惜しいぃぃ! 五人目までは守り抜く事が叶いましたが、物理攻撃に対する防壁が甘かったようです! ですがこの成果は凄い! うら若き聖職者に、皆様拍手をお願い致します!』


 やけにデカい声を上げている司会者の声が響けば、周りの人々から大きな拍手が上がる。

 アレも魔道具……なのかな。

 司会者が喉に棒みたいなモノを当てて喋ると、マイクの様な効果を発揮している様だ。

 などと観察つつ俺達は“三人”で適当な席に座り、会場を眺めていると。


『さて次の挑戦者は……なんと、現代において“聖女”の称号を手にした聖職者! これは非常に楽しみです! なんとこの女性だけでも、対戦申し込みが三十件以上! いえ、未だに増え続けている様です! 物凄い人気だぁ! ご紹介しましょう、つい先日“聖女”に認められた聖職者……冒険者のダイラァァァ!』


 おっと、これは丁度良いタイミングで来たのかな?

 広い会場で、更にコロシアムを見下ろしている様な席だったので良く見える。

 会場の端から、オドオドしたダイラが姿を現したではないか。


「ダイラー! がんばれー!」


 イカ焼きを齧りながら叫ぶトトン。

 しかしながら観客の熱気の方が凄い。

 ワーワーと皆声を上げ、ちびっ子の声はかき消されてしまったが。


「どうみる? クウリ。お前が相手する前に、ダイラが敗れると思うか?」


 フライドポテトを摘まみつつ、イズがそんな声を上げて来るが。

 そうだなぁ……。


「俺等みたいな能力の奴等が居るのなら、可能性は十分あるだろうな。でもコレは試合だ、殺し殺されって事態にはならない。だったら、その確認って意味でも良い機会だと思ってる。でもまぁ、これまでの経験からすると……無理だろうなぁ。ダイラの防壁を抜くのは」


 何てことを話し合っている内にも、対戦者が姿を現し。

 試合開始の合図と共に攻撃を放ち始める。

 なにやら教会の偉い人らしく、御大層な紹介の後に連続で魔法を放っているが。


「ヒ、ヒィィ!」


 叫ぶダイラだったが、抜かれる心配はなし。

 属性を合わせたり、工夫しなくても問題無く防御出来ている様だ。

 しかしながら。


「あっ、やばっ!」


 相手の攻撃を弾いたその一発が、観客席の方に向かって跳弾してしまった。

 戦闘時此方の席には、また別の防御魔法が掛けられている。みたいな事は説明されていたのだが。

 ダイラ自身はテンパっていて聞いていなかったのか、それとも慌てて“反射的に”行動してしまっただけなのか。

 客席に向かってプロテクションを展開した。


「素晴らしいですな……鉄壁の防御だけではなく、他者さえ守る余裕がある。というより、全ての者を守るという、その心意気に感服いたします」


「あ、えと……そんな大したモノじゃ……癖、と言いますか」


 何やら会話を挟んでからは、相手の魔力が切れるまで攻撃を続けて終了。

 その間、ダイラの防壁は傷一つ残らない。

 これで魔法防御に関してはほぼ証明出来たと言って良いのだろう。

 あとは物理防御の披露と、“強者”の存在の有無。

 それらの検証に対し、この試合は非常に都合が良いものだ。

 なんて、思っていたのだが。

 そのままポンポンと試合は進んで行き。


『勝者、聖女ダイラァァァ! 素晴らしい戦績です! ここまで30程連続で戦闘を行っているというのに、息切れ一つしない! 保有魔力の底が見えません! とはいえ、流石に聖女様と言えど無理をさせられない。ここいらで無理やりにでも魔力補給を挟みましょう。スタッフー! 彼女の魔力回復ポーションを!』


 司会者が声を上げれば、給仕係がパタパタとダイラの元へ向かい。

 ポーションの入った瓶を渡しているのだが……。


「あ、あのっ! 自前のポーションを使いたいんですけど、でもコチラは頂いておきたいというか……それでも構いませんか?」


 ダイラが、そんな事を言い始めた。

 すると司会者は一瞬だけポカンとした表情を浮かべたが。


「おっとおっとぉ!? ここで用意されているポーションは上級も上級、それを補完しつつ自前の物を使うとなると……もしかして彼女は、これまでの試合でそこまで魔力を消費していないと言う事かぁ!? これは凄い事だ! あ、どうぞどうぞ聖女様。それは連戦報酬でもありますので、懐にお納め下さい」


