第50話 後片付け
「頼むから……いい加減ちゃんとした報告をくれ。胃が痛い……」
アレから事後処理とか調査とか、色々あって数日が経った頃。
深いため息を溢す支部長に呼び出されてしまった。
あちゃー、こりゃどうしましょう。
ミラさん達にしか事情話して無かったからね。
「すんごいヤバイ奴が出て来たんで、俺達で対処しました」
「溶岩神ペレ、だったか? なにやら動き回っていた様だが、結局何だったんだ? 本当にそこまでの強敵だったのか? 空を飛んで各所を襲撃したのは何故だ」
もうね、これまでの不満を一気に吐き出すみたいに、支部長さんは頭を押さえながら次々と質問を投げかけて来た。
まぁ詳しい説明も無しに勝手に動いちゃったからね、こればかりは仕方ない。
とはいえ、全部そのまま話しても絶対納得などしないだろうから。
「えぇと……かくかくしかじかで」
「こら、端折るな。大事な部分を端折るな。噴火を塞き止めたというのは本当か? それから、あの火山があんな崩壊寸前になった原因は? そのペレとかいう魔物の影響なのか? あの惨事に対して、説明を求められている。せっかく珍しい物品が見つかった場所なのに、ピンポントで全て破壊された上に溶岩の中に埋まってしまったからな」
「あぁ~えーと、そうですね。そっちはペレが悪いって事で、はい。ペレが全部悪いです」
その場の思い付きでレイドボスに全ての責任を押し付けてみれば、仲間達からは溜息を貰ってしまったが。
言えるか、俺がデウスマキナぶっ放したせいだとか。
賠償金の請求なんぞされたらたまったものではないぞ。
「とりあえず、お前達が詳しく話すつもりがないという事だけは分かった……」
「うへぇ……」
今回は目撃者も少ないし、ミラさん達以外には高火力も見せていないから結構上手く行ったと思ったんだけどなぁ。
最後の最後でやらかしてしまい、結局いろんな所から突かれる立場になってしまった。
あぁーどうすっかなコレ。
でも苦し紛れにでも隠し続ければ、この街なら何とか過ごせそうな気がする。
まだ古代武器やら、鉱石の買い取りやら。
色々済んでいないので、最低でもそちらを終わらせてから旅立ちたいってのが正直な所だが。
「そのよく分からん魔物に、貴重な鉱山を破壊された責任を取れという声が上がっている」
「んな無茶な」
「言いたい事は分かるがな、こうならない様に魔物の間引きを此方に依頼していたのも事実だ。そうでないのなら納得の行く説明を、と言う事だ。それから」
そういって支部長が一枚の用紙を引き出しの中から引っ張り出した。
見ても良さそうな雰囲気があったので、机の上のソレを覗き込んでみれば。
「……げ」
「指名手配、と言う訳ではないが。ディアス国の王家から調査依頼が来ている。コレ、お前達だよな? 向こうでいったい何をした……ギルドとしては、正直に答える他無いぞ? 前回も一度こういう調査が来たのだが、以前はお前達がこの街に来る前だったからな。当ギルドに妥当人物はいないと答えたが……」
し、しつけぇ!
まだ俺等の事を私兵にしようとしてんのか、あのお姫様。
こうなってくると、さっさとこの街を離れるべきなんだろうが……。
「ちなみに俺達が姿をくらました場合、どうなります?」
「ディアス国にはありのままを伝える事になるな。既にこの街にはいない、と。依頼主に関しては……説明も無し、保証も無しとなると、発掘された太古の武器を寄越せと言って来る可能性もある」
あぁーそれは不味い。
全部俺が所有権を持っている訳じゃないし。
ミラさんの所と、鍛冶師にも全部は没収しないって約束しちゃったしな。
研究者の方は良く分からないが、そっちも買い取り希望みたいだし。
「えぇと……その依頼主なんですけど、代わりの物品とかじゃ駄目ですかね? どれだけ強い奴が居たのかって物的証拠と、それの譲渡とか……」
「そんな物があるのか!? 何故ソレを早く言わない!」
支部長は勢いよく立ち上がり、こちらに詰め寄って来るが……コレばかりは、仕方ないか。
“こっち側”で流通していないアイテムなので、あまり表に出したくはなかったが。
「ダイラ、今回の“アレ”。出してくれ」
「……本当に良いの?」
渋々と言った様子のまま、ダイラが目を閉じてインベントリを漁っていく。
そして、ダイラの腕の中に現れたのは真っ赤な宝石の様な球体。
一抱え程の大きさで、それこそスイカくらいのサイズだ。
普通の魔石と比べても、相当なデカさだと言って良いだろう。
「こ、これは……?」
「溶岩神ペレのコア、というか魔石みたいなもんですね。ソイツを引っこ抜いてきました」
第一形態の時、ダイラの結界によって閉じ込められていたコア。
コイツに関しては、ゲームではペレからドロップする武装の“強化素材”に過ぎない。
ソレをリアルでも、しっかり回収できたという訳だ。
第一形態では強化素材、第二形態で防具を、第三形態で武器をドロップするというタイプのレイド。
最終形態まで倒し切れなくてもウマミがあるという、ある種の救済措置だった訳だが。
現実では防具や武器なんぞドロップする筈も無く、アイツのコアだけ手に入れてしまったと言う事だ。
ちなみに、インベントリの中には腐る程在庫がある。
アイツの武具関係も、一応持っていたりするのだが……レイド武器だからね。
追加効果なんかも派手なので、コッチでは使っていない。
「確かに、こんなサイズの魔石を持つ相手と戦ったと言えば、ある程度の説明はつくかもしれないな……しかし、こんなにも美しい魔石は見た事が無い。本当にコレが、そのペレという存在のコアなら、相当研究価値が高い代物になるだろうな……」
「んじゃ、コレを譲渡するんで。依頼主の方はどうにか抑え込んでもらって良いですか? あの武器を全部渡すのはちょっと……」
と言う事で、ソレっぽい言い訳をしてから支部長室を後にした。
此方としては、思い切り溜息を溢してしまう事態には変わりないのだが……。
「クウリ、どうする? また街を離れるか?」
「また移動~? 面倒くさいなぁ……」
「いやでも、このままココに居て姫様に見つかる方が不味くない? ここまでして探そうとしてるって、もう人間兵器一直線な気がするけど」
そんな会話をしながらも、宿への道のりを歩いて行く。
ホント、どうしたもんかねぇ。




