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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
3章

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第57話 ポンコツリーダー


「俺はもう駄目だぁ……やっぱり全然役に立たないリーダーなんだぁ……」


「クウリ、ホラ、コレを喰え。タコワサだ、もっと酒も飲むか? かなり弱い酒だし、宿屋だから別に良いぞ?」


 さっきから、いろんな料理をイズが運んで来てくれる。

 それらを口に運びながらも、ズビズビと鼻を啜っている状態。


「だって、だってダイラが……」


「それはお互い様だ。お前だって、適当な気持ちで相手に喧嘩を売った訳じゃないんだろ? 相手からしたら随分な刺激だっただろうが、原因を作ったのも向こうだ。それに、冒険者同士の喧嘩など、よくある事だと聞く」


「でもさぁぁぁ!」


「落ち着け、クウリ。酔い過ぎだ、水を飲め」


 呆れた様子のイズを他所に、完全に酔っぱらっている俺。

 もうね、駄目だわ。

 何やっても目立つし、サブ職業も役に立たない。

 俺達の目的に一番適していないのは、間違いなく俺だ。

 多分俺以外の三人だったら、おそらく普通の冒険者として生活出来た事だろう。

 ソレを、俺が邪魔している。

 ダイラだって、それこそ件の“試験”とやらを受ければ、相当高位の聖職者と認められた事だろう。

 それさえやってしまえば、自然と見返す事が出来たはずだ。

 だというのに、アイツを馬鹿にされた事に腹を立てて。

 俺は感情のまま魔法を行使した。

 マァジで、本気で、馬鹿野郎だ。

 これじゃまた俺達に注目を集めてしまう上に、皆だって奇異の目で見られる。

 もぉぉぉ! もぉぉぉぉ! 何してんの俺! 馬鹿か!?

 適当に流して、後に実績で語ってやるのが一番大人しく済む方法だってすぐ分かるじゃん。

 だというのにガキみたいにその場で牙を剥いて、今この瞬間にダイラの実力を証明してやりたくて。

 あぁもう! あんな事したら、ダイラだってまた良くない視線に晒される事だろう。

 ヘイトは俺に向ければ良いなんて言って、これじゃ仲間達を振り回しているだけだ。

 俺はまた、自己満足の為に周りを巻き込んだ。


「なぁんか……“こっち側”に来てから思考が幼いって言うか、駄目なんだよなぁ。異世界に来て浮かれてる俺を追放してくれぇ」


「その発言は、多分皆が本気で怒るぞ? クウリ。しかしそうだな……思考に関しては俺も同じかもしれない。徐々にアバターの感覚に引っ張りこまれているのかもしれないな」


「いやぁ、イズは相変らず落ち着いてるじゃん。多分まだ俺が浮かれてんだよぉ……」


 もはやバーテンダーみたいになったイズが、次々とオツマミと酒を出してくれる訳だが。

 もはや端から喰った、そして飲んだ。

 やけ酒も良い所だが、それ以外に発散出来る術を俺は知らなかったので。


「これでもさぁ……色々頑張ったんだぜ? どうしたら皆が窮屈にしないで生きられるかとか、普通に生きていける環境を作ろうとか。だから“こっち側”に来てからも、リーダー気取ってた訳ですよ」


「よく理解している。お前は俺達のリーダーであり、いつだって頼りになった。まずはそこに自信を持て。お前がそこに自信を持っていないからこそ、こういう細々とした所でもスケープゴートになろうとするんだろう? だったら、俺達も信用してくれ。大丈夫だから、皆強いんだ。それはもちろん、ダイラだって」


 イズの言葉に、テーブルに顔面を突っ伏した。

 分かってる、全部俺がやらなくたって、みんなどうにか出来る大人なんだって。

 でも、でもさ。

 俺が見て来たダイラは、やっぱりどこか不安有りげというか。

 痛い所を突かれると黙っちゃう様な、我慢しちゃうタイプだったのだ。

 だからこそ、余計に俺が怒った。

 責任感とか、そういうのもあるけど。

 あんな事言われると、自然と腹が立つレベルで一緒に居たのだ。


「嫌なんだよ……お前等が馬鹿にされんの。だってそもそも俺に合わせてスキルツリーも何もかも調整してくれた訳じゃん? それなのに、何も知らない奴からあぁだこうだ言われんの……マジで嫌。だったら俺に言えよ、指示したの俺なんだから」


 グズグズと情けない声を上げながら、イズにお酒のおかわりを頼んでみれば。

 相手は呆れた表情を浮かべながら次の酒を差し出し。


「それも、分かっている。お前の責任感が強い事も、良く分かっている。しかしな、全部自分のせいだと思うな? それは侮辱だ。俺達は皆お前の意見に賛同し、このキャラクターを作った。ソレはお前の命令だったからじゃない、納得したからだ。だから皆、今のアバターに納得している。誰一人として、お前に絶対服従のプレイヤーは居ない。そこだけは自覚するんだ、クウリ。皆、お前を慕って集まって来た」


 イズがそう言ってくれるものの、やはり自信は持てず。

 俺としては、俺にとって都合の良いキャラクターを皆に作って貰った感覚の方が強いのだ。

 何かもう、今更ソレが辛くなって来た。

 ゲーム時代なら、手持ちのキャラのたかが一体。

 それだけで済んだ話なのに、今ではそれどころの話ではない。

 もっとバランスの良いキャラクターに育てていれば、こんなに苦労しなかっただろうに。

 もっと普通の性能に収まっていれば、それこそ異世界を満喫出来ただろうに。

 今日のダイラの泣き顔を思い出すと、やはりそんな感想しか浮かばず。


「あぁぁぁ……駄目だもう。全部ダメダメだ俺。趣味に特化し過ぎた影響で、皆に迷惑かけてるし。しかも何やっても目立つスキルばっかな上に、サブ職も役に立たねぇ。俺はこの世界に来るべきじゃなかったんだぁ……」