「えと、すみません。ありがとうございます。あとで調べたがると思うんで……ウチのリーダーが」


 そんな会話をしつつ、ダイラがインベントリから取り出して使用しているのは間違いなくMP完全回復ポーション。

 あっちの方が絶対上級な上に高価なんだよなぁ。

 なんて、呆れた視線を向けていれば。


『さて、次の挑戦者はぁぁぁ! 黒魔術師、クウリィィィ! ……え、あれ? あ、はいはい。まだ本人が会場に来ていない? え、うそ。そんな事ある?』


 司会者がそんな事を言い始めた瞬間、ブッと飲み物を吹き出してしまった。

 更に会場はガヤガヤと困惑した雰囲気に包まれ、関係各所の皆様も困った様に周りを見渡している。

 やっべ、試合時間は聞いていたけど、予想よりずっと早く俺の出番が回って来てしまったらしい。


「はいはーい! ここでーす! ここに居まーす!」


 慌てて手と大声を上げてから、会場に向かって走って行った。

 とはいえ、見下ろす様な形のコロシアム。

 なので、壁を飛び越えて“浮遊”の魔法を使いながらフワッと戦闘域に降り立ってみれば。


「来たね、クウリ」


「おうよ、お待たせ。待った?」


「待ってない、というかむしろ帰って欲しい」


 二人してニッと口元を吊り上げながら、正面から向かい合ってみるが。


『えぇ~少々トラブルがありましたが、今回の対戦相手をご紹介します。この街では珍しい闇魔法、黒魔法と言われる種類の専門家。なんと彼女は聖女様のパーティのリーダーを務めており、聖女様からは“戦いたくないです”とのコメントを頂いております。そしてお相手、クウリさんからは……えっと? “ちょっと派手な格好するけど、全部魔道具ですのでご心配なさらず”……と。派手な格好……ですか。今は非常に普通の術師に見えますが、今から着替えると言う事でしょうか? であれば、まずは更衣室に――』


 戸惑った様子の司会者を他所に、俺達は二人して目を閉じた。

 そして。


「「装備変更」」


 二人揃って、“本気装備”に変わってみれば。

 観客からは戸惑いの声と、歓喜の声が上がった。

 多分後者に関してはダイラの格好を見て、なんだろうが。


「いいのかよ、ダイラ。そんな恰好したら、また教会側から突っつかれるかもしれねぇぞ?」


「ははっ、冗談。適当な装備のままクウリの前に立つ方が怖いよ」


 そんな会話をしてから、両者共バックステップをかまして必要以上に距離を取った。

 これまでの対戦相手とは、倍以上もある互いの距離。

 でも、コレで良い。

 俺達の対戦は、基本的に“大規模戦闘”なのだから。


『よ、良く分かりませんが……物凄い恰好になった二人が、今配置に付いたようです。まるで魔人の様な姿に変わった、黒魔術師クウリ! そして物凄く……その、アレな恰好に変化した、聖女ダイラ! これは注目です、色々な意味で! それではぁぁ、試合開始ぃぃ!』


 レフェリーが叫んだ瞬間、両者とも杖を構え。


「プロテクション!」


「おせぇ! シャドウバインド!」


「残念でしたぁ! プロテクションは全部足元でーす!」


「チッ! 流石に読まれてたか。んじゃ正面から行くぞ! プラズマレイ!」


「うぎゃあぁぁぁ! なんて言うと思った? それは囮で、コッチが本命でしょ。はい、解呪」


「おっ前! いくら慣れてるって言っても片手間にコレを防ぐなよ! あと背後に設置した呪いを普通に解くな! 完全いつも通り遊んでるみたいに見られるだろ!」


「クウリがこんな絡め手を使って来るからいけないんでしょ!? 嫌だよ! 呪い受けたくないよ!」


 ギャアギャアと騒ぎながらも、お互いにスキルを連発していくのであった。

 次から次に繋げていく攻撃と防御。

 本当にゲーム時代みたいに、完全にふざけている様な状況になってしまったが。

 これでもお互い、リキャストタイムを計算しながらスキルをぶつけ合っているのだ。

 それが、この戦闘一つで十分に分かる。

 ダイラは結構“こっち側”に来てから慌てている事が多かったが、間違いない。

 アイツの記憶力と、更に自らのスキル管理の完璧さは全く変わっちゃいない。

 すげぇよ、マジで。

 お前は本当にスゲェ。

 俺の戦い方を、どれもこれも記憶しているし。

 その対応にだって、自ら持っている全てを出し惜しむ事無く、満遍なく使って対処してくる。

 この戦闘スタイルに惚れて、俺はお前をパーティに誘ったのだから。


「ハハッ、やっぱお前との対戦はこうでなきゃな!」


「だからって徐々に派手にしないでよ! あぁもう、忙しいなぁ! って、あっぶなぁ!? さっきのちょっと掠ったよ!?」


 魔人だのレイドボスだの色々と相手して来た訳だが。

 やっぱりPVPはまた違った楽しさがあるわ。


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