 もはや泣き言ばかリ溢す俺に対し、イズは溜息を一つ溢してから。


「本気で言っているのなら、俺だって怒るぞ? 魔物に対して、というか世界に対して一番積極的に動いたのはお前だ。適当な魔法を使えば済む所を、過剰だと分かっていながらいつものスキルを使う。それは俺達の安全マージンの為だろう? 更にレイド、俺達だけだったら間違いなく逃げていた」


「……でも戦闘に関して、イズは結構積極的な気が。俺が居なくてもレイド挑みそうなくらいに」


「そこが俺のアバターの影響なのかなとは思うがな。でもアレは、お前が居たから挑めたんだ。それは俺達に対しての保険と保証であり、自信の源だ。“お前が居る”。それだけで、俺達は安心出来るんだ。頼ってばかりですまないとは思っているが、ソレをまず自覚しろ」


 そんな事を言われてしまい、ぼやぁっとする頭で考えてみるものの。

 酒の影響か、あんまり上手く行かず。


「俺は皆の責任が取れて、皆平和に生きてけるならそれで良いよ~」


 ふにゃふにゃしながらそんな事を答えてみれば。

 イズは再び大きなため息を溢してから。


「そこが大きな問題なんだよ、馬鹿者。背負い過ぎるなと言っているのに、結局その結論か? 本当に大馬鹿者だな、クウリ。お前は……いったんリーダーと言う認識を捨てろ。と言いたい所だが、無理だろうな……というか、これ以上考えさせるのが無理か。また酔っぱらったか?」


 その声と同時に、イズが三人に分身した。

 おいおい、こんな所でスキル使うなよと言おうとした瞬間。

 ズガンッて音を立てて、テーブルに額を打ち付ける俺。

 あぁ~やっべぇ。

 やっぱ酒飲むべきじゃなかったかも、この身体……相変わらず酒に対して耐性低いわ。

 なんて思ってはみるものの、飲んでしまったものは仕方ない。

 だからこそ、ふにゃふにゃしながらどうにか動こうとしていれば。


「ただい……ま、じゃない! クウリ平気!? どうしたの!?」


 今すぐ謝ろうと思っていた相手が、随分心配した様子で俺の元に駆け付けて来た。

 あーうん、ダイラが居る気がする。

 だったら、ちゃんと謝らないと。

 そんな事を思いながら、口を開いてみた結果。

 うん、無理、吐きそう。

 ウプッと口を押えて、吐き気を我慢していれば。


「イズ! なんでクウリに飲ませたの!? 前回でもそうだったけど、クウリのアバターかなりの下戸だよ!?」


「すまない、弱い酒を少しずつなら何とかなるのかと……本人も酔わないと言えない事も多そうだったから……」


「お馬鹿! トトン水用意して! クウリ平気? 聞こえる!? 今からベッドに横にするからね? 吐き気我慢しない様にね!? 水飲める? 駄目だってば、この体でいっぱいお酒飲んじゃ。吐けるなら吐いちゃって? 平気だから、本当に大丈夫だから。身体が吸収する前に吐いちゃおう? ね?」


 まるで介護するみたいに、ダイラが俺に問いかけて来る。

 おかしいな、まだ俺、全然謝ってないのに。

 それでもダイラは、異常に焦った様子で俺の口の中に指を突っ込んで来た。

 おいお前は、ソレは止め――


「イズ桶! 早く! クウリ、ちょっと身体震えてるよ!? 早く吐き出して!」


 何やら他の面々によって用意された桶を口元に準備され、更に指を突っ込んで来るダイラ。

 いやお前、だからそれは酔っ払いに一番やっちゃ不味……。


「おえぇぇぇ……」


「大丈夫、大丈夫だからね? そのまま吐いちゃって。クウリは今、全然お酒に慣れていない身体なのに、今までの感覚で飲んでるんだよ。つまり身体はアルコール耐性0だ。下手に一気に飲んだら、アルコール中毒になっちゃうって! 吐いて! いいから吐いて!」


「でも俺、お前に謝らくちゃ……」


「煩い! 吐け! いいから今は呑み込んだアルコールを全部吐き出しなさい! クウリのアバターはただでさえアルコールに弱いみたいなんだから、今吐き出さないと酷い事になるよ!? 二日酔い程度じゃ収まらないかも! だから吐け!」


 そういって、更に喉奥に指を突っ込んで来るダイラ。

 お願いです、本当にお願いです。

 今吐き出しているブツに対して、虹色のエフェクトを掛けて下さい。

 そうじゃないと、俺と対処しているダイラの絵面がえらい事になります。

 どうか、お願い致します。

 などと思っている間にも。


「う、うえぇ……」


「トトン水! うがいしてからで良いから、とりあえず水飲みなクウリ!? このまま気を失わないでね!? 何杯飲んだのか知らないけど、倍は飲んで!? アルコールの分解にはとにかく水分が必要なの、だから無理にでも飲んで!」


 ダイラに促されるまま、吐いた分以上の水分を叩き込まれた。

 コイツは不味い。

 そんなに水分ばかり取らされると、流石にトイレに行きたくなって来るんですが。


「あの……ですね、こんなにいっぱい水を飲まされると……ですね」


「トイレ!? わかった、すぐ行こう。出せる分は出しちゃいな、そうすれば吸収できる水分量が増えるからね。吸収しちゃったアルコールも出るよ! トトン手伝って!」


「あい了解!」


「や、やめろぉぉ! お前等やめろぉぉ!」


 担がれたまま、俺はトイレへと向かうのであった。

 こんなの、恥以外何者でもないだろうが。


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